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企業が人権について本気で向き合う時がきた

こんにちは、ayamiです。
サステナビリティやESGに関するコンサルティングをしています。

今日は、ようやく日本企業が本腰を入れて、人権課題に向き合う時がきた、というお話を書きたいと思います。

日本企業が認識するよりもっと多岐に渡る人権課題

日本企業が認識している人権課題というと、
セクハラ・パワハラといったハラスメントの問題や同和問題をHPでも書いている企業が多いのですが、グローバルに見るとそれだけではなくもっと広い概念として捉えられています。

例えば…
児童労働
強制労働
長時間労働
報酬
休日
労働安全衛生
性別・年齢・国籍・宗教・人種・性的指向・性自認・障害の有無などによる差別
ハラスメント
プライバシー
地域住民、先住民の権利


などなど

働く人の権利だけではなく、取引先、消費者や地域住民など企業によって影響を受ける可能性のある全てのステークホルダーが対象になっています。

企業が引き起こした人権課題事例

では、どうしてこんなにも広い範囲で人権が語られるようになったのでしょうか。

それは、企業がグローバル化したことにより影響力が大きくなってきたことが挙げられます。

大きなグローバル企業ともなると、商品の製造に関わる人だけでもメガシティ(人口1千万人以上)と同じくらいの人が関わっていることになります。

特に製造業のサプライチェーン上では、これまでも、企業が引き起こした人権侵害が問題となってきました。

●NIKEのスウェット・ショップ問題
1997年、ナイキが委託するベトナムなど東南アジアの下請工場で、強制労働、児童労働、低賃金労働、長時間労働、セクシャルハラスメントの問題があることが暴露され、こうしたスウェット・ショップ(搾取工場)と取引するナイキに対して米国を中心にインターネットを通じた反対キャンペーンが起き、ナイキ製品の不買運動、訴訟問題にまで発展した。
参考: https://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/section2/2002/01/post-67.html

●ペットフード業界のサプライチェーンにおける強制労働
2015年AP通信の調査により、複数の大手水産業者のサプライチェーンで行われていた漁獲した魚を海の上で運搬船に移し替える洋上転載と、人身売買や強制労働のつながりが明らかになった。洋上転載をすることで、船は長期間にわたり港に戻らずに漁を続けることが可能になり、その孤立した環境が人権侵害や違法漁業を助長させていることが報告された。
参考: https://www.google.co.jp/amp/s/www.atpress.ne.jp/news/128323/amp

そうした背景もあり、国連はビジネスと人権に関する指導原則を定め、企業に対し人権を保護する責任があることを明示し、人権を尊重・保護するために、

・人権を尊重する責任を果たす方針の策定
・人権の影響を特定し、防止し、軽減し、どのように対処するか定め、実践すること
・企業が引き起こした人権侵害を受けた人の訴えを受け付ける窓口の設置

を求めています。

とは言え、人権侵害が起きてしまった企業や、人権侵害が問題になっているとNGOなどから指摘された業界や商品(電子機器、アパレル、建設、採掘、パームオイル、カカオなど)を扱っている企業以外は、あまり人権に対し、真剣に取り組んでこなかったことも事実です。

※人権侵害が問題となっている業界であっても日本企業においては、グローバルと比較して人権に対する取り組みが不足しています。

急速に高まる人権意識

しかしながら、この流れも大きく変わろうとしています。

アメリカをはじめ世界でも大きなムーブメントとなっている「Black Lives Matter」の動きが人々の人権意識を高め、企業へも影響を与えています。

Black Lives Matterとは、黒人に対する暴力や構造的な人種差別の撤廃を訴える国際的な運動で、2020年5月にアメリカ・ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性が白人の警察官に首を圧迫されて死亡した事件を受け、これまで以上に大きな広がりを見せています。
更に知りたい方はこちら: https://www3.nhk.or.jp/news/special/presidential-election_2020/demonstration/demonstration_01.html

●ジョンソン&ジョンソン美白クリームの販売中止
消費財大手米ジョンソン・エンド・ジョンソンは2020年6月19日、アジア及び中東で美白クリームの販売を中止すると発表した。
今回の決定は、人種差別との批判を受けてもの。美白を強調する文化は「白人優位」を暗示しているとの考え方があり、同社は自主的に美白クリームの販売を停止する。
参考: https://sustainablejapan.jp/2020/06/24/jj-skin-whitening/51224

● フェイスブックへの広告出稿停止が400社以上に
フェイスブックのヘイトスピーチ対策が不十分として、コカコーラや英日用品大手ユニリーバなど広告掲載を停止する企業が相次いでいる。出稿の停止を求めるキャンペーン「ストップ・ヘイト・フォー・プロフィット(憎悪を利益にするな)」には、7/1現在200社以上の企業が参加し、ボイコット以降フィスブックの株価は8%以上も下げ、時価総額は2日間で600億ドルも減った。
参考:https://news.yahoo.co.jp/articles/bd48bf7481b7733c9b1bd6c32a6907fa8a416536

人権意識が急速に高まる中、これまでとりたてて取り組みを行なってこなかった企業も今一度、自社の商品や広告を見直さなければならない時期にきているのではないでしょうか。

企業が取り組むべき人権へのアクション

企業が取り組むべき人権へのアクションとして以下のような手順で進めていくことが必要だと思います。

(1)企業として人権を尊重し、保護する方針を策定する
(2)どのようなビジネスの流れになっているのか、各セクション(調達・製造・輸送・販売など)でどのようなステークホルダーが関わっているのか明らかにする
(3)ステークホルダー(取引先・従業員・消費者など)にどのような人権影響(プラスもマイナスも)があるのか明らかにし、影響度合いを評価する
(4)潜在的な影響、顕在化した影響に対し、どのような取り組みを行うのか計画し、実行する
(5)人権影響を低減できているのか、モニタリングする
(6)その結果を社外へ公表する
(7)企業として認識できていない人権へ対処するため、誰でも匿名でアクセスできる相談窓口を設ける

自社の人権への影響について向き合うためのツールとしてOECDのガイドラインも出ています。

・OECD 責任ある企業行動のためのデューデリジェンスガイダンス
http://mneguidelines.oecd.org/OECD-Due-Diligence-Guidance-for-RBC-Japanese.pdf

これを機に、多くの企業で人権課題への取り組みが進みますように。そのためのサポートをできる限りしていきたいと思います。