田舎から出てきたやつの末路

地元が「全部過疎地域」とされたという記事を読んだ

「全部過疎地域」がどういう基準で選ばれるのかも
選ばれたからなんなんだというのも
ほとんど知らないのだが、
文字からするに過疎地域認定されたことは分かる。
それに地元のことだ。肌で感じている。
認定されると、国がなんかしら助けてくれるそうだ。
インフラ維持がメインらしい。
補助金だか助成金だかが出るそうだ。

地元には山と川と田畑、温泉。
寂れた商店街に、城跡、
そして国宝になった神社がある。
ちょっと有名な酒蔵がある。

住んでいた頃、本当に何にもなくて嫌気がさしていた。
本当に本当に何も無かった。
この何も無いというのは、利点にならない何もなさだ。

静かで落ち着くとか、自然が豊かだとか、
決してそういう肯定的な何もなさでは無い。

在り来りなスーパー、在り来りなコンビニ、
在り来りな洋服屋さん、どこにでもあるチェーン店。
それしかない。

個人経営の店はよっぽどでなければ
出店もしないし生き残りもしない、
体力のある大手チェーン点だけが安定してそこにいる。

スーパーに行けばいつもの近所の人ばかり。
そこしかスーパーがないからだ。
町中ユニクロかしまむらの服を着ている。
学生の頃はよく服が他人と被った。
そこしか服を買う場所がないからだ。
休みの日はイオン風の建物に皆が集まる。
皆同じテレビを見ている。

ハンバーガーはマクドナルドだけ。
牛丼は吉野家だけ。
アイスクリームはサーティワンだけ。
家電屋はケーズデンキだけ。

携帯電話も、当時ひとつのキャリアしか
まともに電波が入らなかった。

映画館もなく、劇場には何も来ない。
動物園や水族館などもちろんなく、
テーマパークどころか公園もない。
イタリアンらしき食べ物はファミレスで食べた。
スパニッシュやフレンチなど存在しない。

英語が習いたければあの教室しかない、
書道ならここ、ピアノならここ、
水泳ならあの教室。塾はあれかこれ。
最低限の科目だけ、それぞれ1~2個ずつの教室。

毎回同じスーパーに行き、同じカレールーを選び
同じ皿に盛って食べる。
同じテレビを見て、同じ服を着て眠り、
同じコーヒーを目覚めに飲み、同じ服で家を出る。

好きだからじゃない。
それしかないからだ。
でも、まあ、仕方なくでもない。


暮らせるだけの何かはあった。
暮らしのきほんのものは手に入った。

大手が提供してくれていた。

圧倒的選択肢の少なさ。


そういう「何も無い」町だ。


全部過疎地域となったことが書かれた記事に
頭の良さそうな、
お金も地位もありそうな人達がコメントしていた。

過疎地域を助けるためにお金を使い続けていたら
この先国のお金はいくらあっても足りない。
コンパクトシティ化が必要なのでは。
都市部に出てきてくれりゃ、
面倒見るインフラも少なくて済むのに。
好きで住むのはいいけど、
自己負担でインフラ維持してくれよ。
「地方創生」なんて幻想だ。
行うべきは「終活」だ。
山や川を自然に返したっていいじゃないか。
その地域をダメにしてるのは
やっぱりその地域に住む人間だ。
本気で変わる気がないから過疎化する一方なんだ。
人が暮らしていくのを維持できない人口規模なら
公的支援は外してしまえばいい。
それでも住みたいと言うなら勝手にしろ。


そりゃ、そうだ。

返す言葉もない。

あんなとこ、住みたいヤツらが勝手に住んで
自分らで何とかすりゃええんや。

本当にそう思った。
そっちの方が豊かな選択肢から好きなものを選べる
人間らしい生活もできる。
仕事だってあるし医療も充実している。
国も助かるんだろう。


でも何故か悲しかったし悔しかった。
読んだ時点ではそう思った。

思い直して悲しいとか悔しいとか馬鹿だったと鼻で笑う時がいずれ来るのかもしれないけど最初に感じたのはショックと悲しさと悔しさだった。何に対してかは分からない。

俺は好きですんでたんと違う。
俺の親だって、好きで住み続けちゃいない。

そこにある仕事、そこにある家。
育ちの地。血縁。

何かに縛られている。

そして子供の俺が、
その縛りから解き放ってやれない事が全てだ。

俺は地元は出た。
大学進学で出たのだから、
親が外に出してくれたのだ。

俺の縛りは親が解いてくれた。

でも俺はまだ半人前以下で、
未だ働き続けている親。

そのためにあんな何も無いド田舎で病気になっても怪我をしてもまともな治療も受けられない娯楽もなく面白おかしいことも無いいつもいつも同じ顔ぶれ、同じこと同じもの同じ味同じ香り、つまらない人生を、


俺が悪いのだ。


きっとその事が堪えて、記事を読んで辛かったのだ


俺は地元のことが大嫌いだ。
愛着などない。
いつも出たいと思っていた。

でも親がいるから。


早く嫌いになりきりたい。
ぶっ潰しちまえ。


ああ、都会で生まれて都会で育ち、
都会で暮らす若者には
こんな使命はないんだろうな。


親を、早く、脱出させなければ。



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