記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

恋と深空 時系列順の感想【レイ編】

時系列に沿って、レイの物語を追いつつ、感想を添えていきます。ネタバレがありますので、未読の方は先にゲームをプレイする事を強くお勧めします。


主人公との出会いと無力感

「レイ。お前の両親も医者だと聞いていたが、医学部に進学したということは両親の後を継ぐことにもなる」
レイは笑った。
「はい。子供の頃、寝かしつけの物語も病院の話ばかりで。少しずつ、私も染まっていったのでしょう。」

深層「孤独な灯」

まだワンダラーが各地で暴れている頃だ。病院は避難所となり小児病棟は帰る場所のない子供であふれていた。ある午後、庭を通った時、「シャリシャリさん」を持って泣いている女の子を見かけた。

絆デート「思い出の章」

レイは医者の両親に連れられ、避難所になった病院にいたところ、病院の庭で主人公と出会ったようです。

「溶けたアイスに「処置」をしてあげた。(中略)綺麗な形にはならなかったが、彼女は嬉しそうに食べた。次は私にもおごると。『甘いものを食べれば、嫌な気持ちが消える』と言っていた。」「それが、あなたが甘いものを好きになった理由?」「…かもしれない。無意識にその言葉を覚えてしまった。」

絆デート「思い出の章」

初めて会った時の言葉、それも子供の時に交わした言葉を覚えているという事は、レイにとって、とても印象的な出会いだったのでしょう。小児科で主人公以外にも子供がたくさんいる場所なのに、ひときわ記憶に残っているという事は、主人公の存在は大きかったようです。

主人公と出会った後、悲惨な事件が起きます。悲喜交交なこの時期を振り返ってレイはこう述べています。

12歳の夏はとても長かった。長すぎて、一瞬で忘れてしまうような些細な物事もはっきりと思い浮かべることができる。

秘話「終わらない冬」4話「困難の中を進む」

この事件はレイの人生に大きく影響を及ぼす事件でした。

私はもう少しで、大切な人を死なせるところでした(中略)…私のEvolが、制御不能になったんです

秘話「終わらない冬」4話「困難の中を進む」

彼の手首をつかんで共鳴の波動を拡散させると(中略)氷のトゲが収縮し、皮膚の下に消えていく。(中略)冷気が手のひらから伝わってきた。心臓がキリで刺されたように痛み、わずかに痙攣が起こる。

思念「温かな雪に溺れて」

病院にたくさんのワンダラーが現れて…私はあなたを守れなかった。すごくリアルな夢だった。

思念「夢の亀裂」

どうやら避難所となっていた病院が、ワンダラーの襲撃にあったようです。その時レイのEvolが暴走し、助けようとした主人公が傷ついてしまったのではないでしょうか。

お前のせいじゃない。彼女は元気だ。安心するといい。

思念「夢の亀裂」

幸い場所が病院ということもあり、主人公は一命をとりとめたようです。

「ご両親以外に、医学部に入ろうと思った理由はあるのかな?」(中略)「ある人の…ためです(中略)自分が彼女の脅威になった時、私はあの時のように何もできないままでいたくない」

深層「孤独な灯」3話「心」

レイは傷つけてしまった自分は何もできず、医師に任せるしかなかった事がとても悔しかったようです。自分も主人公を助けられる医者になりたいと思うようになったのでしょう。

少年時代から続く恐怖

夏に起きた事件がおさまり、主人公が元気に回復した後、残暑だったであろう9月にレイは誕生日を迎えます。そこでレイは悪夢を見るようになります。

12歳の夏はとても長かった。(中略)彼の夢に、初めて黒い死神が現れたのだった。

秘話「終わらない冬」4話「困難の中を進む」

レイが夢を見始めたのは12歳の誕生日だ。

秘話「まだ見ぬ黎明」5話「誕生日」

視界には、震えている一人の男の子だけが残された。レイが前に立つと、その大きな影が男の子の血まみれの顔に落ちた。男の子は恐怖のあまり声を出すこともできず、ただ澄んだ目でレイを見つめている。

秘話「終わらない冬」1話「昼間のように明るい夜」

少年の顔からは人間らしい表情が消え、目の下には奇妙な突起が皮膚を破って飛び出していた。(中略)レイの手の中の氷柱がジョノの胸を貫いていた。(中略)少年は黒い霧となり、彼の指先で消えた。

秘話「まだ見ぬ黎明」5話「誕生日」

レイは、少年がワンダラーに異化した瞬間に殺害されたシーンを夢に見たと思われます。一歩間違えば、自分が主人公を死なせてしまったかもしれないと不安を抱いている中で、大人になった自分が本当に人を殺してしまう夢を見た事は、レイにとって相当な衝撃だったでしょう。大人になった後でも、夢を見た後は精神的に追い詰められている様子が描かれています。

レイははっと目を覚ました。(中略)レイは乗客に配布されたアルコールティッシュの袋を開けた。手についているはずのない赤黒い血痕を、力を込めて拭く。

秘話「終わらない冬」1話「昼間のように明るい夜」

大人になった時ですら、このような様子ですから、子供の頃の精神的苦痛は測り得ません。

レイは翌年、医学部へ入学する事になります。病院内の壁に貼ってあった医師紹介に「2035年 天行大学医学部臨床医学専攻」と記載があったので、わずか13歳前後で大学へ進学したことになりますから驚異的です。

雪合戦で投げてやろうと思ってたんですけど、それ以来会わなくなっちゃって。

絆デート「擬雪の章」

レイは主人公に何も言わず天行市へ引っ越し、それ以降も主人公と交流はなかったようです。立派な医者になるまで、主人公とは会わない、という覚悟だったのかもしれません。

大学へ進学したレイは、実験である事を目撃します。

「レイ、お前は自分の担当箇所の実験レポートを勝手に処分したのか?(中略)その実験のために、お前は実験室で1年間苦戦していたではないか。データを削除する時、その行為で自らの努力が灰になるとは思わなかったのか?」(中略)「ファン教授、このプロジェクトは、コアエネルギーの心臓介入療法の応用についての研究ですが、私は実験の時…」画面に映し出されたのは、半分以上を黒い結晶に覆われた心臓だ。正確に言うと、黒い結晶の塊から生えた、脈動する人間の心臓の半分のようなものだった。

深層「孤独な灯火」4話「誓いの言葉」

レイが実験で見たのは、コアエネルギーが、単なる結晶ではなく、心臓を模した形を成している様子でした。これを見た時、レイは子供の頃から見ている夢を思い出したでしょう。ただの夢ではなく、本当に人間がワンダラーになるかもしれない、そして、自分もいずれ人殺しになってしまうかもしれない、さらに、主人公を自分の手で殺してしまう事があるかもしれない、と。レイは恐怖を打ち消すべく、レポートを処分して現実逃避を図ります。

人助けへの固執

自分が人殺しになってしまうかもしれないという恐怖は、レイを人助けに執着させるようになります。

卒業して間もない頃、長恒山で大規模な磁場異常が起こりました。レイは救護活動へ参加します。

人を救うというのは、他人をかばってワンダラーの攻撃を受けることじゃないんだぞ(中略)レイ、お前は人助けとなると誰よりも必死になるよな。仕事熱心な医療従事者は大勢見てきたが、お前ほど固執する奴は見たことない。

秘話「終わらない冬」4話「困難の中を進む」

自暴自棄になりかけている様子ですから、レイはかなり精神的に追い込まれているようです。

この両手で、彼は数々の欠損した弁膜や心臓の裂け目を縫い合わせてきた。しかし、10年間何度も見ている夢の中で、同じ手で無数の命を奪ってきた。

秘話「終わらない冬」1話「昼間のように明るい夜」

レイは人を救う事で、自分が人殺しになるかもしれないという恐怖を拭っているように見えます。

悲惨な経験から生まれる死生観

夢に必死に抵抗していたレイでしたが、夢は現実になってしまいます。

喉を絞められたかのように声が出ず、レイは無言のまま指を上げる。トオヤは不思議そうにレイの指した方へ視線を落とすーー。その胸元はぼんやりと青く光り、不気味なほど美しい結晶が静かに広がっていた。(中略)結晶はどんどん成長していく。嫌な予感がしたレイは腕を伸ばしたが、(中略)結晶が凄まじい速さで広がり始め(中略)瞬く間に手足を浸食し、歪ませ、不気味な形に変えていく。

秘話「終わらない冬」6話「より深い悪夢」

よりにもよって大学の先輩という身近な存在がワンダラーになってしまいました。

「もう俺は助からない…殺せ…俺を殺してくれ…!」レイの頭が真っ白になる。「ーーできません!」

秘話「終わらない冬」6話「より深い悪夢」

自分が人を殺す夢から必死に逃げようとしたレイに、トオヤは自分を殺すように言います。夢を否定し、人助けに固執してきたレイに、そんな事ができるだろうはずがありません。レイは必死にあがきますが、トウヤのワンダラー異化は止まりませんでした。その時、レイは悟ります。

この時、レイは初めて知った。救済を意味する「生」に、これほど醜悪で忌まわしい瞬間があることを。(中略)化け物のような姿になり、永遠に解放されることなく生きていく…果たしてそれは、救済といえるのだろうか。

秘話「終わらない冬」6話「より深い悪夢」
ホーム画面

レイは今まで夢の中の自分がなぜ人を殺してしまうのかまで考えが至っていなかったのでしょう。完全にワンダラー化する前に殺していた時もあったようですし、夢の内容自体が衝撃的だったので考える余裕がなくても、しかたがありません。

レイがこわばった指を動かす。手のひらの氷柱は血に染まり、底の見えない漆黒へと変わっていく。トオヤの体は数歩離れた所に倒れ、やがてくすんだ青色の煙となって消えていった。

秘話「終わらない冬」6話「より深い悪夢」

夢の中の自分の行動意図を理解したレイは、自分の手でトオヤを葬ります。レイの死生観はこの時にできたと思われます。レイは後にこのように語っています。

「しっかり生きる」という基準を満たすだけでも、人によってはなかなか大変だろう。

思念「長き日の痕跡」

死は命の摂理だ。私達にそれを変えることはできない

深層「雪まみれの階段」1話「早春の死」

遠くても近くても、死はいずれ必ず全ての者に追いつく。だが、このような形では決してない

深層「雪まみれの階段」4話「永逝」

人は自然の摂理にそって生き、そして死にゆくのが望ましい。無理に生き永らえさせるものではない。ましてやワンダラーになってまで永遠に解放されることなく生きていく事は、死ぬことより辛いことだ。きっとレイはそう考えているのではないかと思います。

逃げられない運命

朦朧とする意識の中、夢の中でかつてレイに殺された人々が再び現れる。そして一人、また一人と彼の前で倒れていき、死体で埋め尽くされた谷は巨大な墓場と化した。吹きすさぶ風の音が谷にこだまする。それは天地から聞こえる嘆きのようでも、死にゆく人々の慟哭と悲鳴のようでもあった。

秘話「終わらない冬」6話「より深い悪夢」

風の音がレイには人々の悲鳴のように聞こえています。ワンダラー化して仕方がなかったとはいえ、殺さなければならなかった事は、レイにとって納得できるものではなかったでしょう。レイは当時の事を振り返ってこう述べています。

「…死がもたらす痛みって、本当に時間と共に忘れられるものなのかな?」「いや。時間に全てを癒す力はない。人々は、ただゆっくりと慣れていくだけだ。」

1期5章8話「銀世界」

夢に苦しめられてきたレイは、今度は現実に苦しめられる日々を送る事になったのです。

レイはその後、このような事を二度と起こさないために、ワンダラー異化を未然に防ぐべく努力します。その結果、3年後に胎児の心臓成長過程で生じる異常細胞を、Evol遺伝子が正常化させることを発見し、医学賞を受賞します。さらにEvolを用いた大動脈再生修復手術を、世界で初めて成功させます。それによりワンダラーに襲われた患者を救いました。その他にも医学界に数々の貢献をするレイでしたが、事態は好転してくれませんでした。ワンダラーに襲われた患者にワンダラー異化の兆候が見られたのです。

レイはトオヤの死に際に体に現れた結晶を思い出す。ワンダラーに襲われたあの患者の心臓にあった異様な結晶とよく似ていた。(中略)あの不気味な結晶はまた現れた。闇に潜んでいた死神が、再びその無慈悲な目を開けたのだ。未知なる呪いと運命は、まだ終わっていない。

秘話「終わらない冬」6話「より深い悪夢」

この書きぶりから、おそらくここまで結晶が成長した症例を見たのは、この時が初めてだったのではないでしょうか。

最近ワンダラーに襲われた患者が増え、心臓からコアの破片が検出される割合も上がっている。

メッセージ/ストーリー「医者の指示」

その後、コア介入症の症例は増えていき、レイはさらに仕事に打ち込むことになります。

深まる孤独

仕事をどんどん詰めていくレイは、張りつめていきます。

なんでも彼は冷血漢そのもので、普段は仕事以外の話を一切しないという。

秘話「白き心」1話「噂のレイ先生」

彼が声をかけようとしたその時、レイが立ち上がり、冷たいオーラを放ちながら会議室を後にする。

深層「朝のない日」2話「給養」

ファン教授に医師になったきっかけを聞かれたときに、笑って受け答えしていたレイの面影は、もうありません。レイの張りつめた空気は、周りに冷たい印象を与え、レイから人を遠ざけていきます。

「あなたも学生の頃は、仲のいい友達がいたでしょ?」「特にいない(中略)どんどん飛び級していったからな。たとえクラスメートと仲良くなったとしても、次の日には私が上の学年に進級していた。(中略)昔の私は、勉強のこと以外考えていなかった」

思念「人の味わい」

レイは、学生時代から友人を作りづらい環境が続いていたようです。レイをフォローする人も少なかったでしょう。

他の医師達はよく同僚と一緒にどこかに遊びに行ったりしているようだが、私は静かな休みが好きだ。

公式Youtubeチャンネル「レイ:インタビュー」

たまの休みも一人で過ごしており、なるべく人との関わりを減らしているようでした。仕事で根を詰めていたので、心が休まる時がなく、人に気を回す余裕がなかったのでしょう。

主人公との再会

ファン教授が臨空市を離れる事になり、レイは主人公の主治医をファン教授から引き継ぎます。医師としての自信もついてきたのでしょう。もしくは、他の人に任せるのが嫌だったのかもしれません。

「今回戻ってきて、彼女には会いに行ったのか?」レイが一瞬固まり、答える。「いえ、まだです」「会う勇気がないのか?」彼は首を横に振ると、穏やかでありながらきっぱりとした口調で言った。「違います」

深層「孤独な灯」5話「険しい旅」

会う勇気がないわけではない、という事は、単に再会の言葉に迷っていただけかもしれません。レイも久しぶりに会う幼馴染に緊張しているようです。

再会した主人公はハンターを目指していました。

「あなたは?どうしてハンターになったの?」(中略)「まだ生きていられるなら、私はもう追われる獲物になりたくない。危険を前にして、逃げることしかできないような…。」

1期1章6話「霊空行動部」

「不安があるのにハンターになったのか?」「…笑えばいいよ。理由は知ってるはずじゃない」「…」

1期1章8話「医者」

レイは主人公がハンターになるのは反対で、しぶしぶ了承しているようでした。レイが医師を仕事に選んだきっかけは、主人公を助ける事だった訳で、わざわざ危険に身を置く仕事を選ぶ主人公に納得ができないのは当然の気持ちでしょう。

家族に恥をかかせるようなことしてない。

1期1章9話「雨の帳」

…兄さんにも心配かけたくなかったの。せっかく帰ってきてくれたのに、嫌な気持ちにさせたくない。それに大人になったら自分の足で立たなきゃ。

1期4章3話「わずかな距離」

…試験が続いて、何回か徹夜しちゃって

1期1章8話「医者」

「見たところ、風邪みたいですね。仕事が忙しくて疲れが溜まっていたのも原因かもしれません。」「疲れ?全然感じてなかった…」(中略)「その…絶対入院しないとダメですか?明日、朝から仕事があるんです…」

思念「静謐な声」

主人公は養子であることもあり、自立心がかなり強いようです。最近では兄にも頼らない様子で、根を詰めている様子も見られます。レイと主人公は似た者同士の二人でした。

「奇遇ですね」と声をかけようとした私に、レイが話しかけるなとばかりに冷たい視線を向けてくる。思わず息が詰まった。レイの存在によって、気温が何度か下がったような気さえする。

思念「奇遇な出会い」

最初、主人公もレイに対して冷たい印象を持ったようでした。しかし、主人公はめげずにレイに話しかけます。

「思ったんだけど、私達ってもう友達みたいなものだよね?友達が困ってたら、何かしてあげたいと思わない?」「例えば?」「救いの手を差し伸べるとか。」「私のプライベートな時間は、とても貴重なのだが。」

思念「永遠の綿雪」

レイは主人公を救う事に集中しすぎて、主人公との仲を深めるという考えは飛んで行ってしまっているようでした。自分が抱えている問題を解決したいがためにプライベートを犠牲にしてきた事で、仕事とプライベートを両立する術を身につけないまま、ここまで来てしまったのでしょう。だからこそ、主人公からの積極的なアプローチはレイにとってありがたいものとなりました。

大きくなっていく主人公の存在

ある時、レイは主人公から長恒山の事や、Evolについて聞かれます。

「休暇を口実に、極地であの謎のプロジェクトを調査していたの?」「プライバシーに踏み込むな。」

1期1章8話「医者」

「その先輩の犠牲の裏にも…何かあるの?」「ただの事故だ。昔の話だ。」

1期5章8話「銀世界」

「レイ、手が…!…あなたのEvolなの?何か…」「…近寄るな。」「…あなたにも医者が必要そうだね」「いればいいがな。」

1期4章10話「秘密」

しかし打ち明ける事はできず、独りで抱え込んでしまいます。

その後、主人公と交流を重ねていたレイは、ある手術で失敗します。

もともと成功率がかなり低かった。(中略)非常に珍しい病気であることに加え、Evolによる合併症の研究は進んでおらず、最適と呼べる治療法はまだ存在しない。私は彼女の主治医だ。だから、この状況はよくわかっている。(中略)かすかに鼓動していた心臓が、お前の手の中でゆっくり動かなくなっていく感覚を想像できるか?医学には、常に限界がある。

思念「夜の星々」

主人公に促されたとはいえ、珍しく長くしゃべっています。心が弱っていたのだと思います。「医学には限界がある」なんて言葉、本当は口に出したくはなかったでしょう。そんなレイに主人公は言葉をかけます。

私は知っている。この手が、かすかに鼓動する心臓をたくさん蘇らせていることを。

思念「夜の星々」

人殺しになるかもしれない恐怖を拭うために、人助けに固執していた過去を持つレイにとって、この言葉は、これ以上ない励ましの言葉だったと思います。

この後、似た者同士の二人は、一方が無理をしたら、もう一方がたしなめる、お互い補い合うような関係を築いていきます。

「実は仕事のことで少し落ち込んでいたの。(中略)この前の怪我のせいで、ミナミさんにしばらくの間任務に出るのを禁止されていたの。このままじゃ銃の持ち方も忘れちゃいそうだよ!」「…去年、残業が続いて何日か病院に泊まったことがある。院長にゆっくり休めと言われ、私は不満さえ覚えていた。だが、その後わかったんだ。人の体力、精神力には限りがある。私達は自分が思っているより強くないとな。」

思念「寂しげな灯火」

「レイ先生、残業お疲れ様。おいしいものを差し入れに来たよ。(中略)レイ先生、ニンジンは目にいいんだから、残しちゃだめよ。」「なら、お前が食べろ。私の分をやる。」「それは偏食!」

思念「静謐な瞬間」

レイは、主任医師に就いていたり、プロジェクトを立ち上げていたりするので、交渉事には長けていたと思われます。最初は主人公の誘いにいやいや乗っていた風だったレイは、仕事で培った駆け引きのスキルを使って、自ら積極的に主人公との約束を取り付けるまでになります。

「本なら見つかった後すぐに戻した。だから違反にはならない。」「ずるい…!」「次の週末は…一緒にハイキングに行くのはどうだ。」「違反にはならないんじゃなかったの?」(レイが本を手に取る)「ではこれで、お前を誘うことができるか?」

思念「慕情の夕日」

孤独からの脱却

レイと私は、どちらが先に相手を満足させられるレストランを見つけられるかで競っていた。

思念「人の味わい」説明文

「私のプライベートな時間は、とても貴重なのだが。」と言っていたレイが、今では、すっかり誰かと二人で過ごす時間が当たり前になっていきます。

何年か会わないうちに、先輩…なんだか人間味が増しましたね。(中略)冗談まで言えるようになったんですか…!

思念「人の味わい」

久しぶりにあった後輩に驚かれるほど、人間味が増したようです。

私は、自分がどんな場所にいるのかわからなくなる時がある。この世界のほとんどの場所は、彼女が私に見せてくれたんだ。

思念「秘密の童話」

夢で別時空を行き来するレイは、時に自分がどちらの世界にいるか分からなくなることもあったようです。もしかしたら、人殺しをする自分の方が本物で、医者の自分の方が夢だと思う瞬間もあったかもしれません。でも主人公がいる事で、自分は医者のレイの方なんだと確かめることができたのでしょう。主人公以外の人はレイの覇気に怯えて近寄ってきませんでした。しかし主人公はレイの領域に踏み込んできてくれました。レイと一緒にいる事こそが、夢の中のレイとの違いを作る事になり、ひいてはレイの精神を安定させる事につながったのだと思います。

支えあう関係

長恒山でレイのEvolが暴走してしまう事件が起きます。一人で乗り込んでいったため、レイは窮地に陥ります。

この数日間、お前の事を考えない時はなかった。(中略)私が帰れなかったら怒るだろうか…。お前のことを考えていなければ、今日…お前が来るまで耐えられなかったかもしれない。

思念「温かな雪に溺れて」

長恒山の大規模磁場異常の時は、捨て身で自分の体を顧みなかったレイでしたが、主人公という待っている人ができたおかげで、生にしがみつくようになりました。

主人公はレイを助けようとしますが、レイは主人公の助けを退けます。かたくなに口を開かないレイに主人公は自分の覚悟を示します。

もう、あなたと一緒に向き合うって決めたの。あなたが私を必要ないって言わない限り。

思念「温かな雪に溺れて」

主人公の覚悟を受け取ったレイは、ついに長恒山の事を打ち明けます。

「極地であなたと連絡が取れなくなったあの数日間、一体何があったの?」「数年前に起きた、長恒山でのあの戦いについてだ。私はずっと、あの戦いに隠された真相が知りたかった。」

思念「温かな雪に溺れて」

そして、レイは寄り添ってくれる主人公に感謝の気持ちを伝えます。

お前が私のそばにいてくれて、本当によかった。

思念「温かな雪に溺れて」

レイは今まで、トウヤを殺してしまった事を独りで抱えてきました。しかし、人と寄り添い支えあう事を覚えたレイは、きっとこの先、今回一部しか話せなかった事を、全て打ち明ける事ができるようになるでしょう。その時、主人公はレイの重荷を一緒に背負ってくれるに違いありません。

あとがき

解釈違いも多々あった事かと思いますが、最後までお読みいただきありがとうございます。

私はレイ主カップル推しなので、セイヤの時と違って、今回は主人公の事も多めに触れました。本文中でも書いていますが、私は二人を似た者同士だと思っています。二人とも自分を顧みない無謀な性格だからこそ、本人の代わりにお互いが相手をいたわる。レイと主人公は二人でやっと一人前なんだと思います。本編が未完の中で、二人には今後、様々な困難が降りかかるかもしれませんが、一緒に乗り越えていける事を願っています。

セイヤの感想が気になった方は、ぜひこちらもお読みいただけるとうれしいです↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?