見出し画像

M&A医療法人類型の見分け方と注意点

 医療法人のM&Aにおいては、当該医療法人がどの類型なのかを確認する必要があります。
 実際には、定款等の資料がそろっていなかったり、理事長や税理士の勘違いがあり、単に見た目上の資料や理事長からのヒヤリングのみで類型を判断することは危険です。
 今回お伝えするポイントと気をつけるポイントを確認して、正しく類型を把握ください。

出資持分あり医療法人

● 設立年月日が平成19年(2007年)3月31日までであること
  平成19年(2007年)4月1日施行の第五次医療法改正により、出資持分の
  ある医療法人の新規設立はできなくなりました。よって、出資持分があ  
  る医療法人は、少なくとも平成19年(2007年)3月31日までに設立され
  ています。
  設立年月日は、登記事項証明書を確認するとよいです。

<登記事項証明書の法人設立の年月日>

●定款に出資持分に関する定め(通常は、①社員の 退社に伴う出資持分の払戻し、及び、②医療法人の解散に伴う残余財産の分配に関する定め)がある
  定款で確認ください。

①社員の退社に伴う出資持分の払戻しの定め
第9条 社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払戻しを請求することができる。
②医療法人の解散に伴う残余財産の分配に関する定め
第34条 本社団が解散した場合の残余財産は、払込済出資額に応じて分配するものとする。

●貸借対照表の純資産の部に出資金がある
  出資持分なし医療法人では、基金供出型医療法人であっても出資金とし 
 ては0円ですので、出資金が計上されているかどうかで確認することがで
 きます。また、出資金ではなく「資本の部」として「資本金」として計上
 されていることもあります(医療法人会計基準では、「純資産の部」「出
 資金」とされています)。
  ただし、基金が誤って出資金や資本金として計上されていることもあり
 ますので、決算書のみをみて判断はできません。

<出資金が計上されている>
<資本金が計上されている>

●その他資料
  法人税申告書、設立時の書類等も確認ください。

持分なし医療法人(基金なし)

● 設立年月日
  出資持分ありとして設立された医療法人も持分なし医療法人に移行で 
 きるため、設立年月日だけでは判断できませんが、平成19年(2007年)
 4月1日以降に設立されている場合には、少なくとも出資持分なし医療法
 人であることは確かです。

●定款
  定款には、出資持分に関する定めはありません。また、基金に関する
 定めもありません。ただし、基金に関する定めがありながら、基金が拠 
 出されていないこともあります。

●貸借対照表に出資金・基金がない
  貸借対照表に出資金(資本金)、基金の計上がありません。ただ、持分
 あり医療法人が持分なし医療法人に移行した場合、出資金が残っている場
 合があります。

<出資金・基金の計上がない>
<基金を返還し代替基金をおいた場合>

持分なし医療法人(基金制度を採用した医療法人)

●設立年月日
   出資持分ありとして設立された医療法人も持分なし医療法人に移行で 
  きるため、設立年月日だけでは判断できませんが、平成19年(2007年)
  4月1日以降に設立されている場合には、少なくとも出資持分なし医療法
  人であることは確かです。

●定款に基金の定めがある
  法人の定款に以下のような基金の定めがあります。ただし、この定めが
  あったとしても、実際に基金が拠出されているとは限られません。

              第3章 基金
第6条 本社団は、その財政的基盤の維持を図るため、基金を引き受ける者  
 の募集をすることができる。
第7条 第7条 本社団は、基金の拠出者に対して、本社団と基金の拠出者  
 との間の合意の定めるところに従い返還義務(金銭以外の財産について
 は、拠出時の当該財産の価額に相当する金銭の返還義務)を負う。
第8条 ・・・

●貸借対照表に基金がある
 貸借対照表に基金の計上があります。ただ、基金拠出型でありながら、出資金又は資本金として計上されてしまっていることがあります。

<基金が計上されている>
<基金が計上されている>


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?