イケメンと付き合うとこうなる

けっこう前の話なのですが、超絶なイケメンとお付き合いしていたことがあります。

職場で出会った人なのですが、その人が異動して来た時にいろんなところで話題になるくらいでした。男性アイドルの〇〇さんにとても似ていて、それももっとシュッとして大人にした感じ。

目は薄い茶色でちょっと青みがかっていました。
肌がめちゃくちゃ綺麗で毛穴がひとつもありませんでした。触ると陶器みたいで、CGなんだろうなって思ってました。
あと全然汗かかない。ますます膨れ上がるCG感。
髪の毛はサラサラでどんな髪型でも似合い、服装もオシャレです。
いい感じに鍛えていたので筋肉もそれなりにあります。マッチョすぎずダレすぎず、スタイル良し。
コミュニケーション能力も高く、おもしろセンスもありました。
もちろん香りは無臭。香水など一切付けません。むしろそんなものはいらない。
仕事もできます。頭がキレるので、要領よくちゃっちゃと仕事を終わらせます。

「〇〇さんかっこいいよね。彼女いるのかなぁ?」
こんな話ばかりがそこら辺で交わされてました。本当にすごかった。こんなに完璧な人って世の中にいるんだなぁってうっすら思っていました。

で、何がそうさせたのか、その人から猛烈にアプローチされたんですね。
ご飯行こう、飲みに行こう、仕事帰りは車で送るね、今度うちに遊びにおいでよ、次の休み買い物に行こう、今欲しいものはなに?プレゼントさせて、なんか困ってることない?

0時近くになると眠くなってくるわたしに、
「0時で眠くなるってシンデレラみたい!」
と言ってきた時は、さすがにネタだと思いました。よく言えたよねその言葉・・・。自己プロデュースに長けてる。

そしてなんだかんだと押され負けして付き合い始めたのですが、どんなところでもドアを開けてくれるのは彼、車の助手席に乗れば膝にブランケットをかけてくれる彼、レストランではいつもわたしが食べたいものを注文して残りを食べると言う彼、絶対にわたしにお金を出させない彼、ベッドが固くて痛いねって世間話のつもりで言ったらすぐに新しいマットレスを買ってきた彼。これ以外にもたくさんあります。

こんなに優しくしてくれるなんて初めてだなぁ。わたしはそう思っていましたが、徐々にそれが窮屈になっていくんですよね。優しくされ尽くす度に。

彼は「女に優しいという自分」に酔っているのでは?という疑問。
あまりの優しさと、尽くし方が異常なところに、違和感を抱いてしまったんですよね。
手慣れすぎていて、その優しさの後ろに、究極なナルシストが見え隠れしていて、わたしのことを好きなのではないんじゃない?って思うようになってしまいました。

きっと付き合う期間が長くなれば長くなるほど、この女に優しい自分に飽きてきて、コロッと優しさの対象を変えるんだろうし、多分あの彼ならそれが簡単にできちゃうんですよね。

わたし独特のひねくれた考え方なのかもしれないですが、同じ部署には女から見てもイイ女性が周りにいっぱいいたのに、そこであえてさえないわたしを選んだという時点で、まずチョロいという計算高さと、俺はどんな女にも優しいんだっていう自己確認みたいなものがあったのではないかなって思ったんです。

結局、疲れてしまって別れました。浮気もしてたんじゃないかなぁー。どうなんだろう?

ちょっと言葉がきついのですが、毎日毎日王子様のような優しさをもらうと、もらった分とても疲れちゃうんですよね。わたしもお姫様みたいな立ち振る舞いをしなきゃいけないの?って、無理難題を押し付けられているようでした。だってわたしはどちらかと言えばオジサン側。

膝にブランケットをかけてくれるよりは、おならしちゃったごめん!の方が心地いい。
食べたいものを頼ませてくれるよりは、俺もこれ食べたい半分こしない?の方が楽しい。
シンデレラよりは、もう眠いの?初老だねって突っ込まれる方が笑える。
新しいマットレスよりは、人んち来て文句言うな!って言われる方が会話が弾む。
共に長く付き合っていくには、緊張感なんていらないのです。

テレビやYouTubeで〇〇さんを見る度に、思い出す不思議な1年間。
そろそろ〇〇さんが当時の彼の年齢に追いつくので、ますます似てきています。

彼は今も、誰かの膝にブランケットをかけているのかなぁ。