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7.『友』ってなんや

・偶然な出会い

友と呼べる人に出会った。

彼とのきっかけは、ミラノのモデル事務所を決めるべく、歩き回り、ある事務所に行った時、そこにたまたま同じタイミングで受けにきていた韓国出身のモデル。
終わるタイミングが同じだったから、一緒に出口を出て、外でタバコを吸い、少し話して、Instagramを交換した。
最初はたったそれだけだった。

その後、私はパリに移動して、またパリのモデル事務所を決めるべく、パリ市内を走り回っていた。
その中で訪れた事務所にまた彼は居た。
私も彼も見つけた時、事務所の中だったから握手したい気持ちを隠し、盛大に挨拶を交わすことはできず、2人とも笑って手を挙げた軽い挨拶をしただけだった。
その時は事務所を出る時間が違くて、私が先だったから、それ以上会話することができず、さようならも言えずに別れた。

・きっかけ

その夜、私はこの奇跡を大切にしたくて、勇気を振り絞り、彼に連絡をした。

だってすごくない?!
モデル事務所がパリ・ミラノそれぞれ20以上、30近くあって、同じ時間に同じ国の、同じ場所にたまたま2回も居合わせるなんて!!

InstagramのDMで
「事務所は決まった?」
「今度カフェ行かない?」
「パリにいつまでいるの?」
1つの文章に3つも詰め込んだせいで、返答が来たとき、今度カフェ行かない?は埋もれて流れてしまった。

そのままDMは終わってしまい、つくづく私は意気込んだ時のデートに誘うのが下手くそである、と再認識した。

私は彼が、私と行く気は無いんだな、そう思い、それ以上誘うことは諦めた。

そうしたらパリで過ごす最後の夜の前日。
彼から唐突に連絡が来た。

「Do you have a schedule tomorrow??(明日空いてる?)」

綺麗な英語が彼の性格を表している、そう思った。

・jerome(ジェロム)

15時に集合の予定を、寸前で15時半に伸ばしてもらい、それでも私が到着したのは16時だった。
彼からは
「もし元気があるなら、ここに来て」
そう書いてあったDMが私を焦らせ、歩を速めた。

何故遅れたか。
私はそもそもに遅刻癖があるが(自分で言うな。)初めましての人の時はまず遅刻しない。
これはあくまで言い訳だが、大介さん(モデルのことを教えてくれる先輩)と定期的なインスタライブをしていて、予定より長引いてしまったからだ。
一応それを見越して直前に30分集合時間を変えたわけだが、それでも30分遅れてしまった。

私は彼を見つけた瞬間、小走りして彼のテーブルにバンっと手を置き、
「I’m very very sorry!!!! I was tooooo late!!!(まじでめちゃくちゃごめん!すんげー遅れたわ!!!)
彼はね、この世の人か怪しいくらい優しいんだ。
だから、笑いながら、握手した後に、
【ここからは歩真流翻訳にてお届けします。使用言語は英語です。】
「気にしないで!別のカフェに行きたいから行こう!」
そう言って歩き出した。

拙い英語で、頑張って遅刻の理由を説明した。
彼は「疲れてない?」そう言ってきた。

彼は結婚詐欺師よりもきっと優しい。

一緒にタバコを吸いながら、テキトーにプラプラと歩いていたら、道を塞いで盛り上がっている集団を見つけて、足を止めた。
集団は輪になっていて、私たちは人よりも身長が大きい方だから、後ろから覗いてみたら、真ん中で上裸の男たちが腕立て伏せをしている。

何で?!笑笑
そう言い合いながら、また歩き出したら、彼は
「サングラスをさっきの店に置いてきた!」
そう言って、様々なポケットをパタパタとしている。
「やべーって!盗まれちゃうよ!戻ろう!」
私がそう返して、急足で戻っていたら、彼は「あっごめん笑」と言って、上着のポケットからサングラスを出した。
「よかったじゃん!じゃあ、行こう!」

私たちは、また当てもなく歩き、カフェを探した。

途中で服を売っているところがあれば覗き。
アートを展示しているところがあれば立ち寄り。
また服を覗き。
何かパフォーマンスをしている集団があれば眺め。
そうやって沢山の寄り道をしながら歩いた。
その時間が堪らなく好きだった。

彼がしばらくして
「僕たち、カフェ探してるんじゃなかったっけ?笑」
そう言ったから、私は
やばっ!探さなきゃ!
そう思い、Googleマップで探そうとしたら
「いやいや、探さないで!適当に歩こう」
ジョークのつもりが、私は真に受けてしまって、思っていることの100%伝えきれない、言葉の壁を感じた。
でもなんだかそれすらも楽しく思えてきて、
「こっちおもろそうじゃね?!」
そう私は彼に言って、また”面白そう”それだけで散歩を続行した。

そして、何となくで座ったカフェバー。
彼が「注文してくるけど何が良い?」
って聞いてきたから、
迷わず、メニューにあるかどうかも確認せず
「アメリカーノ」
そう伝えた。大体どこの店にもあるからね。
彼は注文してきてくれて、灰皿まで持ってくる。本当に優しすぎるって。

しばらくして、ウェイトレスのおじさんは紅色をしたカクテルを2つ持ってきた。
「俺たちこれ頼んで無いぜ?」
そう言ったら
「これは、”アメリカノ”だよ。」
って言ってくる。
ばかタレが、そんな下手な催眠術みたいな事でアジア人騙せると思うなよ!
「あの、コーヒー頼んだんだけど、アメリカーノ」
「あぁ、それはね、”アメリカン”。”アメリカノ”はカクテルだよ。」

紛らわしいわアホ!
彼はウェイトレスに、このカクテルは何が入ってるか聞いた。
ウェイトレスのおっちゃんは説明してくれたけど、4種類は含まれていて、もう忘れちゃった。
「まぁ、コーヒーじゃ無いけど、美味しいから飲んでみなよ!ほら!飲んでみ!」

いや、コーヒー出さへんのかい。
飲ませんのかい。
2人で同じくらいのタイミングで、その俗に言うイチゴ味の飴みたいな色をしたカクテルを飲み、「うん!美味しいね!」って言った。
ウェイトレスは、
「だろ〜!」的なことを言い戻っていった。
うん、コーヒーは出てこないらしい。

そして、
「ごめんね、お酒飲める?」
と私に聞いてきたから、
「うん、だいすきだよ」と伝えた。
彼も大好きらしい。
というか、注文が同じだったことが、少し嬉しかった。
合うんじゃね?そう思ったから。

「おれさ、海外きてから、注文間違ったの3回目なんだよね笑 1回目と2回目は2人前来たけど、3回目はアルコールが来たか〜」
って言ったら、彼はケラケラと笑ってくれた。

それからモデルの話も少ししてみたけど、
何だか盛り上がらなくて、すぐ会話が終わる。
彼は趣味は?って聞いてきた。
咄嗟に出たのが、”スノボ”と”読書”で、どっちも彼はやらないらしい。
私が逆に聞き返したら、”映画を観ること”だと言った。
「忘れてたー!!!それおれも好き!!」
ここで私たちは今日1番の盛り上がりを見せる。
好きな映画はどれとか、
最近はこれを観たとか、
この監督の作品が好きとか、
2人とも観たことがある映画が多くて、
「それ知ってるー!良いよね〜」
みたいな感じ。ひと通り話して、共有して、観てほしいと言われたものをちゃんと記録した。

「ところでごめん。名前、なんて言うの?」
私が問うた。
「僕のイングリッシュネームは”duke(デューク)”だよ!」
「待って、めちゃくちゃかっこいいやんけ」
「カッコいい?ありがとう!君のイングリッシュネームは?」
「ayuma(アユマ)、そのまんまだよ」
「そうなんだね、じゃあその名前は知ってる」
「いいなぁ〜、イングリッシュネーム、かっこいいなあ」
「もしよかったらでいいんだけど、君のイングリッシュネームを僕が考えてもいい?」
「なにそれ、いいよ!面白そう」
「ちょっと待っててね、考えるから」

少しだけ待って、彼が言った名前は
「jerome(ジェロム)」

「くっそカッケェじゃん!!!」
「気に入った?」
「もちろんだよ!意味は?」
「無い、何となく笑」

後で調べたら、フランスと英語の男性名に多いらしい。
うん、気に入った。

「でもこのイングリッシュネームって、dukeの時は誰が考えたの?親?」
「違うよ、英語の先生が考えた」
「あ、そんな感じなんや笑、じゃあdukeはおれの英語の先生ってことか」
「あははは、ちがうよ〜、僕も勉強中だから」

そんなジョークを言ってみた。
というのも、私とdukeはdukeの方が少し話せるくらいで、どちらも難しい説明とかは、母国語から英語への翻訳を使いながら会話をしていた。

異国の地で、私たちが会っている国の言葉ではない言葉を使い、その国とも私の国とも違う人間と、頼んだつもりのものとは違う飲み物を飲んでいる。
そして今、2人がもう一度会えた国に多い姓を偶然にも命名された。
客観的に自分の置かれている状況を考えたら
何とも言えない可笑しさに、ついついニヤけてしまっていたことに後から気がつく。

英語が流暢では無い中で、なんとか悪戦苦闘、四苦八苦しながら気持ちを言葉にして伝え合い、共感を募らせる。
でも、何故だろう。
多分、私たちに言葉なんて要らなかった。
何故だか”この人とは合う”って確信できた。
根拠なんかない。
感じた。

「面白そうな場所、また探しに行かない?」
そう彼が言って、
「うん、行こう!」と私は言った。
席を立ち、
「おれが出す!待たせたから!!」って言ったのに
「大丈夫、割り勘にしよう」
って言って、先に出されちまった。

貴方は何処まで紳士なのか。

店を出て、遠くを指差し、
「あっちおもろそうちゃう?」
「いいね、いこう!」
当てのない旅、2ndシーズンに突入。

また服を見て、沢山の行列ができている店を野次馬して。
「今日は1日中暇?」
そう聞いてきたから、
「もしかしたらルームメイトが外でご飯食べたいって言ってたけど、連絡こないからいいよ」
って言ったら
「じゃあ、みんなで食べない??」
と、誘ってくれた。
「おっけい、誘うから待ってて!」
私はルームメイトに今日のこの予定を伝えたら、いいなあ〜と羨ましがっていた事を思い出し、絶対に来ると言う確信のもと、呼び出した。

「来るってさ!美味しそうなお店探しに行こうぜ!」
今度は当てがあるようで無い、グルメ探しの旅に出た。

「あと2キロで着くよ〜」
「あと700メートル!」
やっぱり私のルームメイトは少し頭が足りないんだよなー。
分かりにくい、あと何分かで教えてくれ。
電車使ってんのか、歩いてるのかで全然時間違うだろうよ。

気を取り直して、店を探している途中で、たまたま横断歩道を歩っているルームメイトを見つけ、合流する。
簡単な自己紹介を済ませて、店を探す。
みんな嫌いな食べ物は無いらしい。
「じゃあフィーリングだ!」
私がそう言うと、
「オッケー!」
とdukeが返してきて、面白そうなところを見つけては指差し、歩き。
また人だかりを見つけ、眺める。
私とdukeは、その人だかりでダンスをする集団を観て、音楽に合わせて拍手をして、ヒューヒューと言って。
そこでルームメイトが声をかけてきた。
(一応言っておくが、このルームメイトの1人は天性の空気読めない男である。)
「お店どーするー。」

その時ふと思い出した。
気が合う時の友人といる時の安らぎを。

あぁ、そうだ。
最近感じていなかったから忘れていた。
これだ、これが”友人の感覚”だ。
そして、比較できなかったから気が付かなかった。

あとの話はピザを食べてパスタを食べて、
みんなで話をして、解散しただけだから割愛。
すごく楽しかったけど、割愛。

・感覚的友人

私がたまに感じるこの感覚。
この人の間接キスも、肌に触れることも、お金を多く出すことも、服を貸すことも、何も嫌に感じない。
会う約束をせずとも、また会える気がするからこまめには連絡をしないし、
心の何処かで繋がっているような、そんな感覚。
「あいつは大丈夫、友達だから。」
そう自信を持って言える。

これが私がごく稀に感じる”感覚的友人”。

また1人、大切な友人が増えた。

少なくとも、私はそう思う。

・占いという統計学

そんな感覚的友人は、大抵ある占いに反映される。
それは、誕生日占いだ。
“(自分の誕生日) 相性”これで検索するだけ。
もしくは相手の誕生日で検索するだけ。
何歳?の会話の流れから、dukeの誕生日は1/15であることが判明している。

もちろん検索させていただきますと、
あるんだよ、その誕生日が。

私はただ「やっぱりね、」そう思うだけ。
これは私にとって確かめ算のようなもの。

この人とは合うな、そう思った人は大抵いる。

私に蓄積された経験から弾き出される感覚と
もはや何通りあるかも、どれだけの人数が統計されているのかすら分からない、誕生日相性データは何故かほとんど一致する。

これは私の”感覚的友人”を確信する根拠の一つである。
みんなも試してみてほしい。
意外と当たるから。

・友人とは

難しい定義。
・青春時代を共にした、これは言わずもがな友人。
・「別れて、友達に戻らない?」これも友人。
・「うちら、友達だもんね〜」これも友人。
・「友達になろ!」「いいよ」これも友人。
・私がいう”感覚的友人”。これも友人。

どれが本当の友人かなんて分からないし、
友人とはコレだ!と結論づけるつもりもない。
全員友人のはずだ。
ただ、私がサラリーマンを辞めてから、想うことがある。

“自分にとって大切な人、失いたく無い人、実はシビアに数えてみたら本当に少ない。
だから、友人が多くたって別に構やしない。
ただ、失いたく無い人や、心が繋がっていて、距離なんて関係なく会おうとしてくれ、接してくれる人。
こういう、ひと握りの友人を見極めて大切にしよう。”

そう思っている。

今日また、友人が増えた。
大切だと思える、名付け親の友人が。

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