見出し画像

1年生を泣かした中・高学年を叱らなかった理由

去年の秋頃、稽古の休み時間中に突然小学1年生の女の子が泣き出してしまいました。
その日は指導者が私一人。私以外の指導者と面をつけている生徒(学年が上の生徒)は別の剣道のイベントに行っていて、必然的に学年・年齢の低い初心者10名以上を私一人で見ている状況でした。

私「どしたどした?転けた?」
小1女子「うう…〇〇君達がぁ…」

1年生の女の子は、泣きながら中〜高学年のお兄さんお姉さんたちの名前を出しました。当然名前を出された剣士たちは、「ヤバい…」と顔色を変えて走っていた足を止めます。

私「うん、〇〇君達が?」
小1女子「〇〇君達と鬼ごっこしてて、あたしまだ1年生なのに〇〇君たち本気で追いかけてきて…」

要するに、中・高学年のお兄さんお姉さんと鬼ごっこをしていたら、本気で追いかけられて、自分は年下なのに手を抜いてくれなかったことが不満だったということですね。

学年や性別関係なく、きちんと平等に見て考えれば、1年生の女の子を泣かせた中・高学年のお兄さんお姉さんに非はないです。やりたいと言って参加した年下の子とただ鬼ごっこをしていただけですから。

そしてもちろん、そんなことで泣いている1年生の女の子にも非はないです。

なぜなら彼女は、「自分は年下だから手を抜いてもらえる、勝たせてもらえる」…という思い込みが間違っているということも、これから先、そんなことがいくらでもあることを当然まだ知りません。

その為私は、両者とも怒る必要がないという結論に至りました。

私「そうかぁ。でもそれはすごいな!だって足の速い中学年や高学年が本気になるくらい〇〇の足が速いってことだよ?いや〜先生羨ましいわ。先生もそんなふうに速かったらなぁ。〇〇すごいなぁ!」

たかが鬼ごっこですが、何も悪い事をしていないのに、この子が泣く原因となった中・高学年たちに「中・高学年なんだから/女の子なんだから、手抜いてあげなきゃダメでしょ?」と…本質を見ずに、学年や性別で叱ることだけは避けようと考えました。

1年生の「自分は年下なのに、年上は手を抜いてくれなかった」という主張を冗談でも肯定してしまうと、今はまだ鬼ごっこレベルですが、例えば試合や学校のテストなど、何かあるたびに「自分の力の無さを他人のせいにする」ようになってしまうかもしれないからです。

そんな風になってしまったら、自分で何も考えられなくなってしまう
「自分より下にはとにかく強気で、上の人には自分の無力さを変える努力もしないで文句だけを言う」…そんな大人になってほしくない。

そしてそれは「大人だからそれが当然理解できている」「自分は大丈夫」なんて思っていたら大間違いで、自分自身も常に気をつけなければいけないことなので、この事件は本当に勉強になりました。

私が生徒たちと関われる時間は、おうちの方は勿論、学校の先生と比べれば本当にごく僅かです。だからこそ、一回一回の稽古を如何に充実させられるかが非常に大切であり、一つの鍵なんだと私は考えています。

その中で「礼儀作法」や「人間形成」を伝えていかなければなりませんから、剣道をしているときだけでなく、剣道をしていない休憩中の何気ない場面にも、時折「目や意識」を向けるようにしています。

もしよければサポートをお願いいたします。サポートしていただいたお金は、少年剣道を盛り上げる・支える活動や自身の指導している生徒のために使わせていただきます!