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言語聴覚士という職種

私は「言語聴覚士」という資格をもって活動している。
言語聴覚士は、「Speech Therapist」の略で、「ST」と通称されるが、どれくらいの人がSTという職種を知っているかといつも思う。

初対面の方には必ず「何の仕事をされてるんですか?」と聞いていただくので、少し意地悪かもしれないが反応を知りたくて「リハビリ関係です」と答えると「PT(作業療法士)さんとかOT(理学療法士)さんですか?」はよく出てくる。
リハビリ3職種といわれながらも、ST(言語聴覚士)がそこに加えられたことは、私の経験上はまだ一度もない。
もちろん、会話の相手が医療に従事する方であれば、話は別だが、一般の方々にはまだまだ浸透していない職種であることを実感させられる。

しかし、それと同時に、もっと知っていただきたい、そして私たちを専門的な資源として活用する選択肢に思い浮かべてもらえるようにしていこうという思いも新たにする。

言語聴覚士って何をするのか?

私はかねてより、「耳の」言語聴覚士と名乗っている。
つまり、聴覚(きこえや言語、補聴器・人工内耳などの聴覚支援機器など)に関連する領域を得意とするということである。

言語聴覚士の受け持つ領域は外国と比較してとても広い。
「言語聴覚」というように、ことばときこえを扱うのだろうということは字面から想像できると思うが、これを具体的にみると、

〇摂食嚥下障害や口腔ケア
 何らかの原因で食べ物を口に入れたり、噛んだり飲み込んだりすることが難しい方の食べる検査や指導を行う。また、口内にごみが溜まり感染症を引き起こしてしまうこともあるので、口腔内の掃除やその指導、チェックを行います。
〇失語症
脳梗塞や脳出血といった脳へのダメージによって、ことばに障害を受けた方のリハビリを行う。読む・書く・話す・意味を把握するなど言語には様々な側面があるが、どの側面に困難が現れるかは障害された脳の部位によりますが、個々人に適したリハビリプログラムを考案・提供・実施する。
〇高次脳機能障害
失語症と同様に、脳損傷によって引き起こされる多種多様な症状にアプローチし、生活の質の向上を目指す。
〇言語障害
言語障害の中にもたくさんあり、構音障害・吃音・特異的言語発達障害・学習障害(LD)・自閉スペクトラム症候群(ASD)に伴う言語発達遅滞などがある。これに関しては多くの場合は子どもさん対象のことが多いが、成人で訓練を行うこともある。
〇聴覚障害
聴覚検査や補聴器・人工内耳といった補聴支援機器の装用指導などの工学的側面と、聴覚障害に伴って生じてくる言語能力のフォロー、コミュニケーション支援などの訓練的側面での活動もする。
これは書き出すと止まらないので、短めで。
〇音声障害
声が出にくい、あるいは出ない方への声の検査や衛生指導、発声呼吸法指導などを行う。喉頭がんとうによって声帯を切除した方は通常の方法でのおしゃべりは不可能になる。そのため、食道発声や人工喉頭など対象者に適した代替手段を選択・訓練していく。
つんく♂さんは、こういったリハビリに参加しているのではないかな?
また、大きな声の出しすぎや逆流性食道炎などによって声帯がダメージを受け、声が出にくくなってしまった方へのリハビリ指導を行う。

このように、STのすることはまだまだあるのですが、とても多岐にわたる現状がある。

一人の人間が一つの資格でこれだけの領域を高いレベルで行うというのは、かなり難しいし、それぞれが立派に独立している疾患なので、知識が散らばりがちになる。
国家試験の勉強のときにも、効率のよい学習方法には苦慮した。
施設系のSTは摂食嚥下障害の指導が中心であったり、急性期病院やリハ病院では失語症や高次脳機能障害が中心、緩和ケアでは口腔ケア中心など、どのような場所に所属するのかによって業務内容にはかなり偏りがでる。
施設基準を満たすためにオージオメーターは置いているが、実際に聴力検査をする機会がない病院もある。

そのため、自然と「専門領域」というか、得意な領域が出てくるのだ。
確かに、その部分での経験がどんどん積みあがっていくので、その道の専門家になるのは自然なことだろう。

このように、日本における言語聴覚士は、その一言では具体的に何をしているのかイメージしにくい職種だ。

この現状についてずっと考えていることがある。

とても長くなりそうなので、次回の投稿の宿題にしたいと思う。


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