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パリ1日目:1/24(jeu.)曇りのち雨

Bar Bossaの林さんからnoteでいろいろ書いてみたら、と言われたのと、直前に行っていた台湾の編集者から自分たちはトークイベントのレポートなんかをガンガン自分たちで発信する、と諭されたのを真に受けて、滞在中ちょっと書いてみようと思った。特に推敲せず備忘録のように…。

今回のパリ旅行の主な目的は、昨年にBunkamuraドゥマゴ文学賞(大竹昭子さん選考)を受賞した『神様の住所』の九螺ささらさんについて行って、本賞とも言える本場フランス、サン=ジェルマン・デ・プレのドゥマゴ賞(Prix des Deux Magots)の授賞式に参加するため、だ。1933年にゴンクール賞を受賞したマルローの『人間の条件』に対抗して、ならば自分たちは友人のレイモン・クノー『はまむぎ』に賞をあげよう、アンドレ・ブルトンらが自分たちで創設した超インディペンデントな本(屋)大賞のような賞。毎年1月末の火曜日にサルトルらも通ったカフェ・ドゥマゴでその場で受賞者が発表され、受賞者は向こうから歩いてドゥマゴにやって来る。3年前に同じくドゥマゴ文学賞(日本の)を受賞した『紋切型社会』の武田砂鉄さんとやって来て以来になる。「ついて行って」と言いながら、担当編集者のほうが3日も著者たちに前乗りして遊学も兼ねて…といった次第。

台湾から戻ってきて中3日、ばたばたと結局徹夜でパッキングして成田空港に向かう。移動中にパリ特集の雑誌や、紙で買っておいた(のにな…)本をキンドルにガンガン入れていく。朝11時の搭乗ギリギリまで、佐久間裕美子さんの連載「Wear Your Values」の編集・校正戻し。このところ、せいぜい長くても4時間ほどの東アジア旅行が多かったので12時間のフライトはほんとに辛い。救いは右の席が空いてたこと。『Battle of the Sexes』(テニスの男女対決の実話)を見たりするが寝られず。中条省平さんの『世界一簡単なフランス語の本』を読んでフランス語のリハビリ。英語の発音がスラーだとしたらフランス語はスタッカート(一音一音を伸ばさない)だとか、冠詞は未知(不定冠詞)か既知(定冠詞)かで世界の混沌を腑分けするシステムとか、合間に挟まれる話がいちいち理知的でとても面白い。それでも寝られず、鹿島茂+井上章一『京都、パリ この美しくもイケズな街』を読んで、生牡蠣とムール貝は避けておこうと改めて(日本人がパリの魚屋で感じる「わ、臭い」は、少し腐ってる、ということらしいが本当だろうか)。エールフランスの機内食がおいしい。ミシェル・フーコーのような容貌のフライトアテンダントに「スパークリングワインを」と頼むと、「それはない。ここはフランスだよ、シャンパーニュならあるけど、ヴォワラ」と笑顔で返される。結局丸二日寝なかった。

空港(CDG第2ターミナル)から市内までは、鉄道RERで40分ほど。このところ韓国や台湾ばかり行っているせいか、車内には本当にいろんな人がいて、やっぱりヨーロッパは緊張感がまったく違うと感じる。アジアが恋しくなる、が狭い座席で荷物を避けてあげるとジダン似の男性に「グ〜ッド」をされすこしほっこりする。宿は3年前と同じくRépubliqueにした(パリの区域の右のほう)。たくさん路線が集まるハブで街も賑やか。でもこの辺りは2015年のパリ同時多発テロの標的にされたあたりで、たくさんの人がなくなったライブハウスやカンボジア料理屋さんも近くにある。そのとき、République広場の女神像の下に大量に供えられていた花は、今はもうない。銃を持って地下鉄内をあるく警察官たちもいない。メトロの階段を出ると、薄暗い空をバックに、切りそろえられた白いケーキのように街角を走る宝石のような建物。街の景観に、また息を飲む。広場は夕方、スケボー小僧たちのメッカだ。

宿も駅から歩いてすぐのところ。こういう、1万円行かない安ホテルはだいたい移民系の方たちがやっている。着いてもこっちはまだ夕方(日本との時差は8時間)、少し休んで夜ご飯を、と思いグーグルマップであたりを見回すと、中華にメキシコ、レバノンに和食、といろんな店がある。入り口が洗濯機?のカクテルバーも近所のようだ、グーグルマップの発達でまったく便利になったなあ〜と思っていたら自分もシャットダウンし、気づけは夜10時半。近所をすこし散歩するが店内でという気力もわかず、日本でも入ったことのない近場のバーガーキングで。ダブルチーズバーガー。ノーマルサイズのはずがキングサイズだ。テレビをつけると平日の夜なのに政治討論番組が複数やっている。黄色いベスト運動について話しているようだ。ようこそ、スタッカートのキングダムへ。



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