紙媒体が減る問題(6)
情報誌のオンライン公開
『たまきたPAPER』は以前、紙だけで発行していたのですが、最近オンラインでの公開も積極的に行っています。EPUBやHTMLでのWEBカタログ形式のものもいろいろ考えたのですが、自社サーバでのPDF公開に落ち着きました。その経緯を少し記録したいと思います。
PublishOnline
弊社で制作で主に使うソフトはAdobe InDesignというものでして、本や雑誌の組版・デザインに使われます。
このInDesignには、ソフトの原稿制作画面から直接Adobeのサーバでオンライン公開するPublishOnlineというサービスがついていまして、InDesign上で画像やテキストにリンクを張ると、オンライン上でクリックして指定アドレスに飛ぶ、動画を埋め込むなどインタラクティブな機能や、簡単なアクセス解析機能もついています。PDFダウンロードや埋め込みも出来るので、一見、最高なのです。
https://helpx.adobe.com/jp/indesign/using/publish-online.html
ページめくり動作がない
左→右にしかページを送れない(たまきたは右綴じなので、右→左に送れないと読みにくい)
…というマイナス面があれど、1.については8~12Pならペラペラめくる感じは不要な気がしましたし、2.は見開き2Pごとに書き出して掲載することで解決したことにし、たまきたPAPERをPublishOnlineで公開していました。
1.2.のマイナス面を飲み込んででも、PublishOnlineのアップロードまでの簡便さは捨てがたかったのです。
PDF公開にはなかなか踏み切れなかった
それに、PDFダウンロードはできないようにしておきたかったのです。PublishOnlineはPDFダウンロードができますが、「ダウンロードできないようにもできる」。「これだけ丁寧につくっているのだから、徹底的に著作権を守りたい」という気持ち、手間をかけて印刷に出しているので、まちで『たまきたPAPER』に出会って、紙を持ち帰ってほしいという気持ち。
そういうプライドというかこだわりというかの部分で、PublishOnlineにこだわり続けていました。
(まあ、どんな形にせよオンラインにのってしまえば、キャプチャをとれば拡散できてしまうわけですが…)
PublishOnlineは無料ですし是非とも実用的になってほしくて、数年前のリリースから進化を見守り続けていたのですが……今回、いったん諦めることにしました。
作り手の利便性・読み手の利便性
一番の断念ポイントは、
WEBに埋め込んだときに読み込みがかなり遅い
Androidの一部機種(+デバイスの設定かも)でピンチアウトができない
作り手としては使い続けたいPublishOnlineでしたが、まだ、読む人にとって使い勝手がよくない。やっぱりこれは諦めざるを得ませんでした。
PublishOnlineにこだわる=読み手の利便性よりも作り手の利便性を優先していることになる。そしておそらく、読み手の利便性はすぐには改善されない。
EPUBという方法もあるのですが、8PくらいだとPDFで汎用性があるほうがいいかな、というところ。
それでもって結局のところ、PDFがどんなデバイスでも問題なく表示できて良い、という結論に達しました。すごいですね、PDF。いまや入稿もPDFが主流です。結局やっぱり、PDFなのか。
拡散歓迎(著作権は生きています)
PDFだと、ダウンロードできてしまいます。PDFなら画像化も簡単です。ばんばん拡散されます。
…それでいいじゃないか! フリーペーパーなんだもの!! むしろ拡散してなんぼじゃないか!
そう。ようやく私はプライドを捨てたのです。
というわけで、もうどんどんダウンロードして読んでください。WEBでもどんどん読まれるフリーペーパーになるのがきっとベスト。そうしたら広告効果も高まって、スポンサーも増えるかもしれませんしね。
というわけでPDF公開に踏み切ったわけですが、PublishOnlineの進化には、まだ期待しています。ページもの(複数ページ)ではなければ、使用感は問題ないと思いますし、埋め込みではなくてリンクを張るのであればそれほど重さは気になりません。インタラクティブな機能は捨てがたいです。いつか実用的になりますように。待っています。
印刷物が消えることはないけれど、印刷されるものは限られてくる。オンラインメディアはもちろん重要です。オンラインでの公開の仕方は、研究の余地がありそうです。
原田あやめ
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