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M&A実行後の秘密保持・公表

 M&Aにおいては、最終契約書において秘密保持義務が定められます。これについて、売手側から、M&Aを実行したことを付き合いのある取引先、ロータリークラブなどで聞かれたら回答したいといういう要望をいただくことがあります。 
 M&Aのリリースについては、適時開示の内容にも留意する必要があります。


秘密保持義務

 最終契約書では、一般的には以下の情報について秘密保持義務を負うことを定めます。対象法人に関する情報は、M&A実行前は買主側、M&A実行後は売主側がその義務を負うものと定められます。

<秘密保持の対象となる情報>
・最終契約の交渉過程に関する情報
・最終契約締結の事実及び最終契約の一切の内容
・対象会社(M&Aの対象となる法人)に関する情報
・相手方の情報  など

 一方で、売主側から、「最終契約締結の事実」を言えないのは、M&A実行後の取引先への引継ぎ、地元のロータリークラブでのお付き合い等において支障があると指摘されることがあります。
 秘密保持義務では、予め相手方の承諾があれば、秘密情報を開示することができる旨を規定しますので、当該規定により対応していただくことになります。そこで、秘密保持義務の例外として、取引先や所属するロータリークラブで「最終契約締結の事実」や「旧オーナーの処遇」については回答できる旨を定めることで売主側が理解されることもあります。なお、この場合においても、契約内容(株価や条件)については開示してはならない内容です。

公表

 M&Aに関する公表・リリースについては、最終契約書において、以下のような規定がおかれ、売手側及び買手側が協議の上、ホームページ等で実施することことになります。

<公表に関する規定例>
本株式譲渡に関する公表は、売主及び買主が協議の上実施することとし、その具体的な内容、時期及び方法は、別途合意して定める。

 公表の部分で問題になるのが、買手が上場会社の場合に行う適時開示です。適時開示制度とは、金融商品取引所の規則により、株式譲渡等のM&Aを行う場合に、売上、利益、総資産などの一定基準に該当する場合には、投資家にその内容をタイムリーに知らせるため、開示する制度です。
 開示すべき内容は、決まっていますので、買手が予め証券取引所と内容を確認の上、開示の準備をします。
 このとき買手からの開示内容に、株式等の取得金額が含まれていることがあります。売主側は、取得金額が開示されることについて好ましく思わないケースが多いです。
 そのため、開示される内容については、証券取引所と調整の上、開示せざるを得ないとしても予め売主側と調整しておかないと、思わぬトラブルになるケースがありますので、ご留意ください。

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