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英語教育について対談

<あべゆかこさんの情報>
一般社団法人ペアリド英語ペアリーディング協会
(未就学児の親御さん向けご家庭での英語の学び方・お子さんへの声のかけ方講座)
https://www.pairedreading.com/
「教えない英語」 コミオ英語教育ラボ
(小学生以上の方向けオンライン英語教室)
https://www.commio.info/
【 目次 】
★教えない英語とは
★今までの英語教育と、これからの英語教育
の違い
★海外の英語教育と日本の英語教育の違い
★4技能をバランスよく学習していく方法
★小・中・高・大・社会人、一貫して円滑に接続されるための工夫
★グローバル化社会で必要なスキルについて
★親が子供と一緒に英語に取り組める方法
★外国語教育が必要な理由
~子供たちの未来~


(清水)
本日は、今話題の「教えない英語」を提唱されている、ゆっか先生ことあべゆかこさんにお話を伺います。東京生まれのゆっか先生は、高校1年生のときに家族と急にニューヨークに引越しし、現地の高校で落ちこぼれになったのだそうです。ですが、一人のアメリカ人の先生との出会いで自己肯定感を高めてもらったことがきっかけで、英語を勉強しニューヨークの大学に進学。そこで成績優秀者リストに載り、奨学金でイタリア旅行にも行かれたそう。卒業後は、日本の企業で通訳・翻訳・商品企画などを約15年間されていましたが、「通訳はいない方がいい」という想いから英語教育事業をスタート。現在は、小学生から大学生向けのオンライン英語教室(コミオ英語教育ラボ)の運営と、未就学児の親御さんに、ご家庭での英語の学び方や自立したお子さんを育てるための声のかけ方をお伝えしている一般社団法人ペアリド英語ペアリーディング協会を立ち上げ、代表理事をしていらっしゃいます。

★教えない英語とは

今回の対談のテーマは「英語教育」です。ゆっか先生は「教えない英語」を提唱されていますが、教えない英語とは、どのようなものなのでしょうか。

(ゆっか先生)
「教えない英語」は、一言で言うと、受け身で教えてもらおうという姿勢ではなく、自分で自立して英語を生涯学んでいこう!そのための素地を作ろう!ということです。

中国のことわざで、
“ある人に、魚を一匹与えれば、その人は一日食える。
魚の釣り方を教えれば、その人は一生を通して食える。”
というものがありますが、まさに英語も同じで、魚を与えてもらおう、教えてもらおう、という姿勢ですと、幼少期から始めて大人になってもずっと英語教室に通い続けなければなりませんが、一度、自分で学ぶ方法さえ身につけてしまえば、一生自分で学んでいくことができます。どんなことでもそうかもしれませんが、英語は言語で日々変化しますから、一生自分で学び続けるよりほかないものだと思っています。

(清水)
「自分で学ぶ方法を身につける」素晴らしい教えですね。私にも子供がいますが、子供の意欲を引き出し続ける事は難しいので、実に興味深いです。

現在の小・中学生は、その全員が「小・中・高の新学習指導要領改訂」「大学入試改革」「英語教育改革」と、戦後最大規模と称される教育改革による変化に直面する世代になりますので、武蔵村山市の子供たちが英語教育をいかせるよう、英語教育について色々お尋ねしていきたいと思います。

★今までの英語教育とこれからの英語教育の違い

まず、2017年に学習指導要領が改訂し、2020年の今年から、小学校で英語が必修科しました。 武蔵村山市の場合は、混乱のないよう、2018年から英語教育を始めていますが、子供たちの学習は変わっていきますね。今までの英語教育とこれからの英語教育はどのように違うと言えるのでしょうか。

(ゆっか先生) 私たちの時代の英語教育というのは、コミュニケーションツールというより、学問的な要素が強いものでした。特に大学入試を見てみますと、大量の受験者を振るい落とすために、ネイティブも使わないような複雑な文法問題が出題されたりしていました。結果として、たくさん勉強して受験英語はできるけれど、実際に英語を読んだり話したりはできない、と感じる方が多くうまれてしまいました。
その後、移行期間を経て2011年から小学校でも外国語活動としての英語教育が始まりましたが、最初はあくまで“英語に慣れる”ことが目的でしたので、英語で簡単な挨拶やゲームをする、ということが中心の授業でした。
2020年に始まった英語教育改革では、3、4年生では年35単位時間、5、6年生では年70単位時間と決まっており、5、6年生では英語での読み書きも実施し、成績もつくことになりました。単純に英語に親しもう、ということではなく、小学生のうちから英語を使えるようになる、という方向に大きく変わっています。

★海外の英語教育と日本の英語教育の違い

(清水)何年も学校で英語を習ってきたのに、話せる人が少ないですよね。海外の英語教育と日本の英語教育の違いには、どのようなものがあるのでしょうか。

(ゆっか先生) やはり、これまでの日本の英語教育は文法中心、ヨーロッパなどでは会話中心、ということがあげられると思います。 2年ほど前に夫の転勤でシンガポールに半年だけ暮らしまして、そのとき次男が現地のインターナショナルスクールに通いました。そこでヨーロッパのママたちとたくさん知り合って、英語教育について聞いてみたりもしたのですが、例えばオランダでは、小学校から徹底的に耳と口を使ったトレーニングをするのだそうです。ちなみにこのオランダ人ママさんは、8か国語を話せるのでびっくりしたのですが。でも、ヨーロッパの方々が英語を流ちょうにお話されるからといってどこの国でも早期教育をしているのかというとそうでもなく、例えばベルギーでは、本格的に英語を勉強するのは中学校からなのだそうです。 でも、ベルギーは狭い国ではありますが、場所によって母国語がオランダ語(フラマン語)、フランス語、ドイツ語にわかれるので、小学校のうちから、母国語がオランダ語の人はフランス語、母国語がフランス語の人はオランダ語を習うのだそうです。幼少期から、複数の言語を使うことに抵抗がないのでしょうね。でも、もちろん学校にもよるようですが、基本英語は中学校からしか学ばないというのは意外でした。

★4技能をどのようにバランスよく学習していけばいいのか

(清水)8か国語話せるのはすごいです。他の国も意外と英語教育を受ける時期は早いわけではないんですね。話をしているうちに覚えられるというのは感覚としてわかります。授業内容が4技能(聞く・読む・話す・書く)5領域化されていますが、どのようにバランスよく学習していけばいいのでしょうか。

(ゆっか先生) 最近は英語4技能4技能という言葉をたくさん耳にしますが、いっしょくたにするのではなく、 聞く、読むはインプット、話す、書くはアウトプットなので、そこで分けて考える必要があります。 お子さんが小さいうちは、インプットの量を多くしてあまりアウトプットにはこだわらず、小学校3年生くらいから少しずつアウトプットを意識することを個人的にはお勧めしています。

★小・中・高・大・社会人と一貫して円滑に接続されるための工夫とは

(清水) 確かにそうですね。4つに分かれているようで、実は2つに分かれているんですね。そう考えるとわかりやすいです。 積み重ねを大切にしていきたいのですが、(幼)小・中・高・大・社会人と一貫して円滑に接続されるためには、どのような工夫が必要と考えられますか?

(ゆっか先生) 将来的な理想としては、幼少期から、ご家庭で、お子さんが自立して英語を学ぶ環境を作っていくことが大切だと思っています。私は「教えない英語」を提唱しているのですが、社会人になっても先生に教えてもらい続けるわけにもいかないと思いますので、自分で学び続けることが必要だと考えています。大学生や社会人になったら、英語を学ぶことに時間やお金を費やすのではなく、そのエネルギーをそれぞれの専門分野やお仕事に振り向けていただきたいなと。英語はツールでしかありませんから。

現状ですと、教育格差、といいますか、英語をある程度小さいときから学んできた方とそうでない方の意識レベルの差が心配です。私の生徒さんたちもそうですが、小学生さんでも英検でいうと3級、準2級、2級レベルに受かる子が続出しているのですが、2級というと一般的には高校卒業レベルなのですよね。こういうお子さんたちはせっかく小学生のうちにそこまで英語力を高めて得意意識を持っているのに、中学校に入ったら初歩からスタートする、ということでは生徒さんたちのモチベーションもあがらないかなと思います。かといって、小学校のときに英語を特に勉強していなかった方たちは中学からしっかり基礎を学ぶ必要がありますので、急に難しいことをやって苦手意識を作るのもいけません。苦手意識をもってしまいさえしなければ、習得自体は中学校からでも全く遅くはないのですから。得意、不得意、という意識の差がついてしまうことだけが心配です。英語教育の過渡期にある現在は、一クラスに様々なレベルの生徒さんがいることになりますから、個人個人とまではいかなくても、細かいレベル分けなどきめ細かい対応が必要になると思います。英語に対して、全く持つ必要のない苦手意識や劣等感を抱えるお子さんを減らすことが大切だと思っています。

(清水) そうですよね。ピアノなど他の事にも言えるかと思いますが、どのレベル合わせればいいのかというと、なかなか合わせられませんね。きめ細かい対応で個人に合った学習ができたらいいですね。

★グローバル化社会で必要なスキルとは

ゆっか先生は、海外にお住まいだったそうですが、グローバル化社会で必要なスキルって、どのようなものだとお考えですか?

(ゆっか先生) 私は高校1年生のとき突然ニューヨークに家族で引っ越すことになり、予期せぬ形で本当に突然別世界に放り出されました。そのとき衝撃的だったことはたくさんありました。日本にいると当たり前だと思っていたことが当たり前ではなく、井の中の蛙だったのだなあと、外に出て初めて知りました。 そんな経験から、 グローバル化社会で必要だと思ったことは3つです。

質問、議論、そして自分の意見を言うスキル。
これは一般的な日本人に圧倒的に足りないものです。日本では、子どもの頃から沈黙は金、という教育を受けます。今は変わってきているとは思いますが、少なくとも私の時代はそうでした。特別なことがない限り、授業中自由に質問したりしませんし、私の時代は、クラスでディスカッション、ということもほとんどありませんでした。 でも、アメリカの学校では、自分の意見を言ってこそ存在意義がある、という風潮があります。これはグローバル社会全体としてそうなので、日本人だからといっておとなしくして評価されることはありません。人の意見を理解したうえで、きちんと自分の考えを述べるスキルを習得する必要があります。

2)様々な体験
机上の勉強ばかりしているのではなく、子どもの頃には様々な体験をする必要があると思っています。自分で体験したことでないと身につかないですし、自分の言葉で語ることができません。例えばですが、あるとき小学4年生の女の子さんと、英検3級の過去問を解いていて、野球についての長文がありました。例えば、inningは“回”(9回表、などの)のことですが、この生徒さんは野球を見たことがなかったので、“回”と言われても何かわからなかったのですね。そうなると、英語云々の話ではなくなりますので、このレッスンは途中から野球の授業になりました。これは会社員時代、通訳や翻訳をしていたときから感じていましたが、英語、日本語、という以前に、話の中身を知っているということが何より大切です。ですので、小学生のうちは、料理、工作、旅行、など様々な機会を通じてなんでも自分で体験してみることが大事だと思っています。ですので私の教室でも、様々なことを親子で楽しく体験できるイベントを、今はオンラインで開催しています。

日本の知識
意外かもしれませんが、グローバル社会で必要なことは、日本の知識です。私たちはあくまで、日本人としてグローバル社会で生きていきます。いわば、一人一人が日本代表、なのです。例えばアメリカの学校に行ったら、そこにいる数人の日本人が“日本代表”になります。外国の人は日本のことに詳しい人も多いので、日本の歴史や文化のことを色々聞いてきたりします。そのときに、日本人なのに、自国のことを知らない・・・ というのは恥ずかしいですし、日本代表として正しいことを伝えていかなければなりません。アメリカにいたとき、私自身も知識がなく恥ずかしい想いをしたことがたくさんあります。
例えば、私事ですが、私は映画が好きなので、アメリカの大学で映画の授業をとったことがありました。アメリカ映画をたくさん見られるのかと思ったら、授業中にみんなで見たのはなんと黒澤明監督の七人の侍、羅生門、などなのです。それをアメリカ人のクラスメート達は複数回見たことがあって、議論をしている。私はそれらの映画は知ってはいたものの、日本人なのに、一度も見たことがなかったのです・・・初回の授業だけ当てられないように願いながら静かに過ごし、そのあと慌てて図書館でそれらの映画を見ました。 グローバル社会で各国の人たちと対等に渡り合っていくには、日本人としてのアイデンティティが必要です。そのために、日本のことはしっかり学ぶ必要があると思います。

(清水) 1と2は、議員の世界に似ているものを感じました。私たちも議論をしますし、自分の考えをしっかり伝えます。発言するからには、責任も出ますので、発言する前に、偏った考えではないか、思い込んでいる間違いはないかなど、確認をするため、多くの情報を収集します。様々な考えの議員が議論をするため、数々の困難がありますが、乗り越える度に、知識が深まり、精神も強くなり、自立していくような感覚があります。「グローバル化社会」と「自信をつけた自立」には、結び付きがあるように感じました。
3の「日本の知識」ですが、日本人が知らない日本の事って多いですよね。伝統文化、郷土愛なども大切に継承していく必要がありますし、歌舞伎、能、落語、様々な名作、そうした文化芸術にも触れていき、日本人である魅力を伝えて欲しいです。ゆっか先生の教室は、実際に海外で暮らした経験から取り入れている事がレッスンに反映されているため、複合的に身につけるべき事を身に付けられますね。

★家庭で親が子供と一緒に英語に取り組める方法とは


学校だけでなく、家庭で親が子供と一緒に英語に取り組める方法はありますか?

(ゆっか先生) お子さんが小さいうちから、英語の本に親しんだり、色々な体験をしたりするのが近道だと思っています。具体的なやり方や、モチベーションを高めるお子さんへの声のかけ方は、長い話になりますので私の講座でお伝えしています。

★外国語教育が必要な理由

(清水) 講座でこれからも学ばせていただきたいと思います。ゆっか先生は、外国語教育が必要な理由についてどのようにお考えですか?

(ゆっか先生) 外国語教育は、単に言語を学ぶということではなく、異なる文化、習慣、歴史などに心を寄せ、自分と違うものでも恐れずに理解する、ということだと思っています。 これからのグローバル社会で様々な国の方と一緒に仕事をしたりしていくには、相手の懐に入るというか、相手を理解することが必要不可欠だと思います。言語には、その国の文化がぎっしりと詰まっています。例えば、ごはん、というものを一つとっても、日本語は稲→米→ご飯 と状態によって言葉が変化しますが、英語ではすべてRiceです。このことからも、日本人にとってのお米の重要性がうかがえます。こういうところから相手の価値観、大切にしていること、などを理解していくことが、円滑なコミュニケーションの第一歩だと思います。

(清水) 私も似ていますが、日本語以外の語学ができることで、人とのつながり・幅が広がり、また、手に取り易くなる書籍・雑誌・インターネットの情報が増加しますよね。 それによって、新しい知見、異なるものの見方を、自ら入手することが可能になると思います。また、異なる言語そのものを理解することで、その言語の下で培われた文化、社会をより良く理解することが可能になると思います。 たとえば、外国の情報を入手する際に、外国のWebページを日本語翻訳で読めばよい、との見方もあるかもしれませんが、Webページで十分な情報が得られるとは限りませんよね。書籍、雑誌、人との対話、自分で現地を見て回る等が必要になることもあると思います。 書籍について翻訳を読めばよいとする見方もあるかもしれませんが、読書で得る知識は、芋づる式に繋がっていく面もあると思いますが、翻訳されたものからは、なかなかそこはから先へ興味を持って自ら辿っていくような応用が効きづらいかと思います。そうした事からも、外国語を学ぶ事は様々なことに繋がっていく素晴らしい事だと思っています。

(ゆっか先生) おっしゃるとおりだと思います。これからのお子さんたちには、単に、試験に受かればいい、道案内程度の英会話ができるようになればいい、ということではなく、世界情勢を理解したり、世界の人とスムーズにコミュニケーションをとったりすることによって、世界で起きている問題を一緒に解決していってほしいと思います。

(清水) 入試のためではなく「人と人が国を越えてわかり合えるために学ぶ」「知りたい事について、世界の様々な事例を知るため学ぶ」など、そうした人生に大切な英語教育になる必要があります。
私たちは、それぞれの国が、豊かで安全であるように、協力し合う必要があります。
人は生まれながら平等なのに、人種差別が起きたり、戦争が起きたり、心が痛む報道が多々ありますが、それはお互いに対する理解不足も背景にあるのだと思います。
武蔵村山市も、周辺に横田基地がありますし、様々な国から来たご家族も生活しています。「お友達になりたいから、あなたの事をもっと知りたい」「私の事をもっと知って欲しい」「あなたの国の事を教えて」「日本はこんな素敵な国ですよ」そうした興味や優しさから学びあい、国際理解に繋がっていくと嬉しいです。
私は武蔵村山市議会の議員として、武蔵村山市の子供たちが、このまちに住んでいるからこそ得られるものが増えていくよう、これからも教育に取り組んでいきます。

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