村上春樹『ノルウェイの森』前編

今回、ご紹介するのは村上春樹の『ノルウェイの森』です。

小説書評といっても、「この小説はこう読め!」とか「こういう解釈をするべき!」といったそんなに気難しいものではなく、どちらかといえば個人的な『ファンブック入門編(好きになるための布教本)」みたいな立ち位置であるといえるでしょう。

なのでわりとざっくりとした説明の仕方をしちゃいます。

そして小説の内容の「おいしい」ところを紹介していきたいとおもっております。

それではまず簡単なあらすじを。

東京の大学に進学した大学生「ワタナベトオル」は、かつての親友の恋人「直子」と偶然街で再会します。最初はぎこちなく、どこかよそよそしい感じでしたが、次第に仲良くなっていき、肩を寄り添って歩くようになります。直子の誕生日にふたりはささやかなパーティをすることに。そしてそこでふたりは晴れて結ばれて。。。

ちょっとざっくりし過ぎていますが、まぁだいたいこんな感じです。まぁここまで説明するとけっこうよくあるストーリーのように見えますよね。

ところがそうじゃないのが世界の村上春樹の作品。

直子は、かつて死んでしまった「キズキ」という親友の恋人です。

このキズキというキャラクターは、17歳のときに自殺をしています。それも車の排気口をホースでつないで、それを密閉した車内につないでいわゆる『排ガス自殺』みたいなやつですね。すぐには死ねないやつです。

当時高校生だった主人公のワタナベは、親友が死んでしまってぽっかり穴が空いた状態で東京の大学へ逃げるように進学するわけです。そしてそこで直子と再会。直子の方も愛していた恋人を失って、その空白は計り知れない。

同じような傷を持つ者同士で、仲良くなる二人。そして誕生日に直子の部屋でふたりは小さなパーティをします。そしてその流れで関係を持つのです。

ところが!!

なんと直子。

じつはこの誕生日の夜が、初体験だったんですよ!

かつて恋人がいたにもかかわらずですよ!?しかもキズキと直子は、ものごころついたころから一緒で、周囲も公認の非常に仲のいいカップルです。

にもかかわらず、聞くとふたりはどうやら一度もそういう行為に及んでいなかったというのです!

どうして恋人同士なのに、一度もしなかったのか。ふつうの高校生カップルで、喧嘩もなく、お互いにとても信頼しあっている。ふたりとも(僕が想像するに)なかなかの美男美女です(そういう描写がちゃんとあります)。さらに聞くと、キズキは直子とセックスをすごくやりたかったらしいです。

ではなぜか?

この部分がこのストーリーをとりまく、ひとつの大きな柱になっています。

身も蓋もない言い方をするなら(わたし風にいうなら)この小説は「セックス」がテーマです。いや、ほんとに。

いろいろな意見があったり、いろんな解釈があったりしますが、この小説を読むにあたり、まずはそういう『前提』で読んでみるとけっこう楽しめるかもしれません。

どうして直子とキズキは、セックスしなかったのか。

直子の口ぶりからするに、ふたりは本当に愛し合っていたのです。心のそこから愛し合っていたのです。

この重大な謎は、後編で解説(といってもそんなに難しいもんじゃありません)していきたいと思います!

気になった方は、後編へ!!


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