過去マス用のExcelをどう使ったか

この記事のサマリ
・前回記事では、過去マスの進捗管理用のExcelを作成したこととその機能について紹介した
・あくまでExcelの機能に絞った紹介だったため、そもそもどのように過去マスによる問題演習を進めたのか、またその際にExcelの機能をどのように用いたのか、説明不十分だと考える
・そのため、「どのように問題演習を進めたか」「その際、Excelの機能をどのように活用したか」、詳述する
 ー Excelの機能は問題演習の前後を埋める、段取りパートに位置する
 ー 問題演習では、「周回=回転数」×「効率性」の両立を意識。
   Excelでの進捗記録が効果的
 ー 「回転数」は少なくとも3~5周を目指す
 ー 「効率性」は①間違えた問題を正解に変える、②点数の上がりやすい
   テーマから着手する、の2つの観点で考える
 ー Excelは、上記①間違えた問題の管理、②優先テーマの決定をサポート

前回記事はこちら↓

Excelは過去マス演習のあくまで補助ツール

Excelはあくまで勉強の計画を立てたり、進捗管理するためのものなので、実際の具体的な勉強は「過去マスを回すこと」に尽きる。

一般的に、PDCAサイクルのうち、CAがとても大事と言われるし、実際そうだが、DがなければCAもなにもない。効率的に勉強すると言っても、全く勉強しなければ当然点数は上がらない。

ExcelではこのDを決める、補助する、振り返るためのツールを拡充させた。
具体的には、
・Dの決定:優先して取り組むべき分野の特定
・Dの補助:過去マスの取組結果(○△×)の記録・進捗管理
・Dの振り返り:取組結果の集計
となる。
これらは前回の記事の要約・パラフレーズに過ぎない。

ただ今回は、もう少しだけ具体的に、「どのように進めたのか」について話したい。
まずは過去マスを使った私の勉強の仕方について簡単に書いておきたい。

周回の進め方

PDCAの「D」の部分について具体的に書いていく。

時間は有限かつ他の方より確保が難しいと分かっていたので、効率的に進めることが必須要件だった。
一方で、「薄いテキスト/問題集を何周もする」などと言われるように、回転数を意識することも勉強を進める上では王道と考えていた。
「効率性」「回転数(演習量)」という相反する2つの観点を勘案した落としどころとして、その人の勉強方針が立つことになる。

私の場合、こうだった。
もちろん前提知識・演習1回目時点の理解度・使える時間など個人差があるため、誰もが同じことをやればOKではないことには留意いただきたい。

ABランクの問題を中心に、各科目10回転でプラン

先に回転数について。
10回転という数字に厳密な意味付けはない。
出来るまでやる」「覚えるまでやる」と考えるのが正しいと思う。
ただ勉強を始める前の、計画時点で想定はしておかないといけない。
勉強に取れそうな時間も踏まえつつ、周回数を決めたい。

私の場合は、
・勉強開始が22年11月で、翌年8月まで9カ月と長期間に及ぶため、2~3回転では各取組の最初に取り組んだ内容を忘れてしまう恐れ
よく間違える問題は、4~5回程度では克服できないだろうという経験則
1次試験は7科目もあり、使える時間からして単純に20、30回転は難しい
あたりから、MAXで10回転くらいだろう、というあたりを付けていた。

勉強の計画を立てたのはこのExcelを作る前だったが、その時点で過去マス書籍版のチェック表では足りないと感じていたことになる。

10回転のステップ感は、勉強の大枠ステップや、マイルストーンとなる模試のタイミングと同期させる形でざっくり決めた。
1~2回転目:初回インプット(テキスト通読)とセットでの演習
3~5回転目:7科目の初回インプット後の振り返り
⇒ ここまでで5月模試を受験(勉強期間:6か月)
6~7回転目:点数安定化を目指した弱点の補強
⇒ここまでで7月模試を受験(勉強期間:8カ月)
8~10回転目:本試験に向けたブラッシュアップ

こういった周回のステップ感は、先に勉強の大枠ステップや、マイルストーンを把握しておかなければ具体化できない。
過去マス周回から見えてくるものもあるが(=ボトムアップ)、目標の達成条件(=60点以上)・締切(=試験日)が決まっているなかでボトムアップ的なアプローチだけでは、勉強は必ず破綻する。
細部は不要なので、ゴールからの逆算によるトップダウン的なアプローチ・発想からスタートし、学習を進めるなかで適宜修正していくのが望ましい。

繰り返しになるが、特に詳細なステップ感は学習前の知識量や勉強に費やせる時間など、個人差が大きく影響する部分なので、誰もが同じ進め方である必要はない。
大事なのは本番までの見通しとそれを実現するためのプラン・段取りであり、そこがぶれていなければ具体的な周回数などは瑣末な話となる。

一方で、周回数だけを追い求めると、労力をかけた割に点数が伸びない・・・という状況に陥る。
1次試験の場合だと、例えば財務・会計のような計算を要する問題は没頭しやすいが故に取り組んだことそのもので満足してしまいやすい

私のように「量でカバー」と安易に考えがちな人間は、同時に、効率性を追求することを強く意識付けしなければならない。
私のケースでは、回転数を確保しつつ、1回転でこなす問題の量を減らすことで両立を目指すことにした。

「解けなかった問題を解けるように」に注力

改めてだが、周回する=回転数を稼ぐことには「未理解の克服」と「忘却の克服」の2つ目的があると考えている。
周回することの目的、というより勉強の大方針といったほうがわかりやすいかもしれない。大方針をかなえるための手段が周回。

未理解の克服とは、「解けなった問題を解けるように」なることであり、
忘却の克服とは、「記憶を定着させる」こと
を意味している。

両方大事に決まっているのだが、時間や体力の制約が加わると、しばしば両立が難しくなってくる。数回転するなかでそれぞれの目的を達成できるように、うまくバランスをとることが必要になってくる。
特に勉強期間が長くなると、どうしても後者の「記憶定着」がハードルとなってくる。うまくこなしながら、試験当日までもっていきたい。

そういった前提のもとの話となるが、
とは言え、過去マス周回においては、基本的には「未理解の克服」、つまり「解けなかった問題を解けるように」することを優先するのが良い。
記憶の定着の確認は必ずしも過去問演習を必要とせず(暗記カードとか)、また、過去問演習が最も効率的とは言えないケースがあるためである。

実際に各回転で取り組んだ問題範囲について確認してみる。
企業経営理論を例示しているが、基本的には各科目共通で進めていた。

実は10回転目は試験までに間に合わなかったという話はさておき、
「取組む問題の考え方」を見るといろいろと細かに条件を変えていることがわかる。いちいち読み解くと面倒だが、基本的には「×だった問題を放置しない」ということに尽きる。

「取組む問題の選定イメージ」部分を見てもらいたい。
1回転目ではABランクの問題をすべて取り組み(Priorityについては後述)、
その結果が〇・△・×と分かれている。
直後の2回転目ではこのうち×だった問題にフォーカスして取り組んでいる、といった具合だ。

区切りのタイミングのたびに忘却対策として改めて〇だった/△だった問題に取り組んだが、そのあとの対処としては一貫して×だった問題に注力していることがわかると思う。

このように問題を絞ること、その際には「未理解の克服」を念頭に絞ることで、回転数を確保しつつ点数アップにつなげることを目指していた。

・・・目指していたが、それでもやはり時間的な都合で捌ききれない、ということは発生する。
その際には、次なる一手として取り組む章そのものの仕分けを行っていく。

計画通りいかないことを前提に章を優先順位づけ

実際、先ほどの画像からも分かるように、うまくいかなかった。
特に初期(ステップアップ模試まで)は、勉強時間が思ったより取れなかった・初学習の科目の理解にてこずった。

最初の計画では、5月のLECステップアップ模試までにすべての科目で5回転する予定だったが、どんどん後ろ倒しとなり、結果として3~5回転目の取組内容を減らさざるを得ない状況に。

ここで、先ほどの周回数ごとの取組内容について改めて見てもらいたい。
ところどころ、「P1」など表記がある。これは何か。
Excelのグラフを見て決めた、優先して取り組む章にあたる。

実際例を紹介する前に、改めて前回記事の復習を。
過去マスを1回転すると、「取組状況」シートでそれっぽいグラフが出来上がる。

2023/03/12時点の経済学・経済政策

いわゆるバブルチャートと呼ばれるものであり、枠組みはこのようになっている。

前回記事から再掲

・縦軸:各章の得点率期待値
・横軸:各章の全問題数に占める、A+Bランクの問題数の割合
・円の大きさ:各章の全問題数(A+B+Cランク)

縦軸は、要は正答率である。〇の問題×1点+△の問題×0.5点を、今時点の実力点数と考え、それを解いた問題数で割り算している。

横軸は、上記説明がすべてだが、この割合が100%に近いほど、
割合が高い = ABランクの問題が大勢を占める = 出題される論点がばらけていない = 勉強のコスパがよい
となる(と考えている)ため、学習のコスパに直結する。

円の大きさは補足不要だろう。

各章は、これら情報の組み合わせでグラフにプロットされ、その位置ごとに今後の取り組みの方向性がわかるという仕組みだ。

なお、この図はわかりやすさのためにデフォルメしているが、より精緻に考えると、象限の上下の境目は真横線ではなく、斜めになるのが望ましい。
これは、以下どちらを優先して勉強するべきか考えると分かる。

円の大きさ=問題数が同じで、
① ABランク問題で100%を占める章で、正答率が50%
② ABランク問題で20%を占める章で、正答率が50%

もっと言えば、
① ⇒ 経済学・経済政策のIS-LM分析問題
② ⇒ 経済学・経済政策の統計問題
と考えると感覚的にどっちが大事かわかるだろう。

上下の象限の境目は、要は合格点(あるいは、目標点)ラインにあたる。
よりコストパフォーマンスが良い章(論点)ほど、正答率を高めることで得られる効果が大きい(正解した問題の類題が、次も出やすい)ので、②より①の正答率を上げることに注力したい。そういう意味で、①②は同じ正答率でも、①が優先 ⇒ 合格ラインより下とみなす、②は劣後 ⇒ 合格ラインより上とみなし、手を付けるのは後、と考えておく。

科目ごとにこの斜めの境界線がどれくらいの傾きで、y切片はいくらで・・・という計算はしていない(複雑だし、無意味)ので、最後はフィーリングとなるものの、優先順位づけをするという目的に照らせば問題はないように思う。もっと言えば線を引かずともある程度分かってしまうが。


前提が長くなってしまったが、改めて実際例を見てみる。
2回転が終わった時点の経済学・経済政策バブルチャートである。

2023/03/12時点の経済学・経済政策

先ほどの話で言えば、左下の「第2章」と右下の「第3章」は正答率がほぼ同じだが、優先順位は違う。

本題に戻ると、「3回転目以降、今後優先的に手を付けるべき章はどこか」を決めたい。
noteの説明用に、補助線を引いてそれぞれの象限の方針を転記してみる。

繰り返しになるが、横軸は章内のABランク問題の割合であり、縦軸は現状の得点率期待値を表す。
つまり、右下象限に当たる章は、「論点が狭い」×「正答率が悪い」となるため、ここをまずもって攻めるのが一番効率的に得点を伸ばすことにつながる。そのため、Priority1=P1、と表現している。

残りの象限についても前記事と被るが記載しておく。

・右上:「論点が狭い」×「正答率も高い」⇒ Priority2
ある意味完成に近い。
一度正解した問題を繰り返す価値は大きくないので、基本は放置。
ただし赤線ラインをギリギリ超えている状態など、さらに復習して固めるという方向性は章によってはアリ。

・左下:「論点が幅広い」×「正答率は低い」⇒ Priority2
幅広い知識が求められるため、優先度は低い。
とは言え「出題問題数も多い=円が大きい」場合は、他の章・科目の状況や、自分自身の中での手ごたえなどもとに、手を付ける戦略もアリ。

・左上:「論点が幅広い」×「正答率も高い」⇒ Priority3
レアパターンだが、基本的には放置だろう。最も優先度が低い。

このような方向性のもと、Priority1の章とそれ以外で章を分けて、段階的に取組む=間に合わなければ、2段階目の章は取り組まない、という方向に計画を修正した。
【実際の取組結果】
・3回転目:Priority1の章のABランクの問題
・4回転目:3回転目で×だった問題
・5回転目:Priority2の章のABランクの問題

さらに言えば、それでも一部科目は間に合わないため、3か年(R1~R3)に絞って取り組むことでなんとか模試までに1回転稼いだ、というところで落ち着いた。

この機能を使うにあたっては、まずは前提としてテキスト通読+過去マス(ABランク)を1周してもらいたい。
1次試験の超直前期から勉強を始める場合は別にして、とにもかくにも一通り見てみない事には自分の実力が分からない。

※さらに、それより先に最初に「最新年度の過去問を解く」というのを挟んでも良いが、点数は参考にならないので、個人的には「過去問を見てみる」くらいでいいと思う。
私の場合、経済学・法務・中小は解こうとするだけ無駄だった。

※ちなみに、Cランクの取り扱いについても検討のうえ、一部問題には実際に取り組んだ。字数の関係上一旦ここでは割愛したいが、結論、Cランクに手を出さずとも60点は十分狙える試験ではあると考える。

なお、Priorityは自身の得点率期待値を加味して決めているため、その理解度に応じて対象となる章は変わる。得点率期待値が100%の章はPriority1にならない。そのため、適切なタイミングごと(マイルストーンごと、等)に改めてPriorityを設定する必要がある。


他の受験生の3倍の勉強時間、取れますか?

長くなってしまったが、このような進め方でどれくらい「効率性」を発揮できたか残しておく。
厳密に数値化するのは難しいが、9回転する中で取り組んだ問題数の合計と、単純に過去マスを1周した場合の問題数の合計を比較してみたい。

凡例の通り、各科目の棒グラフのうち
・左:過去マスのABランクの問題数合計
・右:9回転の結果として解いた問題数の合計
を表している。
また、赤字は(右の数値)÷(左の数値)で計算される倍率を表している。

つまり、経済学・経済政策で言えば、「9回転したものの、取り組んだ問題数ベースで言えば3.1回転分」ということになる。
他科目もおおむね、実質2~4回転分であったことがわかる。

逆に言えば、9-3.1=5.9回転分は、解く必要がないと判断した問題と言える。単純に9周した場合、その2/3はムダだったかもしれないと言い換えてもよい。
時間的にも、単純に9周する場合の1/3。だからこそ、約350時間くらいの勉強時間でなんとかなった、と考えられる。

他の受験生の3倍の勉強時間、取れますか?


終わりに

もう6000字超えてしまっているので、模試や本番の点数検証はまた別途詳述したいと思います。
結論だけ書いておくと、5月の模試で555点 / 7月の模試で480点 / 本番で542点(見込み)でした。この進め方で問題ないと思います。

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