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しといたほうがいいよ


少し前。

実家に久しぶりに夫と三男と3人で帰った。

私の母は、持病の治療を在宅で開始して、

一年になるが、それを目にするのは初めてだった。

在宅での治療を行いながら、それまでと変わらぬ

生活を送っているので、外で会う人は母を

病人だとは思わないし、元気な人ね!と声を

かけられることの多い母は、それに満足している。


母の治療は多くの人の協力や支援のもとに

成立している。

同じ病気の先人の方たちの様々な苦労や訴えが

あり、その家族の皆さんの働きかけがあり、

確立されたものだとも実感している。

母が、いつも元気だね!と声をかけてもらえる今は、


私にとっては沢山の人に頭をさげてお礼を言って

回りたいほどに、ただただ有難いことだ。

治療の過程を見た三男は、その仕組みについて

自分が勉強してきた道理で、

こうこうこういう風になって、

〇〇の身体は保たれているんだよ。と母に伝えて

母を驚かせていた。

(母は絶対に自分をおばあちゃんとは呼ばせないためあだ名で呼ばれています)

三男は、小さい頃、おどおどしてメソメソして

私が時々実家に帰り、出かけるために置いて行くと根気よく泣いていた。

騙されたり、誤魔化されたりしない子だった。

父や、母や、世話に招集された妹家族が、公園に

連れて行き、遊ぼう!とほちゃほちゃと

もてはやしても、ちょっと遊びはじめると、

また不意に思い出してママと泣き始める。

あんまり泣くので、チキンナゲットを口に

入れられて涙目の写真が今も飾ってある。

母は抱っこしてひとときも離せない、本当、

諦めない子だったわー!と振り返る。


実家から帰る時、外まで見送りに来た母を、

私がハグする。

無理しないでね。私よりさらに小さく痩せた母。

うん、おだんごちゃんも元気でね。

あと何回こんなふうに触れ合うことができるのか。

私が離れたあと、

私が息子に、ほれ、ハグしてやんなさい。と

促すと、息子は躊躇せずにほい。と母を抱きしめた。

えーーっ!わあ!うれしいー!

母はむぎゅむぎゅと息子にくっついた。

小さい母は、息子に包まれてほぼ見えない。

ああ。泣いてばかりの息子が、母を抱きしめて

励ますことができるほどに時は過ぎたのか。

その後、では、次に、夫よ。と促したが

夫は、恥ずかしがって、母もそれは悪いよと

遠慮した。

帰りの車内。

ああいう時はしといたほうがいいよ。

息子が夫に言った。

えっ?ああ…そうか、夫はいい淀んだが、

そうだな、次はする。と言った。

夫に大変真っ当な意見ができるぐらいに

時は過ぎていた。

次にすると思うことは、今した方がいい。

車から流れる馴染みのふるさとの景色を見ながら

そんなことを思っていると、

あんな力あれば、しばらく大丈夫だと思うよ。
めっちゃ抱きしめられたし。ぎゅうぎゅうされた。

そうか、まだ実は、母に主導はあったか。


☆☆☆

あまのこさんのこちらの企画で、見出しのイラストを描いていただきました。現在は一旦募集はお休みされているそうです。

イラストを拝見して、最初にイメージしていたものより、今回のこの話が自分の中でぴたりときたので、書きました。

あまのこさん、本当にありがとうございました!

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お気持ちありがたく頂戴するタイプです。簡単に嬉しくなって調子に乗って頑張るタイプです。お金は大切にするタイプです。