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インド旅行記_空港のお兄さん

<空港のお兄さん>
ムンバイ空港でお世話になったお兄さんがいる。

空港からは病院が手配してくれたタクシーに乗る手筈なのだが、当のタクシーが見当たらない。だが、ここまでは想定済みなので、病院のスタッフと連絡を取るべくムンバイ空港の無料wifiへのアクセスを試みる。・・・が、アクセスの認証がうまく通らず、一番アテにしていた空港wifiが利用できない。わざわざ事前に国外用のSIMカードを用意するまでもないだろうと思っていたので、自分の携帯からは通信ができず、そして空港周辺ならあるだろうと思っていた旅行客用のSIMカード販売スタンドのようなものも見当たらない。

「ムンバイ空港で迎えのタクシーを見つけるのが大変かもしれない」と事前にアドバイスをもらっていたにもかかわらず、「どうにかなるだろう」というお気楽が発動して私の準備といえばすっかり人任せだった。やれやれ。まあそれでもどうにかなるだろうという気持ちで、空港ゲートの外をウロウロする。

その辺に野良wifiのようなものがないか探すが、見当たらない。病院からのタクシーも探すが、見当たらない。うーん、どうしようか・・・。病院のスタッフの電話番号はわかるので、いざとなったらその辺にいるインド人に電話を借りよう・・・と考える。でもやっぱり「電話を貸してください」と声をかけるのは勇気がいるので、最終手段にとっておく。そんなふうにしばらく空港ゲートの外をウロウロしてみたり、ぼんやり来るのか来ないのか分からないタクシーの運転手を待ってみたものの、ラチがあかない空気が漂ってくる。

近くにチャイやらサモサやら美味しそうなものを売っているテイクアウトカフェがあったので、そこの店員さんに聞いてみることにした。「いらっしゃい、何にします?」キビキビした、でも落ち着いた目をしたお兄さんが注文を尋ねる。「すみません、注文じゃないんですが、この辺でどっかwifi使えるところはありませんか?」一瞬思考を巡らせたお兄さんは、「この辺には使えるwifiはないね」という。おーそうか・・・どうしようか・・・と思う間も無く、「僕のwifiを使うといいよ」とレジの横から自分の携帯を手に取り、何やら操作を始めた。

(僕のwifiを使うって・・・どういうこと?)(お兄さんの電話を貸してくれるということ?)事態がよく飲み込めないでいると、「携帯を貸して、パスワード入れるから」という。一瞬躊躇しながらも携帯を託すと、手際よく操作しながら彼のwifi回線にアクセスできるようにしてくれた。「はい」と手元に戻ってきた携帯に表示されたwifi接続マークは輝いて見える。早速病院のフタッフに連絡を取っていると、他の客の注文に対応しながらも「どう、使えそう?」とお兄さんは気にかけてくれる。「ばっちり!!ありがとう、本当に助かったよ」と答える私は思いがけない形でwifiを借りることができて嬉しくて仕方がない。

ムンバイ空港のwifiは繋がらなかったけれども、それでよかったように思う。当然のことのようにwifiを貸してくれたお兄さんは爽やかで、自分の行為を親切だとすら思っていない自然な親切だった。結局タクシーの運転手は違う場所で待っていたようで、合流するのにしばらく時間がかかった。時間は夜の19時くらい。ここから病院まで4-5時間と聞いているので、すっかり心のホームベースになったそのカフェでサモサを買い、腹ごしらえをしてから病院へと向かった。

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