夢と現実 2話
あれから10年。かなりの月日が流れた。テレビを見ると彼が相方を作り、漫才をしている。結局、売れたら迎えに行くという定義が分からぬまま。そして、忘れることも出来なかった。
俺はお前が大好きだ。絶対忘れないからな。
この言葉をどこか信じていたのも事実。でも、芸人って遊ぶということも知っている。覚えてるはずがない。そんなことを思っているとスマホが鳴る。
もしもし。どちら様ですか?
俺だよ。覚えてへんか?
、、、覚えてるよ。どうしたの?
売れたかどうかは分からへんけど、お前を迎えに行きたい。今度はちゃんと幸せにする。
ちょうど10年。狙ってたかどうかは本人しか分からないけど、待望の連絡なはずなのに何か腑に落ちない。複雑な気持ち。今日のところは保留にした。
電話の向こう側で彼は悲しそうに分かったとだけ言い、電話を切った。
嬉しいはずの電話。待ってたはずなのに。
何故か分からないけど、涙が止まらなくなった。