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「タレルの部屋」の仕掛け

直島に行ったので、ジェームズ・タレルの作品がある地中美術館に寄ることにした。

お目当ては「オープン・スカイ」だったんだけど、今回は「オープン・フィールド」(「タレルの部屋」とも呼ぶらしい)の異次元感がヤバくて、このnoteを書いている。

どんな作品か、という説明は省略。

8人くらいで、そろりそろりと青い部屋に入る。
青い部屋と思ってたんだけど、いつのまにか光の色が変わっている。
周りの人を見ると、体の輪郭がピンクとか青とかの光でなんかチカチカして、境界線があやふやなホログラムみたいに見える。

光の色は少しずつ、でもどんどん変わっていく。

知覚が追いつかなくて、脳内の認識変換も追いつかない。

遠近感がなくなるし、見えてる色が何色なのかわからなくなる。輪郭もよくわからないし、今いるのが現実なのか非現実なのかもよく分からなくなる。

うっかり、VRの世界に迷い込んでしまったような、ゲームの世界に入ってデータになってしまったような錯覚がする。

ホログラムになるのって、こんな感じか!!
っていう異次元感。

あっという間に入れ替えの時間になって、外に出る。

*作品は撮影できないので写真がないのですが、こちら↓のサイトに掲載の写真の感じがまあまあ近いです。雰囲気わかるかと。
https://www.itsliquid.com/james-turrell-aftershock.html

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ちなみに私の初タレルはもう10年くらい前。
豊島美術館がオープンしたくらいのタイミングで瀬戸内芸術祭めぐりをしたときにタレル作品に出会った。

アート大好きな友達が、タレルのナイトプログラムに申し込んでくれて、日没の空の色が変わる時間帯にタレルの作品を鑑賞した。
(ナイトプログラムは2022年12月時点ではまだやっているので、ご興味あればぜひ。曜日限定・要予約なので要チェックです。https://benesse-artsite.jp/news/20220411-2289.html

タレルのナイトプログラムも、タレルの部屋も、どちらも「客観的な自分」が揺らぐ。(だから、「作品の鑑賞」という作品との距離のある表現はあまりしっくりこない)

ナイトプログラムの場合、見ている空が、本当に空なのか分からなくなる。
青かった空が緑に見えたり、紺色に見えたり、赤く見えたり。
自分が何を見ているのか分からなくなる。

人間の知覚がどれだけ相対的で、場当たり的で、曖昧なものなのか、ということがボロリと現れる。

タレル作品はそんなところが好きなんだけど、今回「タレルの部屋」で感じたのは、(タレル、すごい仕掛け作ったなー!!)だった。

普段は「物体です」と思って物体として存在してる身体が、一瞬バグって、ホログラムにちょっとだけ戻っちゃってる感じがした。
わたしだけじゃなくて、他の人も、少しの間ちょっとだけホログラム化してたよ。

あの部屋は、そういう仕掛けなのでは?

うっかりホログラムに戻っちゃう仕掛け。

「あのー、みなさん。
自分のこと、物理的に独立した、輪郭のある物体だと思ってません?
本当は境目なんてない、ホログラムだってこと、忘れてません?」by タレル・・・という、妄想。

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