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草間彌生美術館へ行ってきた

草間彌生に関する私の予備知識といったら
水玉 かぼちゃ 統合失調症 ルイヴィトン 赤いおかっぱ・・・くらい?
今回、モノクローム作品を中心に集めたとかで
そのモノクローム画像が「おや、シックだね」と面白そうなので
初めて草間作品に触れてみました。

美術館は意外と小さくて、週4日オープン

美術館というよりギャラリーという床面積だが
縦に長く5階まで展示がある。
そして月火水が休み。という。
今はコロナ中なのでチケットは事前予約です。

2階はしんどい

2階の展示は主に黒/白や銀一色といったモノクロームの作品群。
これが本当に強迫性が強めで・・・。
気が遠くなるほど点や線が続いていて
その集積は容赦ない狂気でした。

ふと思い出したのは、せん妄状態に陥った父のことでした。
見えないはずのものが見え
過去と現在の記憶が曖昧になり
自分が置かれている状況が理解できない。
激しい怒りと不安の発露。

父の言動は常軌を逸していましたが
父が最も激しく恐怖していたのは、壊れいく自分自身でした。

人が狂うとはこういうことか、と私は身近でそれを見ていましたが
あの頃の父の脳内を追体験するとしたら
草間さんのこのモノクローム群の作品になるのではないかと。
トゲトゲと痛ましく、終わらない夢のように時空がねじれる。
高音のバイオリンの悲鳴。
暗闇から生まれた不安のエネルギーは
終わることなく無限でそれがまた悲愴。

これはしんどい・・・
受け止めきれないしんどさ・・・

3階はPOP 最近はPOP

草間彌生ってこんなしんどいのか・・・
と思って3階にあがると
こちらは「モノクローム」と定義しつつ
赤/青 緑/金 黄/黒などなど2色使いのカラフルな作品群が並びます。

2階の世界とは違って3階にはPOPさがあります。
単純に色がカラフルだからとかではなく
アートとして昇華しているといいましょうか。
ほう、ほう、と楽しめる余裕が持てます。
これはお金持ちのリビングに飾ってありそう。
3階にも黒/白の作品はあるのですが
強迫観念の度合いが違うためか、見ていてしんどくない。

どうしてなのかしら?
2階は初期からの作品なのに対し
3階はかなり近年の作品が中心だったりするので
それが関係しているのかな?

と思って4階に行くと草間さんのバイオグラフィーがあったのですが
御年92歳なんですって。マジか!
幼い頃から激しい希死念慮を抱えつつ、けっこう長生きっていう!
約100年のしんどい時を経て、今最もPOPに花開くという生きざま。
すごいな、本当に。

ソフト・スカラプチャー

2階に銀色一色のオブジェがあったんです。
銀色の無数の突起物のオブジェ。

私は本当に予備知識がなかったんですが
これは草間さんの代表的なモチーフらしいですね。

そして作品の前でしばらく悩んでいたんです。
この無数の突起物は、指・・・か?
いや、この角度は指じゃないよ。
もしかして、やっぱり、これは・・・。
だとしたら・・・?

帰り道にググってみたところ
無数の銀色の突起物は男根/ペニスの集合体とのことで
私、正解。

こういうのってアートの楽しみ方のひとつですよね。
予備知識なしで見に行って、後で答え合わせするという。

話はズレますが
以前、SFでルイス・キャロルの写真展が開催されてました。
展覧会で写真横に書いてある解説には
「愛らしい少女の写真」というようなことがずっと書いてあって
隣でみている女性は「可愛いわねぇ」といっているんですけど
私は途中から「ルイス・キャロルってロリコン?」と
思ってたんですよね。
少女の写真から匂い立つエロさが半端なくて。
で、帰り際に図録を立ち読みしたところ
図録にはルイス・キャロルの幼児愛についてちゃんと書いてありまして
溜飲が下がりました。

さて、ソフト・スカラプチャーの突起物についてですが
一番、謎だったのが
トレイに無数の突起物とフライ返しやお玉とかが
一緒に盛ってある作品がありまして
これに「希死」というタイトルがついていたんです。

男根+キッチンツール=希死

これが解せない。
たとえば男根を生の象徴として見るならば
キッチンツールとの組み合わせは、食べて生きていくってことですよね。
死ではなく。

突起物だけの作品も隣にあって
それに「幻影の愛」と名付けているのはすんなり理解できるのです。

草間さんはどうやら男根を恐怖の象徴として見ているらしいのですが
そのヒントをもってしても
キッチンツールと組み合わせて「希死」になるのか腑に落ちない。

もしかして草間さんの独特の死生観と関係しているのか?
うーーん。わからない。

もっと草間さんを知らなくては・・・。
初期の作品ももっと見たい。できれば時系列で・・・。

と、すっかり草間ワールドに魅了されてしまいました。

他の作品をみれる機会が楽しみです。

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