元旦設立 株式会社アサ代表 青柳ミドリさんのアート思考講座を見学した話し
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元旦設立 株式会社アサ代表 青柳ミドリさんのアート思考講座を見学した話し

友川綾子

2021年の仕事はじめは、1月4日でした。

牛歩の丑年か、Bull(雄牛)の丑年か、波乱の2020年に続き、今年はどんな年になるのでしょうか。

私はここ3年ほど、アートプロジェクトと呼ばれる市民協働型の現代アートの文脈で広報の仕事をメインに、編集やライターの仕事を受けつつ、心理学の分野からファシリテーションや対人支援について学びを深め、小さなイベントなども実施をしてきました。

昨年はコロナによる社会変化に揉まれながらも、オンラインを通じた新たな出会いや機会に恵まれて、「個」に立ち戻る時間を与えられ、この先の人生と仕事について、私個人の価値観も転換期を迎えたように思います。

VUCAの時代では、個々人の内面に、揺れ動きながら新たな要素を取り入れて変容しつづけることを可能にする「胆力」といえばよいか、不確実なことを抱えていける内面の「器」を、より一層、育てていくのが肝心だと感じています。

再び緊急事態宣言が発令された今日、改めて内面が整うことの重要さを想いながら、自分自身と周りの人々の幸せのために、今年から徐々に働き方を変えていくことをここに宣言します。

そんなシフトチェンジのひとつとして、長年の友人である青柳ミドリ(ミロ)さんが立ち上げた株式会社アサの事業サポートがあります。今日は株式会社アサについて、ここに紹介します。

アート思考の講座を提供する株式会社アサの設立

ミロとの出会いはおよそ6年前。愛称である「ミロ」と名を同じくする「ミロアートラボ」という、子どものための美術実験室を主宰しているミロさん。私は彼女の、子供たちを「小さいひと」と呼ぶ思想や感性、「教えない、作品つくらせない(作品をつくることを強いない)」という、小さいひとの主体性を大事にするラボ運営の雰囲気が好きで、麻布十番にあるミロラボに度々訪れ、イベントに参加させてもらったりしていました。

ミロアートラボの活動を軸に、アートラバーのためのオンラインギャラリーとウェブマガジンMILA gallry に執筆したコラムはこちら。

「成人向けのアート思考講座をやりたくて、会社を設立することにしたから、相談にのってほしい」と、ミロに頼まれたのが昨年の秋。それからメッセンジャーやZOOMで定期的に話をしながら、社名や定款の内容を相談して決めていきました。

社名の「アサ」には、ミロが人との関わりで大切にしている原風景があります。安曇野の古民家で育ったミロは、おばあちゃんっ子だったそう。それというのも、おばあちゃんは子供時代のミロの「ありのまま」を受け止めてくれる器が大きく知恵のある女性だったのだとか。おばあちゃんは度々、こう話してくれたんだそうです。

「人は毎朝、生まれ直すんだよ。朝という字は(時計回りに読むと)十月十日と読めるでしょう。」

人のありのままを受け止めながら、その日、その日の、その人に出会い直して、新しい可能性に目を向ける。そんな素敵な関わり方を暮らしの中で実践していた、ミロのおばあちゃんの名前が「朝子」さんというのです。

こうしたあり方を社名として抱きながら、「アート思考」を軸とする講座を提供して、論理ばかりが優先されがちな世の中に、しっかりと感性の大切さを浸透させていこうというのが、株式会社アサなのです。いつも自分の名前をカタカナで「アサ子」と書いていたおばあちゃんにちなんで、あえてカタカナで「アサ」なのでした。

アサ設立後の初仕事は、教職員向けのアート思考講座

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2021年元旦に登記を完了させ、ぴっかぴかの創業1年目を迎えた株式会社アサ。記念すべき第1回目のアート思考講座を、1月6日に(学)堀井学園の横浜翠陵中学・高等学校と横浜創英中学・高等学校の先生たちを対象に実施しました。

発起人の先生と正月休みを返上してまで自主的に参加してくれた先生方、合わせて7名が、通常であれば5回分の講座を2時間に凝縮して体験してもらいまいました。当日は私もお手伝いをかねて見学に。

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「アート思考」をいう言葉にピンときて参加を決めてくれる先生方は、さすがに頭も柔らかく、教養や表現力も豊かで、どんどんメモをとって学んでくれていました。

講師役のミロは、先生方の「アート思考ってなんだろう?」という関心に、幅広い知識で応じながら、「であう」「ひらく」「つくる」の3つの体験を提供。後半には、絵画をじっくりと鑑賞する「謎解きアート鑑賞法」にもトライしました。

題材はドラクロワの歴史的名画「民衆を導く自由の女神」。

画家の名やタイトル、書かれた年代や国など、歴史的拝見を一切明かさない状態で、絵画をじっくりと鑑賞して、図像から感じること、気づくことを言葉にするのが、「謎解きアート鑑賞法」。

先生方が実直に誠実に絵画に目を向けて得た「気づき」の数々には、個人的にとても感動しました。

「中央の女性はなぜか能面のようにぼんやりとした顔をしていて先頭に立つ人物であるのに英雄感がない」

特にこのコメントには、ドキッとさせられました。歴史的名画の女神の顔がどうにも冴えないのには、実は歴史背景からすれば理由があるのですが、ただ絵を眺めているだけで、その重要さを違和感として感じ取った深い洞察は、本当に素晴らしいものだったと思います。

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長く美術史を学んでいる私は、女神の顔立ちに意識を向けたことはありませんでした。みっちりと美術史を学んでしまった私の頭の中には、この絵を見た瞬間に「ドラクロワ、女神、フランス革命、共和制のシンボル」などなど、単なる知識レベルのワードがぐるぐると渦巻いてしまい、ただ、ありのままに絵と出会うことがもはや難しく、結果的に女神の顔の凡庸さに意識を向けられずにいたと思います。なんとアート思考からかけ離れたアートラバーなのでしょうと、我が身に反省しつつ、先入観を持たずにたっぷりと時間をかけて絵画を鑑賞するとは、なんと豊かなことなんだろうと、あらためて深く感じ入りました。先生方もそのことについて、気がつかれていたらいいなと思います。

絵画鑑賞がひと段落した頃、ミロはこう先生方に話しかけました。

「A君にこれまで知っているA君として接してしまうと、既成概念でしかA君を見ていないということになるんです。今日のA君はどうだろうと、出会い直してみると気が付けることがあるかもしれない。ふるまいの全てに意味があるかもしれないんです」

この言葉に、思い当たることがあるのか、数名の先生方がなんども小さく頷いていました。

毎日、まっさらな気持ちで人と出会い直すのは、なかなかに体力がいることだと思います。時々でいいから、何かちょっと、きになることがあった時、絵画をじっくり鑑賞した時のまなざしを思い出して、新たな気持ちで誰かと「であう」ことができれば、見えるものも変化することでしょう。

今後のアート思考入門講座をお楽しみに!

参加後のアンケートでは、こんな感想を寄せてもらいました。

「このようなかたちでのアート鑑賞は初めてで、おもしろかった。他の絵画でもやってみたいと思った。」

「生徒を見る目、状況を見る目は一つではないということを学んだような気がします。」

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この日はグッと詰め込みすぎて、少々、消化不良のところや、「感性」についての話も紹介できなかったために、「この先を知りたい」「もっと時間が長くてもよかった」という声もいただきました。アンケートを受けて、ミロはさっそく、ああでもない、こうでもない、と、次の講座のプランをブラッシュアップし始めていました。

そして、株式会社アサでは今月からアート思考の入門講座をスタートします。しかし、1月スタートの回はすでに定員に達してしまいました。またの募集をお楽しみに! 株式会社アサの今後の活動にもぜひご注目ください!

そして、あわせて私自身の活動についても、最後に少し。昨年からそっと開設して、静かに更新を続けている私のアートと美味しいもののブログも、ぜひ訪問&登録をお願いします。

2021年が、個々人の感性が響きあう場が数多く生み出される年になりますように。

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友川綾子
展覧会とアートプロジェクト gallery ayatsumugi ディレクター。GCIプロセスワーク・コーチング コーチ。アートと社会のあいだをフォーカスします。https://www.ayatsumugi.net