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コロナ禍のアメリカ行きは予想以上にストレスを感じる旅だった!

なにもこんなときにアメリカに行かなくても…。本当にそのとおりです。もうかれこれ1年以上、国内旅行にすら出かけていないのに、飛行機で十数時間もはなれた長距離移動の旅だなんて。家族の不安そうな雰囲気もひしひしと感じていました。でも、どうしても行かなければならない所用があって、渡航を決意。これまでにない緊張感のなか、旅の準備をすすめました。

まずは、アメリカ入国に必要な書類を調べるところからです。そもそも、企業の出張ではなく、私用の目的で入国ができるのかどうかも心配でした。「不要不急の」移動は言語道断であろうというのはもはや基本中の基本。私の場合、日程変更のできない行政手続きのための渡米だったので、万が一なにか聞かれた場合でも説明できると確信。というよりも、自分を納得させてみました。本当ならこんなときに行きたくない、というのが本音だったので。

行くと決めたら、必要な書類をそろえるなければいけません。これがとても大変でした。外務省や厚生労働省のHPで調べてみると、わかったようなわからないような。そして情報は日々変わっていきます。行き先の感染者数の変化によって、危険地域に指定されたり解除されたり。本当に数日に一度は更新されていました。

コロナウィルスに感染していないという陰性証明書に関しても、各国そして各州で必要な書式が指定されています。私の訪問先であるマサチューセッツ州は特に書式指定もなく、PCR検査でも抗原検査でも大丈夫ということでした。(6月末時点の情報です。)

健康なひとが私費で受けるPCR検査は2万円前後。英語の証明書を発行してもらうと、さらに5千円ほどかかる場合が多いです。でも、抗原検査は少し費用を抑えられることがわかり、私は1万円(証明書付き)で受けることができました。

この時点で万が一、陽性結果が出たらすべてをキャンセルしなければならず、結果が出るまでの数十分は「もしも…」の言葉がグルグルと頭の中をめぐります。お医者さんから「陰性でした」と言われて、あーこれで無事に出発できる、と思ういっぽうで、のちほどメールで送られてくるはずの証明書が本当に届くだろうか、とか、入国時に証明書に不備があると言われないだろうか、とか。なんだかんだと心配はつづきました。

そして、旅の準備で一番困ったのが、帰国後の交通手段の確保です。公共交通機関を使わないように、と言われても、わがやは車をもっていません。成田空港でレンタカーを借りるにも、都内を運転したことがほとんどないので、できれば避けたい。ハイヤーを予約すると2万5千円!帰国者専用のリムジンバスを利用して、都内のホテルまでは数千円で移動可能。ただ、その先はホテルに宿泊するのが大前提のオプション。最終的に、私は帰国者専用の京成スカイライナーで上野駅まで移動し、家族に車で迎えに来てもらいました。

あとからわかったのですが、この場合も本当に迎えの車に乗ったかどうかを確認するような仕組みはなく、案内係も「ではお気をつけて!」と言っていなくなりました。あくまでも、個人の良識に委ねる、というシステムなんですね。「他人に迷惑をかけない」という日本のマナーが、ここでも強く求められているような気がしました。

話をもとに戻しますが、無事に英語の陰性証明書を受け取って、いざ出発!すでにオンラインでチェックインを済ませていたものの、何があるかわからないと思い、2時間半前には成田空港に到着。ある程度の予想はしていたものの、これほどまでにガラーンと人気のない出発ロビーを見るのは初めて。逆に落ち着かない感じがしました。普段は人の流れについていけば、なんとなく保安検査場もわかるけれど、誰もいなさすぎてどこから入るのかもいまひとつ自信がなくなるほどでした。

出発ゲートまでの道のりも、免税店の8割はシャッターを下ろした状態で、なんだか活気がない。海外に行くときの、ちょっとワクワクした気分はどこにもありませんでした。

ゲートに入るところで、例の陰性証明書とアメリカCDCに提出する誓約書を確認されました。必要書類はひととおり準備していると思いつつも、やっぱり少し不安。万が一ここで止められたらどうしようかな、と思いながら通過。これでようやく出国できるんだなあと実感しました。

飛行機のなかは快適そのもの!行きも帰りも、乗客は50名ほど。左右の席には誰も座ることなく、ボストンまでの13時間はゆっくりと足をのばしてくつろぐことができました。エコノミークラスでこんなにスペースを確保できたのは初めてです。これはこれで貴重な体験でした!

アメリカに定刻より少し早く到着。いよいよ入国です。いつも以上の緊張感。ここでも待ち時間はほぼゼロ。検査官もなんだかリラックスした雰囲気で、入国手続きをおこなっているようにさえ見えました。いつ陰性証明書を求められてもいいように手に握りしめていたものの、なにも聞かれることなく審査終了。1万円もかけて手に入れた書類なのに…とちょっと思ったけれど、まあいいならいいか、とそのままゲートをあとにしました。

ボストンに来るのは実に15年ぶり。7年間住みなれた街とはいえ、もうずっと前のこと。なんだか里帰りするような気持ちで、地下鉄に乗りました。ニュースで伝えられているアメリカは、みなマスクをはずして開放感あふれる雰囲気でいっぱい!というイメージですが、実際はまだまだコロナ禍での生活がつづいている印象でした。確かに、通りを歩く人のほとんどがマスクをしていませんが、電車やバス、店の中ではマスク着用が義務付けられていて、「マスク持ってるよね?」と確認しながら本屋に入る親子の姿は日本と変わりないと思いました。

5月末からレストランやバーも店内での飲食が許可されてはいますが、屋外での飲食に限定している店のほうが多い印象でした。飲食店に関しては、日本よりも強い規制がかけられていたので、そういう意味では住民にとってはかなり開放感はあるかもしれません。ワクチンを受けられない11歳以下のこどもたちは、やはり多くがマスクを着用していました。そういう姿から見ても、まだパンデミックは終わってないことを実感します。

到着した翌日。3泊5日という短期滞在のため、帰国時に必要なPCR検査を受けなければいけませんでした。空港に検査場が設置されていたので、あらかじめ予約しておきました。到着してみると、なんだか物々しい雰囲気。警察官も立っています。そして奥にはキャスター付きの担架も。数分後、体全体を薄い紙製の防護着にようなもので包まれた男性が担架に乗せられて搬送されていきました。男性は元気そうでしたが、家族はなんだかうなだれた様子。状況から察するに、陽性反応が出たのではないかと憶測しています。こういう現場を見てしまうと、やっぱり不特定多数の人と接触するような移動は怖いなと思いました。あの男性が本当に陽性だったかどうかは未確認ではありますが。

検査を受けた翌日には証明書をもらうために再び空港へ。ボストンはダウンタウンと空港が近いため、移動はラクですが、まあ何度も行くとなるとちょっと面倒な気もします。結果は陰性で、日本政府指定の証明書にもしっかりと記入してもらい、ひと安心。アメリカでこういう手続きをお願いすると、かなり適当だったりするので、本当にすみずみまで自分でチェックしていないとあとで後悔することが多いです。

15年ぶりのボストンは、それほど大きな変化はありませんでした。ただ、コロナで撤退した店が多く、「テナント募集」の張り紙がビルのあちらこちらに。ちょっと寂しい気がしました。せめて7月4日の独立記念日は盛り上がるといいなあと祈りつつ、名物のクラムチャウダーで最後の夜をしめくくりました。

さて、問題は帰りの飛行機です。ボストンから東京までの直行便がなかったので、ボストン→ダラス(テキサス)→東京という乗り継ぎ便を選びました。ボストンからダラスまでの国内便は朝6時30分発。5時過ぎには空港に到着しましたが、成田空港とは対照的に、あふれんばかりの人。チェックインカウンターまではおそらく1時間近く待つのではないかと思うほどの長蛇の列。見慣れた光景ではありますが、久しぶりに見るとちょっと驚きます。

そして、案の定、飛行機は満席。密、密、密です。ニュースでも、利用客が急増していて対応が追いつかないと伝えていましたが、これほどまでとは。この光景だけ見ると、コロナは完全に過去のもの、という気がします。ただ、機内ではマスク着用が義務付けられていましたが。この状態での3時間のフライトが、この旅の中で一番ストレスを感じました。

ダラスから東京のフライトは、行きの便と同様に、ガラガラでした。私は3席を独占し、6時間たっぷり睡眠。おかげで時差ぼけは知らずです。成田空港の検疫はかなり時間がかかると聞いてはいましたが、本当にそのとおり。必要書類の提出、PCR検査、検査結果待ち、帰国後の管理用アプリ各種の設定などなど、たっぷり2時間かかりました。私の滞在先であるマサチューセッツ州は対象外でしたが、アメリカのいくつかの州は危険地域に指定されており、滞在者はPCR検査の結果に関わらず3日間ホテルでの隔離が義務付けられていました。指定地域も日々変更されるので、出国するときは対象外だったとしても、帰国時に対象になっている場合もあり、これはもう運にまかせるしかないという気がしました。

空港からは予約済みの電車で上野駅まで移動し、家族と合流。さっそく、おみやげのぬいぐるみを娘に渡すと、こぼれるような笑顔で喜んでくれて、本当にほっとしました。無事に帰って来れてよかったなあ、と。大したことをしたわけではないのですが、不確かなことだらけの旅だったので、国をまたぐ移動は大変なことだ、ということをあらためて感じました。

いやーそれにしても、コロナ早く落ち着いてほしいです。家族と一緒にきれいな景色を見たり、おいしいものを食べたり飲んだり。ウィルス感染を意識することなく、ただただのんびりしたい。そんなことを切に願う旅でした。


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