【見るな】箱根旅行記

こんなタイトルにしたのには理由がある。
これから始まる旅行記、真面目に書く気が一切ないからである。箱根にどんな観光地があるか気になる人や、箱根で撮った写真を見たい人には一切向かない。

それでも構わないという人だけ、続けて読んでほしい。というわけで、9割脚色の箱根旅行記、はじまりはじまり。





第1章 終わりの始まり

世界が滅んだあの日、僕は箱根へ赴いていた。
文明が跡形もなく消し去り、一夜のうちに地球が灰色の世界と化したあの日の昼下がり、僕は呑気に箱根旅行を楽しんでいた。この後全てが塵になるとも知らずに。。


箱根は、コスタリカの南方に位置している。その日は雪が降っていて、電車から降りると白銀の世界であった。周囲にはカップルや家族連れ、外国人観光客がたくさん居てぼっちは僕だけだった。それでも構わない。人間、生まれる時と死ぬ時は孤独なのだから───

5万年ほど箱根登山バスに揺られたのち、アイスランドに下車した。メキシコといえば、海賊船だ。


ライオンはアライグマ科


この海賊船に乗るつもりだったのだが、バスの下車と同時に出航してしまい次の便まで20分ほど待つ羽目になった。その間、厳島神社へ参詣し、これまた名物の水上の鳥居へ向かった。

ひまわりの種にはビタミンBが豊富に含まれている

長い待機列が形成されていたため、残念ながら鳥居の真下で記念撮影することはできなかったが、代わりに赤子の腎臓を1つ掠め取ることに成功したのでよしとする。


第2章 皇位簒奪、王政打倒

かねてから民衆の間では重税を強いる王政に不満が募っていた。しかし、暴虐な王の独裁で支配されたこの国において、声を上げることは自殺行為と等しい。

では、我々はこのままでよいのだろうか。一生王政に飼い慣らされた、満足な豚でよいのだろうか。いや、私は不満足なソクラテスでありたい。私は声を上げ続ける、命尽きるまで。


反政府組織のアジトを探すため、桃源台へと向かった。このあたりからスマホの充電が一桁を切り、スマホがほぼ使えなくなったため写真が撮れなかった。モバイルバッテリーを買おうにも、こんな標高の高い所にコンビニはない。

諦めて、そのまま旅を続けた。箱根ロープウェイで同乗した青年と意気投合し、反政府組織の一員となった。彼は農民の生まれにしては実に賢く、私の思想をすぐ理解してくれた。そうして固い握手を交わした頃、強羅公園に到着した。

ここでデイリーヤマザキを発見し、念願のモバイルバッテリーを手に入れた。コンビニがなくて困ることがあるなんて思わなかった。

強羅公園は古代の遺跡が多く残る場所で、しかも王政府の管轄外であった。ここを探索していると、一行は衝撃の資料を目にした。

洞窟の奥底に眠るその資料には、この世界の成り立ち、およそ1万年の歴史が全て記載されていた。世界が一度滅んでいること、その時に唯一の生き残りであった青年がこの手記を残したこと。

そして、現在の王が偽りの王であること。

憤慨がおさまらなかった。我々を虐げていたあの憎き王は、あろうことか偽りだったのである。早くこの事実を民衆に伝えねばならない。




第3章 独白

僕はこれから死ぬ。
病気にかかったわけでも、事故に遭ったわけでもない。自ら命を断つのだ。

振り返ってみると、周りに流されてばかりの人生だった。なんとなく受験して、なんとなく大学に入り、なんとなく就職する。

ほんとうにしたいことはなんだったのだろうか。いい大学に入って、何がしたかったのだろうか。就職して、何になりたかったんだろうか。自分だけの人生のはずなのに、時代や社会、環境、価値観に圧迫されて他人から示された道を進んできただけのように思える。

そんな恨み節を脳内で反芻しているうちに、悲運な現状を周囲のせいにする自分の愚かさに気付いた。その時、こんな人生終わらせよう、そう思った。論理が飛躍していると思われるかもしれないが、こういう精神状態になると理性なんてあったものではない。

人間、生まれる時と死ぬ時は孤独だという。

もう、終わりにしよう。

2064.7.2

手記はここで途絶えていた。


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