見出し画像

狂犬病予防法(昭和25年成立時)/ 第一章 総則(目的)第一条

はじまりはじまり。法律を読み始めます。
法律の冒頭には、このように「目的」など、その法律の存在意義などを説明する内容が書かれることがほとんどです。

==

(※條を条に直したり、当時の文字から読みやすい書き方をしています)

第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、狂犬病の発生を予防し、そのまん延を予防し、及びこれを撲滅することにより、公衆衛生の向上及び公共の福祉の増進を図ることを目的とする。

国立公文書館デジタルアーカイブ 狂犬病予防法・御署名原本・昭和二十五年・法律第二四七号

==


書いてあること2つ

・狂犬病の発生を予防し、そのまん延を予防し、及びこれを撲滅する
・公衆衛生の向上及び公共の福祉の増進を図る

何をするのか?

・狂犬病の発生を予防
・そのまん延を予防
・撲滅する

最終目的は撲滅。それはこの法律が成立してから6年で実現できたことに「後から」なりました。本当に撲滅しているかは長い年月が経たないと証明できませんから。
細かいことを言えば、他の国のように野生動物の中で感染が続いているかもしれませんが、調べた限りでは見つかっていない状況にあります。

その状態が続いているのは「発生を予防」「まん延を予防」するために幾つかの施策を行っているから。最も分かり易いことは「予防注射」。このお陰で今も撲滅したと言える状態が続いています。

それはなんのため?

狂犬病を撲滅するのは「公衆衛生の向上及び公共の福祉の増進を図る」ためと書かれています。

公衆衛生

「公衆衛生」については何となく分かると思います。個人が健康向上に取り組むことではなく、地域や社会が個人の健康向上のために取り組む科学や技術や活動のことを言うのだとおもいます。たぶん間違っていないと思います。

公共の福祉

これもなんとなく分かりますが、法律の中に出て来ると気を付けなければならないことがあります。
この言葉は多くの議論がある言葉のようです。Wikipediaの公共の福祉のページをご一読ください。
読んでいただけたでしょうか?、読みたくないですね。それくらい理解の難しい言葉です。

「公共の福祉」そのものの議論よりも「公共の福祉に反する場合」に付いての議論が行われます。反した場合「自由及び権利は制約される」ことになります。
極端で分かり易い例を挙げます。
悪いことをしなければ、この社会の中で自由に生活することが出来ますが、刑事罰対象の行為を行えば自由を奪われ拘束され罰を受けることになる。

「公共の福祉の増進」が実現されることはいいことで、それを国がやってくれるのですから嬉しいことです。しかし、そのために制約を受ける場面も出てきますよと宣言していることにもなります。
この法律を読み進めてゆくと、具体的なことが幾つか書かれていますが、想像できるだろう事として、誰かが所有している犬が狂犬病に感染した(または感染した疑い充分がある)場合、その犬は処分しなければならない、など。所有権という基本的な権利が制限されます。

撲滅のために協力してね、と解釈すればいいのでしょう。

おまけ:撲滅と根絶

この法律では「撲滅」と書かれていますが、感染症関連の書物を読んでいると「根絶」と書かれていることがあります。この違いを調べてみました。

どちらも大まかな意味は「完全になくす」こと。

「撲滅」の「撲」は「うつ・たたく・なぐる」という意味なので、その過程に意義を求めるイメージがあります。
ちなみに撲滅の対義語は「創生」だそうです。創生するのもその過程が大変そうですね。

「根絶」は「根絶やし」という言葉があるように、完全になくし未来永劫復活できないようすることを目的とするようです。感染症対策らしい言葉だと思います。
こちらの対義語は「蔓延」とのこと。これを知り感染症関連の方々が使う理由が分かった!、と思ったものでした。

~~

次回は「(適用範囲)第二条」です。
少し具体的になります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?