いぬ

実家で飼っていた犬が死んだ。最近具合が悪くてご飯もあまり食べなくなっていた。
小2の時からいるので、犬はいて当たり前の存在で、年をとってしんどそうにしているからいつかいなくなるとわかってはいたけれど、今日だなんて思わなかった。というか思いたくなかった。

年をとってきたけどまだ全然元気な時は、犬がいなくなることを考えて突然夜に泣いたりすることがあった。だけど、かなりよたよたし始めて昼間寝ていることが多くなってから、私はそのことについて考えるのをやめた。考えたら本当になってしまいそうで怖かったからだ。

こないだは飼っていたハムスターが死んだし、今まで何度か親戚の葬式にも出たことがあるから、生きているものがいつか死ぬことなんて分かってはいる。私だっていつかは死ぬ。
犬も祖父母も両親も兄弟もみんなが生きている世界で死にたいって思っていたけど、それは犬が死んだことで叶わなくなった。そう考えるともっと早く死ねばよかったとすら思う。そんなこと犬が望むかどうかなんて知ったこっちゃない。

正直今までこんなに長く深く私の人生に関わった存在が死んだことはなかった。べつに実家に帰って撫でまわして溺愛してたわけじゃない。ただ犬はいつもそこにいて、私のアイスをうらめしそうに見て、ゲージの扉を引っ掻いて外に出せっていうのだ。あんまり知らんぷりすると怒って吠えるのだ。私がしんどい時に寄り添ってきたりなんかしないけど、他の人や家族が冷たくたって、犬は私に対していつもと同じだった。私はずっと犬のことが大好きだった。
でももう犬はいない。人が死んだ時と同じくらいしんどい。こんなんじゃきっと祖父母や家族の死に耐えられない。そう思うとすごく怖い。

14年間ありがとうって笑って見送れるほど私はできた人間ではない。私がいない間にいくなんて薄情なやつ。14歳なんてまだまだこれからじゃないか。

#エッセイ #犬

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