「好き」を「自分だけの仕事」にしたい人がすべきこと
実は先週、このイベントに行ってきました。 https://historiansworkshop.org/2024/05/31/bts_anna_komnena/
歴史を題材にした漫画『アンナ・コムネナ』の制作背景に関するトーク・イベントです。アンナ・コムネナは、ビザンチン帝国の女性歴史家を描いた作品で、そのリサーチ方法や創作過程が紹介されました。
この作品が大好きだったのと、日本人からするとマイナー言語である地域の、それもなん百年も前の歴史をモチーフにするにあたって、どうやってリサーチしているのかに興味があったため、参加することにしました。
ですが、それ以上に興味があったのは、佐藤二葉さんのものすごくユニークなキャリアビルディングです。
佐藤二葉さんは、漫画家で小説家であるだけでなく、古代ギリシャの竪琴の奏者としても活動されている、非常にユニークな方です。
複数のフィールドで活躍されている方は多くなってきていますが、とはいえまだまだレアですよね。ましてや、趣味のレベルを超えて、社会的に認知されるようになるにはかなり高いハードルがたくさんあると思います。
大企業の管理職や大学の教授といった地位を得るのはもちろん大変なことです。ですが、そうした「イス」は、すでに社会の中に用意されています。
一方、「舞台俳優で演出家で、小説も書き、専門家ではないけれど、ギリシャの竪琴の弾き語りをして、ビザンチン時代の女性歴史家の漫画を描く人」という「イス」は、佐藤二葉さん自身が作り上げたものです。彼女以前にはこの世のどこにも存在しなかった。
それもおそらく、「私はこういうイスに座りたい」と計画的に意図的に活動してきたというよりは、「うわあ、この木材素敵!」とか「この生地の手触り最高!」などと、人生の途上で出会ったものたちを大切に拾い集め、組み合わせたり、磨いたり形を整えたりしているうちに、気づいたら素敵なイスが出来上がっていた、という方が実態に近いんじゃないかなと想像します。
「やりたいことが見つからない」と悩む方は多いと思いますが、「やりたいこと」って最初は「ない」人が多いです。大谷翔平さんや藤井聡太さんのように「野球」や「将棋」という、誰もが知っている完成形でこの世にあるものが「自分が本当にやりたいこと」であるひとは、むしろ少数派です。
圧倒的大多数の人は、「好きなもの」が「まだこの世にない」人たちです。つまり、自分で作りあげない限り存在しないのです。
佐藤二葉さんは舞台俳優としての活動歴がおありですが、流行のテレビドラマや商業映画の女優をすることには、おそらくあまり興味がなかったのではないかと思います。また、ギリシャ悲劇は大好きでも、大学に残って研究者になるのは少し違うかな、と感じていたのでしょう。既存の道ではどれも少しずつ「なんか違う」と思っていたのではないかと思います。
だからこそ、自分にしっくりくるものを1つ1つ丁寧に拾い上げて、積み上げていったのでしょう。
彼女の前に佐藤二葉さんはいなかったのです。「舞台俳優で演出家で、小説を書き、ギリシャの竪琴を弾きギリシャ語で歌い、ビザンチンのマンガを描く人」というロールモデルは、彼女の前には存在しなかった。そしておそらく、彼女の後にも現れないでしょう。
これからの時代は、こういうパターンのキャリアビルディングをする方が増えてくるのではないかと思います。
価値観が多様化し、「こうすればみんな幸せになれますよ」という共同幻想を社会が提供できなくなっている今は、ひとりひとりが自分のやりがいや幸せを自分でみつけて、一から自分の手で作り上げなければなりません。
では、そのためにはどうしたらいいのでしょうか?
「これやって何の役に立つんだ」という考えは捨てる。→ある程度時間が経過した後にならないと分からないから。始める前からこれ考えたら何もできずに終わってしまう。
世間と比較しない→興味あること、好き嫌いが違うので、他人と比較しても無意味だから。
結果を求めずにたくさんの情報に触れる。(好きな分野の本を読む、何かの体験教室に参加する、行ってみたかった街に旅行に行くなど。)→何が好きだったか考え、それに近いものにまたたくさん触れる。これを繰り返す。すると、徐々に自分が心惹かれるものごとの本質が分かってくる。
体力に余裕を持つ:心身ともに疲れていると、楽しさや幸福感を感じるセンサーが鈍るので。
時間に余裕をもつ:好きなことや興味があることを模索し、追求するにはある程度の時間的余裕が必要だから。
ざっとこんなところでしょうか。 参考になれば幸いです。
あまり言われないことですが、自分の「好きなこと」を見つける旅は、実はけっこう長く険しいものだと思っています。人に言われたことだけやっている方が、実はずっとラクです笑。でも、それじゃ、死ぬときにきっと後悔しますよね。
後悔したくないので、私も日々、スプーンでトンネルを掘っているような気持になることがありますが、細々と頑張っております(笑)。
皆さんも、自分だけの「イス」を見つけてくださいね。
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