0.エピローグ
何年ぶりだろうか。
気になって数えてみたら10年以上ぶりらしい。
なのにそんな気はしなくて、あぁ久しぶり!
そんな感覚。
5月3日、父方のおばあちゃんに会ってきた。
おばあちゃんは私にとって、いつまで経ってもおばあちゃんで、私はいつまで経っても孫みたいで、たらふく食べさせてくれたことが、嬉しい反面、かなりキツかった。
できれば気持ちや期待を裏切りたくはない、私の性格から、腹がはち切れそうになるまで食べ尽くした。
そう、例えるなら衰弱し切った刃牙が超回復のために大量の飯と14キロの砂糖水を飲んだあの時みたいに。
そんなことはどうでもよくて、僕はついに来週、5月15日、海外に行く。
モデルとしてのキャリアを得るべく、海外の仕事に挑戦する。
日本での仕事はほぼほぼ皆無で、準備不足なのは重々承知だが、それでも、行く。
そこに可能性があるから。
そして、生まれて初めて日本から出る。
楽しみな反面、もちろん不安もあって、実感が湧かなくて。
今までたくさんの準備をしてきたはずなのに、いつも荷造りは直前になる、今回もそんな予感がする(するじゃなくてなる)。
私たちは大人になると、旅をすることに慣れてきてしまって、未知へ向けて準備することは、そうそうなくなってしまう。
あれこれと余計なものを詰める人も居れば、ミニマリストを語り、旅上手を語り、少ない荷物だけで移動する人もいる。
だけど想像して欲しい。
私は今きっと、コロンブスと同じ状況なんだ、と。
初めて学校行事で宿泊を経験するあの感情に似ている気がする。
コロンブスも、才能がないモデルが海外に挑戦することと、年に一度経験するだろう学校の一大イベントと、香辛料を求めた大航海を、同じ括りにされちゃあ、たまったもんじゃないだろう。
でも、多分一緒。
来週の15日、僕はついに旅立つ。
家族や友人達は、次の日になってもお腹いっぱいの私と、これが永劫の別れかのように、このゴールデンウィークに会おうとしてくれて、その中の友人の1人は前職の先輩もいた。
“会社”という繋がりは消えたのに、私をただの友人として接してくれ、会ってくれる。
応援や激励、お土産は何がいいとか、そのたくさんの言葉や行動が嬉しくて、つい涙が出そうになったから、帽子を深く被り、雨ということにした。
そんな期待が背中を押しつつも、重圧でもあり、言えないこともある。
•渡航費がカツカツだから、本当は親からお金を少し(とはいえ10万円は少しではない)借りたい。
•事務所のアポイントが全く取れていない。
もう既に航空券や宿泊費は支払い済みなので、行くしかないのにも関わらず、お先真っ暗とはこのことか、と言わんばかりの暗さ。
渡航費に関して言えば、クレジットカードで支払ったので、もう分割しかねえ、と思っているから、なんとかなりそうだが(多分ならない)、アポイントに関して言えばかなり危機的だ。
冗談混じりで「最悪、事務所ピンポンダッシュだな」なんて言っていたのが現実になりそうだ。
事務所が決まらないことにはどうしようもない。
言語が通じない国で、独り、フリーで仕事を探すことの厳しさは想像に難くない。
これだけ、
お先が暗い私が、
側から見れば成功者と比べて、モデルとして才能のない私が、
才能のある人を出し抜き、
プロを出し抜き、
流暢ではない英語を駆使してどう戦うのか。
今後楽しみにして読んでいただきたい。
毎日バイト詰めで、
朝は6時に起き(早い時は5時)、
22時半に帰ってくる。
そんな日々でもどこか充実していて、
今日も飯がうまい。
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