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「日常の旅」に出る。

北にある、少し栄えた街。この街に住んで2年が経とうとしている。とはいえ、実は学生時代にも2年ほど住んだことがあるので、通算したら4年ちょっとになる。

そこそこの年月を過ごしたこの街は、食べるものにはとにかく困らない。海鮮だってお肉だってラーメンだって、お酒の締めにはスイーツを楽しむこともできちゃう。しかし、「観光スポット」があるかというと、これがまたびっくりするほどないのである。

そんな街に友人が観光に来たのは、2月下旬、日も長くなり最高気温も氷点下にならない日が少しずつ増え始めた頃のこと。

そもそも今回の話は前回noteに書いた釧路旅の夕飯で決まっていた。10月に決めた2月の予定が本当に実行されるなんて私の大学時代の友人の集まりではまず有り得ないので何よりもそこに驚く。それもこれも、航空券はここが安そうだけどどうする、宿はこのプランの中から選んでくれ、と、こまめに連絡をくれ、食事の候補に挙げた店をgoogle mapにまとめ上げ、グループトークのノートに旅程を日の出・日没とともに書き出してくれる友人と、とにかく多忙なはずなのに縁もゆかりもない北海道まで遊びに来てくれる行動力を持った友人のおかげだった。

待ち構える側の私がしたことといえば、びっくりするほど浮かばない「観光スポット」から友人の興味がありそうな場所をピックアップすることと、Twitterを駆使して美味しい食事の情報を集めておくことくらいだった。多分、今回の件がなければグッドデザイン賞のホームページを見ることは一生なかったと思う。

とはいえ、一度この街に住んだことのある友人と、観光というものにそもそも興味のなさそうな友人、そしてどれだけ絞り出したいと思えど「観光スポット」には限界があったので、今回の旅は最終的に「この街に住む人が休みに遊びに行くような、この街の日常を過ごす旅」となった。

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この吹き抜けの美しさなんて、ぶらさがっている黄色いもののモチーフなんて、何一つ考えたことがなかった。

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ここは行ってみたいと思っていたけれど、特に行く機会もないままだったので、今回行くことができてうれしかった。しかし、何も考えないで行きたい場所に挙げたは良いが、地面はツルツル、さらに坂道、階段。北海道生まれ北海道育ち、冬のツルツル路面と長い付き合いで冬底の靴を履いている私でもここから転げ落ちるんじゃないかと思う場面が数回あり、本州生まれ本州育ちの友人を危険な目にあわせた。こんなに足に力を入れて歩く機会は本州にいたらそうそうないだろう。変なところ筋肉痛になりそう。

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この公園に最後に来たのは何年前だろう?同居人と2年前くらいに来たような気がする。あのときはレンタサイクルで園内回ったっけ、そういえば両親と妹がこっちに住んでいたときに皆で来たこともあるな。それにしたってこんな真冬に来るのは初めてだし、ガラスのピラミッドの中に入るのも初めてだった。冬の閉館時間間際だったので、人が全然いなくてとても良かった(「良かった」と表現してしまうと何がどうだったのか全く伝わらないまま、ただただ想いを記しただけになってしまうけれど、とにかく「良かった」に尽きる)。

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友人が行きたい候補に挙げていた夜景の綺麗なカフェ。夜景は綺麗に撮れなかったけどしっかり目に焼き付けておいた。コーヒーを飲むと胃が痛くなってしまうので、いつもココアを頼んでいる。スイーツを食べる余力はないけれど、甘いものは欲していたので丁度良かった。夜カフェといえば、大学卒業〜社会人2年目くらいまでの、皆が免許を取り車を運転するようになって行動範囲が広がった頃に流行って何度か行ったな。皆元気にしているだろうか。結婚したり、転職したり、海外渡航したり、皆それぞれの道を歩み、年齢を重ねて、もう二度とあんな風に夜のドライブに行くことはないんだろうなあと一日中動き回って疲れ切った頭でぼんやり考えていた。

こんな感じで、日常で行くような場所に普段一緒にいることのない人と行くことは、それはそれは楽しかった。そして、この旅をさらに楽しくさせた要素がもう一つ。写真だ。

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最近はなかなかカメラを持って歩くようなおでかけをすることもなくて、久しぶりの機会だったことがうれしい。カメラを持っているのが自分だけじゃないことがうれしい。人と一緒に記録を残すのがたのしい。いつもは撮る側の人間なので、撮られる側になるのもたのしい(びっくりするほど表情が硬かったのでもっと上手に、自然に写ることができるようになりたいけどなかなか難しいよね)。

あまりに楽しかったので写ルンですを3年ぶりくらいに買ってしまった。現像するのが楽しみだな。あまり上手に撮れていないんだろうなと予想がつくけれど、それでもわくわくする。

あと、普段写真を撮る側の人間は、自分が写っている写真の少なさに悲しくなってしまうことがたまにあると思うので、いつも撮る側に回りがちな友人のこともいっぱい撮ってあげたいと思いながらシャッターを押していた。楽しかったときの空気が伝わるような写真が残せていたらいいんだけど。

それにしても、旅のあとに各々が撮った写真を見ていたら、普段カメラを持たない人間が撮った写真の方が構図が良くて悔しいので、それは次回の課題にしよう。これが日頃のセンスの差でしょうか。


ああ、次は私も、誰かの日常に溶け込むような旅を、どこかでできたらいいな。雪が溶けた頃にでも、きっと住むことはないどこかの街で。

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