悪手傾向と負け方の諸原理(草稿)

まえがき

 本稿は、悪手傾向と負け方の諸原理を把握するための原則と手法を示したい。対局者の性質や精神ではなく、読みと指向性について述べる。実戦を扱っているが、それは単に失敗例を紹介するためではなく、重視する点、基本原則、配慮すべきポイントを明確にするものである。故に、他の考察とは、悪手傾向と負け方の諸原理の希少性についての認知は同一であっても、達成目標と提供するコンテンツは大きく異なる。

 悪手傾向と負け方の諸原理は、癖や無知等忌むべきものとして認識されることが多いけれども、本書はそれらを統合化することが可能となり、加えて、統合すべき課題やパラダイム拡張する仕事として補完する。

 本稿は実戦の文章である。然し、ノウハウではない。何故、どうやって、どのタイミングで指向するかを観照する。したがって、方向性や決定項目、時機とデンジャー、定跡と手筋、駒の効率と捌きを考察する。

 本稿は、悪手傾向と負け方の諸原理を、悪手、負け方、負けない指向性の三種に分節して説明する。三者はどれも悪手傾向と負け方の諸原理の『視点
』であって、『全体』ではない。

 悪手篇では、悪手を自覚認識に基づいて指向するべき一つの意図的な指し方として提供する。また、悪手の機会を、奈辺で、如何様に仕掛けるかを明瞭にする。事後、実践の手札として発展させていく時期に完了することと、検討してはならないことについて叙述する。
 負け方の諸原理の部分では、悪手傾向の要因たる認知にスポットライトを当てる。その節では、三分類の体系、換言すれば、既成定跡、自己研究、新規開拓・提案における負け方の原則を補完する。これらの要因が機能するための原則と手法は如何、負け方の原理を発見するためには、どのように思考を認知し、分散した方が吉か、その際の焦点、外因、疑心とは如何、及び、負け方の選択とその決定項目について叙述する。
 負けない指向性の部では、現在の棋力における、どのように悪手回避を成し遂げるかについて論述する。最終的に、悪手回避が達成できるかどうかは、その神妙性、論理観、実戦直感力によってではなく、勝負で正解するかどうかによって決定される。

 負け方の認知は、論理でも感性でもなければ、技術でもない。実践である。無論、定跡は必要である。本稿は、それ等の定跡を統合的に提示する。しかし、体力や研究など他の実践の力量と同じように、負け方の諸原理に関わる理解も目的を達成する為の手法である。よって、本稿のような記事は、実戦による根拠が無ければいけない。


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