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「同じテイストの作品は1本もない」ーー「劇的マーダーミステリー」シリーズでもお馴染み、日本一マダミスを作っているぺよん潤さんに話を聞いてきた!

2019年頃に中国から日本に上陸した『マーダーミステリー』通称『マダミス』。
マダミスが日本で遊ばれるようになった背景には、マダミス作家さんや各店舗を運営される皆さん、GMの皆さん、マダミス関連サービスを手がける皆さんなど、マダミスを愛する皆さんの様々想いがあったのだと思っています。

そんな『マダミス』を支える皆さんの想いをマダミスファンの皆さんにお届けたい!という思いのもと《マダミスインタビュー》を始動いたします。

マダミスを支える方々のこだわりマダミスにかける想いなど、余すことなく訊いてまいります!

初回は日本初のオリジナルマーダーミステリー専門店『シンジュクジンチ』「劇的マーダーミステリー」シリーズでお馴染み「ロストプロダクトエンターテイメント」ぺよん潤さんにお話を伺いました!


日本で最初に作られたオリジナルマダミスの店舗!

ーー本日はよろしくお願いいたします!改めてマダミス広報部のあやのんのと申します。

ぺよん潤と申します。よろしくお願いします。

ーーまずは、日本初のオリジナルマーダーミステリー専門店『シンジュクジンチ』ができた経緯をお伺いできますでしょうか?

まず、僕が2019年7月頃に誰が勇者を殺したか?というマダミスを作って公演したんですが、とても評判が良かったんですね。
その頃はまだシナリオが『王府百年』とか『約束の場所へ』とかしかなかったんですが、マダミスに興味を持ち始めた人たちが結構来てくれて。
チケットを売れば完売する、というのが続いていて、「これは店舗を持った方がいいんじゃないかな」と思っていました。

『誰が勇者を殺したか?』キービジュアル

僕自身もマダミス作ってみて、すごい面白いのができたし、お客さんも喜んでくれている、というのを目の当たりにできました。
あと、「マダミス、自分作れるな」とも思って、店舗ができても対応できそうだなと感じて始めました。
こんなに長く続くとも増えるとも思っていませんでしたけど(笑)

ーーそうなんですか?今もう4店舗くらいありますよね。

そうですね。シンジュクジンチ、ギョエンジンチ2ヶ所、ヨヨギジンチ、オオサカジンチで、4店舗5箇所といった形ですね。

芸人から謎解きクリエイター、さらにはマダミスクリエイターに

ーーぺよんさんは元々芸人さんですよね?

そうですね。
元々はお芝居をずっとしてまして、劇団を作ったり作・演出をやったりしていたんですが、なかなかうまくいかず。
縁があって芸人になって、ヨン様のものまねでちょっと跳ねて、なんとなく芸人で仕事がもらえるようになったんですけれども、あんまりお笑いに向いているとは思っていなくて。

芸人・ぺよん潤さん 宣材写真

元々演劇やってたこともあって「何か作りたい!」という想いがあった中で、たまたま謎解きの仕事をやることになって、本も出させていただいて。
それは性に合っていたんですよね。
謎解きはもう10年くらい作ってますね。

「謎解きを作りたい」「マダミスを作りたい」ってことはあんまりなくて。
何かを作ってお客さんを喜ばせたい、びっくりさせたいという想いが大きくあるのかなと思いますね。

ぺよんさん著の謎解き本

マダミス作りの源は漫画!?読んだ漫画は1億ページ以上!

ーー芸人さんでネタを作られたり謎解きを作られたりというご経験はお持ちですが、マダミスを作るってまた違う能力がいるのかなと思うんですが、マダミスのシナリオも最初からすんなり書けたんでしょうか?

そうですね。僕、すっごい漫画読むんですよ。
人生で多分1億ページ以上読んでます。

ーーそんなに!?すごい!!

小学校2年生から今までのジャンプ、全ページ読んでます。
他にもサンデー、マガジン、ヤングジャンプ、モーニング……。
あらゆる漫画毎週読んでますね。
自分の部屋に5000冊くらい漫画ありました。

ーーなるほど!ではその漫画たちがマダミスのアイデアの源になっているんですか?

かなり大きいと思います!
週刊漫画って、毎週引きや展開、裏切りというように、1話の中で盛り上がりがあって、次どうなるんだろう?ってワクワクしていたら、次の週には新しい展開があって。
週刊連載の漫画を習慣的に楽しんでいたんですよね。

マーダーミステリーって、全体の物語であり個人の物語じゃないですか。
全体での物語の展開は、漫画的に作っているんですよね。
こうなったら面白いよな、こう裏切られたらびっくりするよな、という感じで。

マーダーミステリーが3時間くらいの物語だとしたら、前半・中盤・後半というふうに区切っていて、起承転結を作って、こういう行動させよう、こう裏切ろうみたいなものを作って、事件を考えるのは一番最後ですね。

ーーなるほど!では「こういう展開を作りたい」が先にくるんですね。

全然そっちの方が先ですね。
まず世界観があって、キャラクター作って、誰死ぬんだろうなーって思いながら(笑)

たくさん漫画読んできたからこそ、展開あるあるや漫画あるあるがわかるんですけど、まずベタな展開を使ったら次は裏切っておこう、みたいなバランス感覚で作ってますね。

ぺよんさんが物語に引き込まれた、衝撃を受けた物語とは?

ーー最近衝撃を受けた、裏切られた漫画ってありますか?

裏切りもセオリーの中にあるから.…..。
だから裏切ろうと思ったら、「え!こいつをなぜここで殺すの?」みたいな裏切り方しかないなと思うんですよね。

それでいうと、娘が『【推しの子】』を見て、1話で大号泣したんですよ。
ネタバレになっちゃうと思うのであんまり言えないんですけど、思ってもいなかったことが起きることで大きく感情が動くんだ!というのに改めて気づきましたね。

大事なキャラクターって大事にしたいじゃないですか。
それってもちろん読者にとっても大事なキャラクターで。
この大事なキャラクターが死ぬことで大きく心を揺さぶられて、物語にグッと入っていく。
マダミスってそういうところあるなと思っていて。
あの1話で思いを込めさせて裏切って、観ている視聴者の心をズタズタにしたっていうのはすごいなと。
そのやり方があるかーって感じましたね。

あとは漫画じゃないんですけど、ディズニー映画の『カールじいさんの空飛ぶ家』ですかね。
あのオープニングずるいじゃないですか。
あれも喪失を共感させておいて、その後の物語に引き込んでいく作りになっていて、あそこで心が一つになるから物語に没入できるんですよ。
やられたなと思いましたね。

だから『【推しの子】』『カールじいさんの空飛ぶ家』は同じ作りですね。
感情を動かすことで物語に引き込んで、その後の物語を自分ごとで読ませる作り方。

……『【推しの子】』=『カールじいさんの空飛ぶ家』説、これ誰も唱えてないんじゃないですか?

ーー(笑)これきっとここで初めて出た説ですね(笑)

お客さんに「自分ごと化」してもらうためには?

ーー作っているマダミスにおいて、お客さんに自分ごと化してもらうために意識していることってありますか?

そうですね。
劇的マーダーミステリーって実はずるい手法で、その場に居させて、生の声でキャラクター同士で喋ってもらうっていう。
やっぱり喋った言葉や言われた言葉に影響されるし、心を動かされるんですよ。

その中でも、特に心が動きやすい学校というシチュエーションや、デスゲーム、アクっていうぱんださんの世界観。
そのシチュエーションに物語を収めているので、その空間に助けられて没入してもらっている作品ですね。

劇的マーダーミステリー『アイデアル』PVより

劇的マーダーミステリーが生まれたきっかけは?

ーー劇的マーダーミステリーは、そういった没入体験をさせるために生まれたのでしょうか?

これは完全に完全に無茶振りからなんですけど(笑)
教室作って、カードを使わないリアルなマダミス作りませんか?という話があがって、それで『モブX』を作り始めたんですよ。そしたらすごい大変で!

劇的マーダーミステリー『モブX』キービジュアル

本当に僕結構追い詰められてて。
「できん……まとまらん……」ってずっと苦しんでて。

そんな中、コロナでイベントができない期間があって、少し考えを冷却させることができてなんとかできたんですよ。
ある意味コロナのおかげで完成したとも言えるかもしれませんね。

ーー作品のために、新たに部屋を借りて、内装は教室をまるまる作って、って結構コストもかかると思うんですが、元々劇的マーダーミステリーを作ろう!となったきっかけや理由はあるんですか?

これはですね……コロナで助成金が出たからです(笑)

ーーえ!?助成金ですか?

当時イベント助成金でお金が借りられて、新しい場所も安く借りられるってことで。
だから「劇的マーダーミステリーを作ろう!」って言って作ったわけじゃなくて、「作ってみたら劇的になった」って感じなんですよね。

ーーじゃあ先にハコがあって、何する?ってところから始まったんですね。

だいたい僕そうですよ。締め切りが先にあって作品ができるので。
なので、「いつまでかかってもいいので好きな作品作ってください!」って言われたら、絶対作れないですもん。

コラボ作品誕生のきっかけは?

ーー結構他の作家さんとコラボレーションして作られている作品も多いと思うんですけど、どうやって生まれているんですか?

ゲームデスコドクデスでご一緒したシン太郎さんは、X(旧Twitter)で「新しい作品作るんだけど誰か一緒にやりませんかー?」っていう呼びかけに応えてくれたんですよね。

ーーそうなんですね!元々お知り合いというわけじゃないんですか?

全然。初めましての時に一緒にここ(ヨヨギジンチ)の内見に来ました。

『ゲームデス』『コドクデス』『プリズン・ロワイヤル』の会場・ヨヨギジンチ。

そこで、
ぺよん潤「なんか牢獄にしたいんですよねー」
シン太郎「面白いっすね!いいっすね!」
って感じで乗ってくれて。

ーーじゃあ、最初「誰か一緒にやりませんか?」って呼びかけた時は、牢獄とかデスゲームとか決まっていたわけじゃないんですか?

そうですね。
そもそもシン太郎さんと作った作品が劇的になったのも偶然で、その時に他の人も何人か声をかけてくれて、実際にいくつか一緒に作品を作ったんですよね。
100分マーダーミステリーのTHE名探偵―真実はいつもひとつかふたつ―とかギャグスターはそうやって生まれてるんですよ。

ただ、一緒に作品を作るのって一人で作るよりも大変な部分もあって。
その点シン太郎さんは、自分のやりたいこととやれることをバランスとりながら提案してくれる方だったので、話が進んでいくうちに『ゲームデス』が生まれましたね。

劇的マーダーミステリー『ゲームデス』キービジュアル

ーーリミライアイデアルヒトリスと学園ものの劇的マーダーミステリーでお馴染みの小鳥谷びびさんとは、どんなきっかけで出逢われたんですか?

びびさんは紹介で知り合いました。
『モブX』のあと何やる?って話になった時に紹介されて、その時に
「『モブX』、面白かったんですけど、もっと“学園生活”がやりたいんですよー!」
って最初に言われて、面白いな!と思って一緒に『リミライ』を作りました。

劇的マーダーミステリー『リミライ』キービジュアル

ーー本当にいろんな方々とコラボしていますし、いろんなジャンルの作品がありますよね。

僕、なんでもいいんですよ。
なんでもいいって言っちゃうとあれですが……(笑)

最終的に面白いものになれば、学園ものであれラブコメであれ、シリアスなミステリーでも、ファンタジーでも、なんでもいいんですよ。
オールジャンル楽しんできた人間なので。

ーー確かに、漫画5000冊読んできていたらそうかもしれませんね。

だから、「次はこれか!」みたいに楽しんで作っていますね。
それぞれみんなこだわりがあって、大事にしている部分があって。

例えば、びびさんはキャラクターの心情を大事にしてて、僕はゲーム的に作っちゃうことが多かったんですけど。
キャラクターの心の移り変わりを繊細にすると、お客さんがよりそのキャラクターに添いやすくなるんだな、って気付いたりして。

白岩ぱんださんは、物語全体を俯瞰して見て、心情よりも展開に注力しながら、世界の大仕掛けを体験させようっていう働きかけがあったりして。
すごくいい刺激をいただいていますね。

ぺよん潤×白岩ぱんだ コンビ作品
劇的マーダーミステリー『アク 星降る島に花束を』キービジュアル

持ち味が全部違う「ロストプロダクトエンターテイメント」作品

ーーロストプロダクトエンターテイメントの作品って、どの作品も遊んだ体感がちょっとずつ違うというか、同じようなものがないですよね。

それは意識して作っています。
マダミスは、僕割と先駆けなので、いわゆるベタを先に全部やってやれ!っていう気持ちで作ってます(笑)
他の人がやった時に「あぁそれもうぺよんがやってるよね」ってなるかなって(笑)

100分マダミスは「マダミスの進化」みたいなのをテーマにしていて、いわゆるベーシックな物語体験から、だんだんといろんな要素が出てきて、最後に体験にしていく、というような形で作っていますね。

100分マーダーミステリーシリーズ

マダミス作品が多く出始めた頃に、作品の幅を広げないとどんどん狭くなるぞ、というのを感じていたんですよね。
それでいろんな要素が入っていることが多いんですが、ある作品では
「謎解きやりにきたんじゃねぇ!!」
って言われてしまうこともありましたね。

その人がマダミスとしてやりたかったことと、その作品があっていなかったんでしょうね。
ロープレや感情が動く、といったことがない作品だったので。
そういった要素も、ある作品とない作品があって、僕はどっちも好きなんですけど、「マダミスってこうだよね」「こうあるべき、それ以外はダメな作品だ」っていう考えの方だと、うちの作品は期待に合わないこともありますね。

僕、やっぱりプレイヤーの想像を裏切りたいというか。
よくやるのは、イケメンにもカッコ悪いところというか、弱点を持たせるんですよ。
人間的に愛するために、完璧な人間ってちょっとつまんなくて、かけてる部分を愛おしいなと思うので、そこをどうしても作っちゃうんですけど。
そうするとイケメン役をやりたかった人の期待とは離れちゃうんですよね。

ただ、最近人気の作品に対して思うのは、かっこいい人はかっこいい、という感じで、入り口の印象を守っている作品が多い気がしているんですよね。
心構えとキャラクターが一致していて、その上でどういう行動をするか?を考えてもらった方が、みんな入りやすいんじゃないかなって。

こっちとしては展開として裏切って、実は〇〇、みたいなのが面白いと思って作っているけど、それも作者側のエゴだったりするかなって。
だから最近はちょっと真っ直ぐ作ってますよ。
やっぱり人気になりたいし、マダミスアンケートとかで1位獲りたいと思っています!(笑)

来ていただくお客様に向けて

ーー最後に、来ていただくお客様に向けてメッセージをお願いいたします!

うちのお店のウリって「多様性」だと思っていて、いろんなマダミスが楽しめます。
うちの作品を遊ぶうちに、自分の好きなマダミスってこういう系だな、って思ってもらえると嬉しいです。

同じテイストの作品は1本もないように作っているのが、僕の作り手としての今のこだわりなんだろうなって思っています。
自分に合うマダミスを探しに来てください。
なぜならマダミスって面白いから!!

ーーありがとうございました!


「劇的マーダーミステリー」シリーズのイメージが強いロストプロダクトエンターテイメントですが、他作品も含めてどの作品でも一貫して物語に引き込む体験・展開作りを意識していらっしゃるんだなと改めて感じました。
漫画を1億ページ以上読んできたからこその展開・キャラクター・ストーリーの幅広さに、毎回驚かされます。

ロストプロダクトエンターテイメント、ぺよん潤さんならではの多様な展開が待つマーダーミステリーの世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか?

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