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今週のおたより:美しくない私へ

「竹内さんも、こんな感じの服を着ているんですか?」と、時々読者の方から聞かれる。

全く想定していない質問だったので、初めて聞かれたときは驚いた。
私自身は、特定のスタイルを「素敵だな~!」と思っても、それがイコール「自分も着てみたい」にはつながらないので、描いているものと実際に着ているものは異なる。「描いたら満足する」タイプなのかもしれない。

自分が素敵だなと思うものを描いて発信しているつもりなので、「作者も同じ雰囲気なのかな」と思ってもらえるのは嬉しいことだと感じた一方で、ファッションに関するイラストを描いたり、本を出したりしていると「作者もこうなのかも!」という「期待」が沸いてくるものなのだと発見した出来事でもあった。

コミックエッセイも読んでくださっている読者の方から
「シマシマ着てないんですね!」って言われたときは笑ってしまった笑
毎日同じ服の、スティーブ・ジョブズ方式もアリだね!

同じく服装に関して、こんな質問をもらったこともある。
「どんな服を選んだらいいのか分かりません。どうしたらオシャレになれるか教えてもらえませんか?」
私はただの漫画家であり、デザイナーでもファッショニスタでもなんでもないので、そもそもこの質問に回答すること自体がおこがましいと即座に感じた。
けれども、これは私の描いたものを見て「素敵だな」と感じてくれた故のメッセージで、そこには悩んでいる読者の方がいるのかと思うと、どうしても見逃すことが出来なかった。
で、散々悩んだ挙げ句、「もし自分が素敵だなと思えるスタイルがあれば、それを真似してみたらいいと思いますよ」などという、とても実際的ではない回答をしてしまった。クソリプである。
おそらく、それが出来ないから苦労しているのに。

自分でも腑に落ちねぇ回答だと感じ、返信したあとも非常に申し訳なく思っていたので、その後長いことこの質問について考えていた。というか、今でも考えている。
そうして気付いたのだが、そもそも私はこれまで「何を着るべきか」で悩んだことがなかった。
これは即ち、私に生得的な「センスがある」などということではなく、たまたまファッションに興味を持っていたので、日々なんとなく情報を集めていて、多少の「判断が出来る」ということだと思う。
洋服やメイクが好きで、歴史や流行を眺めているので自然と知識が得られて「好み」が構築されて、その中でなんとなく自分に似合うもの・似合わないものが選択できているということだ。
それ故に、自分が美人でないことに悩んだことはゴマンとあったが、「何を着るか」で悩んだことは殆どなかったのだ。

悩んだことがなかったので、その悩みへの私なりの回答も持ち合わせていなかった。
どんな人にも、その人に似合うスタイルがあると思っている。
一方美醜の問題は非常に難しく、似合うからといってそれが流行に合っているかとか、現在の価値観に照らして「美しい」かというのは、また別の話だとも思う。
だから、「どんな人でも、どんな格好でも皆美しい」みたいな言葉は上滑りで、力になれないと感じる。
「じゃあどんな答えならば力になれるのか?」ということは、もう何年も考え続けている。


ところで、ここ数か月の私は、人生で一番美しくなかった。

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