感情の渦に呑まれた国家


2045年、脳マシンインターフェース(BMI)技術が急速に発展し、ニューラルリンクという革新的な技術が世界中で普及していた。この技術によって、人々はリアルタイムで国の政策や法律に関する意思表示を行うことが可能になり、伝統的な政治制度が根本的に変わった。

直接民主主義が実現されることで、政治家や政党の必要性が薄れ、国民全員が政策決定に参加する新しい政治システムが誕生した。しかし、このシステムには暗黒面が潜んでいた。人々の意思が直接政策に反映されるようになったため、感情的な意思決定が増え、ポピュリズムが台頭し始めた。

次第に、社会は分断され、対立が激化していった。国民は感情に流されやすく、デマや偏見に基づく政策が次々と採択されていった。政策決定の過程で専門家の意見が無視されることが多く、科学的根拠に基づかない政策が立てられるようになった。

ある日、国境を越えた環境問題が発生し、国家は存亡の危機に直面した。しかし、感情に訴えかけるポピュリストたちは、短期的な利益を追求する政策を提案し、国民はその言葉に惹かれてしまった。結果として、問題の本質を見失い、状況はさらに悪化していった。

この危機を乗り越えるべく、一部の国民は専門家の意見を取り入れた合理的な政策を提案し、国民投票を求めた。しかし、ポピュリズムに囚われた多くの人々は、彼らの提案を拒絶し、専門家たちをエリート主義者として攻撃した。

結局、国家は混迷の中で環境問題に対処できず、その結果、経済崩壊や社会的混乱が生じた。多くの人々が苦しみ、国家は破綻の一途をたどっていった。

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