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【天ノ弱】

もういいかい
まだだよ

子供の声が聞こえる

もういいかい
まだだよ

小さい頃よくやったなぁ

もういいかい
もういいよ

(あれ…今何時なんだっけ…)

ダルい身体を起こさずに
サイドテーブルに置いてあるスマホを手に取る「16:04……16時!?」
しっかり熟睡していた。悩み事がある時でも寝れるタイプで良かったと我ながら思う。

だかしかし!
だるい、頭痛い、気持ち悪いの三拍子。
なーんだ!寝れたのは自然な訳じゃなかったんか…
ビール缶×4
ハイボール缶×3
チューハイ×4
そりゃ二日酔いにもなりますわ。
昨日の私、なんてことをしてくれるんだ。

そんな事を考えながらLINEを開く。
「連絡は…なしと。」
呟いた声に自分でショックを受けていた。
意外に現実は優しくない。返信してくれない事さえも君らしさを感じてちょっと嬉しくなった、なんて言えない。別にいい女じゃない。

そんな事を考えながらダルい身体を起き上がらせて10m先の冷蔵庫へ水を求めに往く。
喉を鳴らすくらいの勢いで500mlペットボトルを空にさせた。

目の前がグルグルする。
頭の中もグルグルする。
まるでメリーゴーランドだ。

「今日何してるの?」
「なんで返信くれないの?」
「私の事考えてる?」
そんな言葉達だけが君の中でもグルグルしていたのだろうか。会った時には言えないくせにスマホ越しにはいくらでも言える私。ほんと可愛くないなぁ

「おはよう!こっちは晴天だよ〜」っと
送ってしばらく既読を待ってみる。5...10...分経過。既読なし。
ま、まぁ?待つくらいいいじゃないか

いつからこんな風になっちゃったんだろう
突然のサプライズ。
些細なプレゼント。
愛されること。
全部初めてしてくれたのは、君だった
愛は消耗品なんて君が言ってたけれど、そんな訳ない!永遠!って言い張るくらいには強がってたなぁ
今思えば君には見透かされてたのかもしれないね

隣で手を繋いで歩いていたのが、まるで遠い過去に感じる
あの頃と今はきっと違うんだろう
今は君だけが先に進んでる

私はダルい身体をベッドに投げ出して
今はただ何も考えたくない
そんな事を考えていたら隣に住むバンドマンの歌声が聞こえてきた。

「まだ素直に言葉に出来ない僕は…
  天性の弱虫さ」

あーあ、なんでこんな時にこんな歌詞の歌を歌うかなぁ!そんなんだから売れないんだよ!

グルグル頭の中を回ってる思考を放棄して
さっき飲んだ水を零しながら
私は静かにその目を閉じた




もういいかい
まだだよ

子供の声が聞こえる

もういいかい
まだだよ

友達に戻れたら…なんて烏滸がましいか


もういいかい

私は小さく呟いた
「もういいよ」

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