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夏の夜の表現者

夏といえば、の1つにお祭りがある。

今年は恋人と花火を見ることも、屋台で買ったいか焼きを食べることもなく夏の終わりを迎えたが、少し変わったお祭りに参加してきた。

湯布院映画祭である。

湯布院映画祭とは、今年で44回目を迎えた日本最古の映画祭と言われる。
1976年、旧湯布院町でまちづくりの1つとして始められたこの映画祭。映画館がない湯布院で「映画館ひとつない町。しかし、そこに映画は在る。」をコンセプトにまちづくりの一環として始められた祭りが今でも続いている。
初日には前夜祭として、駅前広場に巨大なスクリーンを設営して(このスクリーンは実行委員の手作り!)、時代劇等の映画が野外上映される。
2日目以降は、公民館で毎年違ったテーマのもとに組まれた特集、新作映画の上映が行われる。今年はプロデューサー特集として佐藤現さん、森重晃さんの映画などが上映された。
また、シンポジウムや毎晩のパーティなど、制作者と観客が作品について語り合える場も多く用意されている。

この映画祭にちょっとした縁で、スタッフとして関わることになった。4日開催中のたった2日間の参加だったが、ステキなご縁に恵まれたのでその証をここに残しておこうと思う。

全ての実行委員がボランティアであること。
10代から60代まで、「映画が好き」という理由で集まったボランティアによって現在まで続いていること。

監督も脚本家も役者も観客も、平等に映画について言葉を交わせること。
時にはシンポジウムにて観客から手厳しい言葉が飛び制作者陣が落ち込んでいる姿を見ること。

誰でも知っている有名な役者に「大きくなったねぇ」「あのシーン良かったねぇ」と叔母のように声をかける、長年映画祭に通うおばちゃん。
「愛媛から毎年来てるんだよ〜」と嬉しそうに昨年の写真を見せてくれるおじいちゃん。

いろんなものを見て、いろんな言葉を聞いて、いろんな人に出会った。

ありがたいことに、初日のパーティの司会を務めさせていただいた。司会の相方はもう何年も実行委員として参加している方だったので安心して引き受けられた。
パーティも終盤になって最後の挨拶のとき、その相方の方がふと「宴もたけなわではございますが…」と挨拶を始めた。
ステキな言葉を使う人だなと思った。
言葉そのものはありふれたものかもしれないけれど、定型文句ではなく自分の感情として出た言葉だと感じた。

映画の制作に関わる人、映画が好きな人は表現者であり、自分の言葉で自分の感情を表現できる豊かな人なのだなと感じるお祭りだった。

来年の夏もまた、ステキな出会いに巡り会えますように。

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