カスタマーサクセスマネージャがオンボーディング成功率向上にむけて実践した3つのステップ
●はじめに
カスタマーサクセスマネージャ(以下、CSM)にとって、顧客へのプロダクトオンボーディングは永遠の好敵手〜ライバル〜と言っても過言ではないほど、その重要性と難易度の高さは広く知られているところだと思います。
LAPRAS SCOUTもご多分に漏れず、やはり顧客のオンボーディングは常に試行錯誤です。
CSMメンバーの中では、「なんとなく、導入1ヶ月後の時点でその後の成否が分かってしまうね…」というのが共通認識でしたが、
・重点的にフォローすべき顧客はどこなのか?
・どのようなタイミングで、どのようなフォローが必要なのか?
といった点は各CSM担当の属人的な判断に依存しており、地味にキックオフ内容の改善などは進めていたものの、なかなかノウハウの蓄積・標準化ができない状態でした。
本記事では、サービスを導入いただいた顧客に対してよりスムーズなオンボーディングを提供していくべく、現状把握・課題特定・施策立案までの実際に行ったことを具体的にまとめています。
ちなみに現在、LAPRAS SCOUTのオンボーディングは以下のような構成となっています。
■ キックオフ
・狙いたいポジションについてのヒアリング
・運用のポイントやアクション目標
・プロダクトの操作説明
・直近1週間のネクストアクション提示
■フォローアップMTG(キックオフ1週間後に実施)
・疑問点の解消
・スカウトメール作成・運用定着にむけたアドバイス など
■マイルストンMTG(導入1ヶ月後に実施)
・導入前後の期待値GAPがないかどうかのヒアリング
・他社平均とのデータ比較や課題の特定/施策提案 など
●オンボーディング成功の定義
実は顧客のオンボーディング成功の定義もあいまいな状態だったため、まずは改善への第1歩として現状を正しく理解することからはじめました。
具体的には以下2点です。
1.そもそもどういう状態をオンボーディング成功とするのか?を定義する
2.オンボーディング成功/失敗のデータを蓄積する
まず【1.どういう状態をオンボーディング成功とするのか?を定義する】について、現在は1ヶ月以内に面談を1件以上獲得していることとしています。実は、最初は「タレントプール件数が●人以上で、メール通数が●件以上で、●●と●●の機能を利用していて…」と、もうちょっと複雑な定義にしていたのですが、管理が大変になることや、これまでのモニタリングを踏まえると面談数の増加が確かに採用数増加に繋がることが見えていたことから、結局シンプルにしました。
そして【2.オンボーディング成功/失敗のデータを蓄積する】に関しては、月に1度CSMのデータメンテナンス時間を固定で設け、オンボーディング失敗・成功データや顧客の定性的な運用状況(採用要件の具体性やサーチの精度、スカウトの品質 など)を、担当顧客ごとに情報を入力しています。
ちなみに2.の方は地味な作業ではありますが、顧客の情報を一番肌感として理解しているのはCSMであり、その肌感を定量情報として集計可能な状態で言語化・蓄積していくことは、よりよいプロダクトづくりに活かすために非常に重要な活動だと感じています。
●オンボーディング成否分析
徐々にオンボーディング成功・失敗のデータが蓄積してきたので、次に
・オンボーディング成否がその後の採用成功とどのくらい関連があるのか?
・オンボーディング失敗の壁はどこなのか?
を探りました。
結果、オンボーディング成功した企業と失敗した企業とでは、半年以内に内定提示が出る割合に1.8倍の開きがありました。やはり、オンボーディングの成否と、成果創出には大きな相関があるようです。
では、オンボーディング失敗となってしまう企業はどのような点で躓いているのか?
実際には面談を獲得するまでにも、
候補者を検索してピックアップする
↓
興味通知(ワンクリックで候補者に興味があることを伝える機能)を送信
↓
メールを送信する
↓
候補者から返信が来る
↓
面談日程を確定する
というステップがあります。
オンボーディング成功企業群と失敗企業群とで、上記ステップのアクション量にどのような違いがあるかを分析してみました。
各ステップで、上記のようにSuccess企業とFailure企業の差分が大きいところを調べたところ、
1.毎週候補者をタレントプールに追加する
2.メールを1通送信する
ことが、オンボーディング成功に立ちはだかる大きな2つの壁であることが分かりました。
●各ステップの離脱要因の仮説立て
では、その壁が壁たる所以は何なのか?
言葉では「候補者を探してピックアップする」と簡単そうに見えてしまいますが、
その中でも
−検索条件を設定する
−候補者のプロフィールページを開く
−候補者プロフィールを閲覧する
−ピックアップするかどうかを判断する
…
等、細かい操作と認知・判断の積み重ねがあってはじめてなし得る作業です。メールを1通書く、も然りです。
そこで、『行動を変えるデザイン』という書籍で紹介されていたCREATEアクションファネルというフレームワークを使って、上記2つの「壁」で離脱してしまう要因の仮説・そしてその仮説に対する施策案を洗い出しました。
■CREATEアクションファネル
ユーザーがある行動に取り掛かるためにはcue,reaction,evaluation,ability,timingの5つのステージを全て通過する必要があり、このステージごとに離脱が発生するという考え方。
↓【一部抜粋】離脱要因の洗い出しと仮説立て
※もし実際にLAPRAS SCOUTを使っていただいた事のある方がお読みいただいていたら、いやいや実はこういうこと感じてました!という忌憚のないご意見もお待ちしています…!
ちなみに『行動を変えるデザイン』には、askenさん、マネーフォワードさん、CureAppさんの事例も掲載されているのでとてもおすすめです。
今後は、上記仮説立てを元に
・オンボーディングフローの見直し
・プロトタイピングで仮説検証→プロダクトバックログへの反映
を行う予定です。
●まとめ
以上、オンボーディングの質向上に向けての現状把握・課題特定・施策立案までの流れをまとめました。施策の効果については、また別途振り返りしないといけないなと思います。
思い返せば、実は半年前くらいに一度「オンボーディングで失敗する要因はなにか?」を自分なりに洗い出そうとしたことがあるのですが、なんだか仮説がとっ散らかったり抽象的だったり、その仮説が大事だという根拠が自分でも言いづらいなと感じたこと等が要因で、途中でポシャった経験をしています。
今回、上記のステップで進めることで、オンボーディングがいかに顧客の成功にとって重要であるか?を初めて定量的に示すことができ、かつオンボーディングの中でも特に重要度が高いスコープを絞り込んだ上で離脱要因の仮設立てができたので、比較的粒度が細かい仮説立てができ、施策に落とし込みやすかったなと感じています。
本記事で伝えたかったことをまとめると、
・CSMによる顧客支援の中で蓄積された肌感は、プロダクトにとってとても貴重な財産である
・その肌感の説得力を高めるためには、定量的なデータとして落とし込める形をつくることが有効
・データ分析により、注力すべきスコープを定められ、より細かい仮説検証や施策立案が立てやすくなる
ということになるかなと思います。
1点目は、SaaSを提供している会社において反対されることはほとんどないと思うのですが、その「肌感」というものについていかにCSM以外のメンバーも客観的な判断を下せる情報に落とし込むか?は、多くのCSM担当の方が悩んでいるのではないでしょうか。自分も未だにそこは悩む部分です。
ですがこのデータ分析結果を社内に共有したところ、営業メンバーや開発メンバーといったCSM以外の方々に、これまで以上にオンボーディングの重要性が伝わり、オンボーディング成功率向上に向けた施策の優先度を上げていただけている感覚があります。
悩めるCSMの方に、少しでもこの記事がご参考になれば幸いです。
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