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木のあれこれ。no.7 楽器の木 part-3.カスタネット

楽器には昔から古今東西、様々な木材が用いられてきた。
各木材にはそれぞれ特徴があり、奏でる音も異なる。
ここではどの楽器にどんな木材が使われているのか、なぜその木材が使われるようになったのか、そしてその木材の特徴をまとめる。

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カスタネットの起源

カスタネットとは、スペイン語の
“カスタニア(castanetas,castanuelas:栗の実)”が語源である。

カスタネットの起源は、一説によると、古代エジプトの儀式で、20~30 cmの長さの木製または象牙製の打楽器を両手に持って叩いていたことに始まる。

その楽器が紀元前にクロタロン(crotalon)という楽器としてギリシャに伝わった。

次にイタリアにもたらされた時には、 クロータロ(crotalo) と呼ばれ、 民衆の踊りに用いられた。その後は、マロネーチ(marronettes) やクルスマータ(crusmata)、パリージョ(palillos)などの名前で各地に伝わり、スペインで改良された楽器が、現在のスパニッシュ·カスタネットとされている。ヨーロッパを中心とした国々では、このスパニッシュ·カスタネットの他にも、柄付きカスタネット、コンサート·カスタネットが存在する。
参考:https://www.seitoku.ac.jp/daigaku/music/bltn/bltn15/kadowaki15.pdf

日本、教育用カスタネット「ミハルス」

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「ミハルス」という名称は、考案者である舞踊家「千葉みはる」の名前に由来する。

このミハルスを改良して、教育用のカスタネットが作られた。元々は小学生向けのリズムをとる楽器であった。この時、男の子用の「青色」と女の子用の「赤色」の2種類のカスタネットが誕生した。このカスタネットは、指で挟むミハルスとは違い、現在のような手のひらに乗せて叩く楽器となった。

しかし、男女で色を分けたことで製造業者にとって面倒なことがあった。それは発注されるカスタネットの数が青と赤でそれぞれ異なり、在庫の管理が大変だったのである。そして、これを解決する対策として、男女兼用の青と赤を合わせたカスタネットが誕生した。

カスタネットが赤と青の理由は、男女兼用の1種類にすることで効率よく在庫を管理するためであった。こうして誕生した赤と青のカスタネットは、学校用の教材として採用され、全国に広まっていった。ちなみに、赤と青は上下が決まっていて、音に大きな違いはないが、赤が下、青が上となっている。

カスタネットの木材

カスタネットの木材は基本的に硬い木であればなんでもできる。
木材による音の違いも楽しめる、まさに木をダイレクトに楽しめる楽器である。

上述の通り、スペインでは栗の木(ウォールナット材)で作っていた。
日本の群馬県みなかみ町で日本のカスタネット製造業を支えてきた素晴らしい工房を見つけたので下記にHPそのままを引用しようと思う。

日本のカスタネット製造を一手に手がけていた〈カスタネット工房〉(旧プラス白桜社)でしたが、木材が手に入らなくなるなどの理由から2013年にカスタネットづくりを中断していました。ちょうどその頃、みなかみの豊かな自然を未来に引き継ぐために、昔ながらの日本の森を再生する「赤谷プロジェクト」という活動が進んでいました。スギ、ヒノキなど植林から、ブナやミズナラなどを中心として原生林へ。その過程で生まれる間伐材を活用するために、カスタネットづくりが再び行われるようになりました。工房では今、冨澤さんが当時自作したカスタネット製造用の工具や機械がふたたび稼働することになり、新たなカスタネットを生み続けています。
森とともに復活した冨澤さんのカスタネットは、色を塗らず、木肌を生かした仕上げとしています。木の種類もさまざまに用意されていて、サクラ、ブナ、ミズキ、クリなど、それぞれに木の固さや音が異なります。タンタンと鳴らして、その音を生んだ森を想像してみてください。そうしていつか、森をあなたが訪れる。そんな素敵なことが起こることを楽しみにしています。
カスタネット工房

カスタネット工房(旧プラス白桜社)の創業は昭和25(1950)年。
現在は、2代目の冨澤健一さんがカスタネット作りをしている。
カスタネットは、冨澤さんのお父さんが、スペインの楽器をヒントに、子供たちが使いやすい打楽器として生み出し、かつては、この工房と旧倉渕村に1軒、足利市に2軒の4軒だけで年間200万個を製作し、日本中の学校に届けていた。
現在は地元の木材、そして木育(木を子供の頃から身近に使って行く)用が手に入りづらくなり、輸入材に押されて生産はストップしたそうですが、リハビリ用やお土産用を製作しているほか、みなかみ町を訪れた人が体験できるよう、いまも稼働し続けている。

カスタネットの作り方と材料による音の違い

材料を天日で乾燥させて1年。互い違いに風が通るようにしておいておく。
こうすることでよい音が出る木材になる。
使っている木は、サクラ、クリ、ブナ、ミズキなど。
これを丸い形に切り抜いて、形を整え、内側の凹みを作って、ゴム穴、ピン穴を開け、ゴムを通して出来上がり。
使っている木によって肌触りも音も異なる。
桜の木は年月とともに色が変わっていくので経年変化が楽しめる。
ブナの木はピンクがかっていて木目が詰まっているから少し重い音がする。
エンジュの木は茶色っぽく、こすると艶が出るのでコーティングしなくてもきれいな色である。
クリは木肌が荒いので、磨かずにそのままの木肌が出るようにする。

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ブナ

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ブーンとなる木→ブナの木 ブナの由来
ブナはその美しい姿から「森の女王」と言われている。
ブナの林に風が通る時、「ブーン」となることから、
ブーンとなる木→ブナの木
になったと言われている。

ブナの特徴
ブナの樹木は大きいもので樹高が約30m、胸高直径が1.5mに達する。樹種は全く同じだが色味の違いから赤ブナと白ブナという風に分けられている事もある。
ブナは日本の温帯を代表する木のひとつで広大な面積の森を作る事がある。現在、世界遺産に登録されている白神山地のブナ林などが特に有名で広く知られている。

ブナの木は木材としての優秀さに加え、保水力の大変優れた樹木であり、その実が動物の餌になるなど森にとって良い効果をもたらす為、昔から森の豊かさを象徴する木と言われている。

ブナの木材は材質は硬くて粘りがあり、弾力性がある。また、曲げに強いのも特徴で接着剤を使用した接着も容易である。
木材として使用する場合の欠点としては乾燥しにくく、カビなどが生えやすいという点があげられる。また、腐食にもあまり強くないとされているが十分な乾燥が行われたブナ材は耐久性がかなり高まる。

ブナの木材が家具の材料などに用いられるようになったのは比較的最近の事で水分を多く含むという特徴を持つ為、昔の技術では乾燥が難しかった事から以前はあまり使用されてなかった。
木材として使用する場合、乾燥が十分でないとねじれや狂いが生じやすいので乾燥が大変重要な木となっている。
乾燥を困難にしている原因は含水率が多いということ以外に木材内の水分分布が一定でない事もあげられ、上手く乾燥を行わなければすぐに菌が入り、腐り始める。

ブナは輸入材として売られているビーチ(Beech)と同じ種の木。

ブナの木材は主に家具材や木製の玩具などの材料として利用される。なかでもブナの曲げに強い特性を活かした曲線的な曲木家具、整形合板などには大変、適している。

エンジュ

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槐(エンジュ)の名前の由来
エンジュという名前は、恵爾須(えにす・ゑにす)という言葉が由来とされている。その昔、恵爾須とは同じマメ科であるイヌエンジュのことを指していたが、それが転じてエンジュになった。また、エンジュは延寿に通じていることから長寿のご利益があるとされている。

エンジュの英名は「Japanese Pagoda Tree」であり、エンジュが仏教伝来の時期に伝えられたことから名付けられた。Pagodaとは、仏教やヒンズー教で多層の塔という意味。

エンジュは元々、中国原産の樹木でしたが現在は国内で植樹された事によって日本全国の広い範囲で生育を確認する事ができる。

エンジュは樹高が15m、胸高直径が50~75cmほどの大きさに成長する木で、日本国内の木材業界において、単にエンジュと言った場合は「イヌエンジュ」を指す。この事からこのページで扱っている情報は全てイヌエンジュのものを掲載する。
また、本来のエンジュ[Stypnolobium japonicum]は中国原産の樹木で現在、殆ど生育が確認できない状態となっており、木材としてはほぼ流通していない。

乾燥はやや難しい為、時間をかけて慎重に行う必要がある。
加工に関してはやや硬さはありますが強靭で割れにくいという特徴を持っていて完成品の出来が良いので木工家を楽しませる優良な木材だと言える。
木材としての特徴としては耐久性が高く、腐りにくいので保存性の高い木材だ。また、表面を磨くと美しい艶がでる事から仕上がりが良く、完成度の高い作品を作る事が可能。

エンジュは国産材としては珍しい暗色系の木材の為、木材としての性質が優れているだけでなく色彩の面でも評価の高い樹種である。

成長が遅いので年輪幅が狭いという事もエンジュの特徴ですが成長の遅さが災いし現在では蓄積量の少ない貴重な木材となっている。

北海道、東北地方ではエンジュの漢字である「槐」という文字から魔よけのお守りとして昔から床柱に利用するという習慣があるそうだ。

参考:https://www.tatsumikan.com/カスタネットの達人/
https://www.seitoku.ac.jp/daigaku/music/bltn/bltn15/kadowaki15.pdf
https://zatsuneta.com/archives/005943.html
https://www.mori-castanet.com
https://wood-museum.net/buna.php
https://greensnap.jp/article/8532
https://wood-museum.net/enju.php


あとがき
カスタネット工房が可愛らしくて、この記事を書くことで見つけられてよかった。みなかみ町に行った時はぜひ立ち寄ろうと思う。



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