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65.お化けにも喧嘩売るスタイルで

 本当、クソみたいな世の中だな。

 って思うことありませんか?
 いきなり汚い言葉で大変申し訳ないです・・・。

 具体的になにかあったわけじゃないのですが、急にふと沸く理由なき怒り。一人でイライラして、プンプンします。
 そして過去にあった嫌なことばかり頭に浮かんできて、ますますプンプンします。
 もしかしたら躁状態に傾いているのかな、と怖い。落ち着け自分。

 これはダメだ、自分に余裕がなくなってきている。そう思ってコンビニへ甘いものを買いに行ってきました。
 チョコパイチョコパイチョコパイと呪文のように唱えながらコンビニに向かうのですが、まぁ暑いですよ。本当に暑いです。日差しが痛いです。日焼け止め塗り忘れました。やってしまった。

 チョコパイの他にも、スナック菓子やらアイスやらグミやらチョコレートやらたくさん買って、甘いものを貪り食う予定でしたが、あまりの暑さに疲れて、結局チョコパイとアイスしか買う気になりませんでした。

 暑い。目眩がする。セミがうるさい。クッソーなんて世の中なんだ。

 行く前よりも、さらにプンプンしながら帰るのですが、歩きながらふと思い出したことがあります。
『そういえば昔、お化けに喧嘩売ったことあったな』


 24歳の頃、胃潰瘍と十二指腸潰瘍のスペシャルダブルコンボにやられたことがありました。
 あまりの胃の痛みに立ってられず、横になってはトイレに行って吐く、というのを何度も繰り返す一晩を過ごしたんです。最後には吐くものすらなくなり、気絶寸前。明日朝イチで病院に駆け込もう、そう思いながら仰向けになった時です。

 天井になにか居る。

 痛みと吐き気に耐えながら目を凝らしてみると、天井から子供が3人こっちを見ていたんです。でもはっきりと見えていたわけじゃなく、ボヤーっとでしたが、子供というのは分かりました。
 そしてなにか水みたいなものを顔に垂らしてくるんです、一滴ずつ。2階から目薬みたいな。濡れる感覚はあるのに、実際には濡れてません。

 それに気がついた次の瞬間、わたしは叫んでました。でも、悲鳴ではないですよ。

「ふざけんな!!こんなに苦しんでんのに上から見てんじゃない!なに垂らしてんだ!今すぐ降りてこい!!」

 ・・・ヒジョーに口が悪くて大変申し訳ないです。
 そう叫んだ瞬間、一度間があいてからふっと消えていなくなりました。そしてわたしはお化けに対して恐怖よりも怒りの方が断然強く(そもそも恐怖は感じなかった)、ますますイライラするのです。

 次の日、無事に病院に行き胃薬を処方してもらい、後日撮った胃カメラで、胃と十二指腸に潰瘍が合計3個できていることが判明しました。そりゃ苦しむわ。本当にひどい夜でした。

 それ以来、お化けというものには全く縁がないのですが、こんなにビビリなわたしなのに、お化けとの初対面がまさか「怒り」の感情に支配されるとは思ってもみませんでした。
 そして「今すぐかかってこい!」とばかりに喧嘩を売るとは。

 心に余裕がないと、お化けにも優しくできないんですね。ごめんねクソガキ三人衆。おっとまた口が悪い。

 そんなことを思い出しながら、買ったアイスを冷凍庫にしまおうとしたら、凍ったメカジキに気づきました。そうだ!この間買ったんだ。忘れてました。

 今日の夕飯はメカジキにしよう!やったー。
 照り焼きもいいな、バター醤油でもいいな、ムニエルにしてもいいな。
 どうしようー。
 いつの間にかプンプンした気持ちはどこかにいってました。

 何者も食欲には勝てません。
 そして人間は、身体の危機を感じると、予想以上のパフォーマンスを出せるんですね。もう二度とお化けには会いたくないけど。