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初めての恋、家までの道のり。

この駅名を耳にすると、どうしても思い出してしまう彼のこと。彼の家に行くたびに駅まで自転車で迎えに来てもらって、川を越えて彼の家に向かうあの道のこと。春は桜が綺麗だった。夏は河原でBBQをした。冬は風が冷たくて二ケツする自転車の後ろの席で縮こまってた。秋はあんまり印象ないのです。

車の音にかき消されながらも、自転車に乗りながら2人でいろんなことを話した。今日のごはんはあれを食べたい。あの子がついに付きあうことになったよ。あっちの駅に新しいスーパーを見つけたよ。あそこの人見て。そんなたわいもないことばかり話していたのに、いつも楽しかった気がする。思い出だから美化されてるのかな。

途中ちょっとした坂があるんけど、彼は決して私を降ろそうとはしなかった。「乗ってていいから」そう言って彼はムキになって自転車をこぐ。そんな彼のことが誇らしかった。彼の背中は抱きつきたくなるほど大きくて、私はそんな彼にずっと守られていたかった。

彼はもうあの駅には住んでいないけど、きっと私はまだあの家に行く道が分かると思う。自転車に乗って連れられていくことが多かったけど、道の様子はしっかり覚えている。もう彼はその家にいないのに。

気づけば10年近く経っているのに、今でもときどき思い出すのはいつだって初めての恋のことだ。初めてって特別だから思い出すのだろうか、いやそんな単純なことではない気がする。あの頃はそれはそれはとても純粋な気持ちで恋をしていたから、だから特別な思い出になってるんだと思う。この思い出をいつまで覚えていられるか分からないけど、できればいつまでも覚えていたい。あったかい気持ちを思い出せるから。

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