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手紙

手紙の結びには窓がひとつ置かれてあり
薄日の射すその部屋は小さい
一人で扉を開き出ていくしか他なく
あなたもまたここを一人で訪れるだろう

重ねて
紙へ届くまで
歩み合おうとする
目を
指を
重ねて

私を生きたものは皆一つ残らず
縮れた祈りから成り幸せだった
ほの明るい頬を包むことも
血を止めることもできた

体の重みを預けて眠ってもいい
見えるよ
ここから見える
別れを失えた互いの灯火として
立っている

読むようには
書くようには
使えなかった多くの瞬間の体が
扉を開く
ここにペンを置く

詩集『ほとり』(2017)収録

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