髪の毛を伸ばし始めたら、自分を愛せるようになった
髪の毛を伸ばしてかれこれ1年になる。
ショートボブだった髪の毛は、鎖骨を優に超えるくらいの長さになった。
特に髪型にこだわりはなかった。高校時代に体を壊してから、わたしはずっとショートヘアにしていた。前髪はなんとなく短め。ショートボブは手入れが簡単で、ダメージも特に気にならない。寝癖もアイロンで伸ばしてしまえば直る。髪の毛に手をかけなくていいところが楽だし、手をかける余裕もない。自分にはショートヘアの方が似合う気すらした。体を壊す前、高1の頃は胸にかかるくらいのロングヘアにしていたのだけど、友人たちは「アキはショートの方が似合うね」「ロングヘアだった頃が思い出せない」という。ショートボブを気に入っていたし、自分にはロングヘアが似合わないと思っていた。
そんなわたしが髪の毛を伸ばすきっかけは実に些細だった。仲のいい異性が「ロングヘアのアキも見てみたいなあ」と言ったのだ。
去年の11月頃、髪の毛は肩につかないショートボブで、赤みのある茶色に染めていた。「高1の頃はロングヘアだったよ」という話をして、当時の写真を見せた。黒髪で、胸までかかるストレートのロングヘア、前髪はおでこが広いコンプレックスを隠すため、生え際にあるつむじによるひどい生え癖をなんとかまっすぐにして形を固めて死守している。少し童顔でふっくらしている、化粧気のないわたしが、制服姿でピースサインをして笑っているものだ。
その写真を見た彼が一言、
「いや、今のアキがロングヘアだったらどうなるのかなって」
と。
「うーん、伸ばしてみるかなあ」と曖昧に返事をして、モチベーション低めに髪を伸ばし始めた。
髪の毛を伸ばしてみると、大変なことがたくさんあった。
肩に付く長さになれば、髪の毛は肩について跳ねまくって、ヘアアイロンではどうしようもできなかった。
なんとかヘアアイロンで髪の毛を伸ばして過ごしていたけれど、今度は枝毛と髪のパサつきが気になるようになった。ヘアアイロンで髪の毛を伸ばした日には、髪の毛が静電気を帯びてぼわぼわになった。髪の毛を染めているため、髪の毛にはどうしてもダメージが蓄積されてしまうのだ。
結局、いつも使っているトリートメントを、同じラインのヘアマスク(補修力が高く、髪の毛がより潤うもの。価格が高い)に変えた。ヘアアイロンでのスタイリングは止めた。美容室で洗い流さないトリートメントを買い、お風呂上がりやスタイリングの前に付けることにした。乾燥でアホ毛が気になるので、結構高いブラシ(2,500円くらいした)も買った。髪の毛に手間をかけるようになった。
すると、髪がさらさらになって、ヘアケアが楽しいと思えた。
髪の毛に手間をかけることが面倒だったのに、手間をかけてみると、かけた分だけ自分の髪の毛がどんどん良くなり、手間をかけることが楽しくなってきたのだ。
結果、今まで見たことのない自分がいた。変わらず赤みのある茶色に染めている髪は、くせ毛で緩いウェーブを描いている。今までずっと髪の毛はヘアアイロンで伸ばしていたし、長さも短くしていたから、自分の髪が自然なウェーブヘアだとは知らなかった。嬉しい誤算だ。
そして、ヘアケアで自分に手間をかけることが楽しいと学び、自分磨きに精を出すようになった。スキンケアをきちんとやるようにしたら、肌の調子がよくなり、かさつきが気にならなくなった。筋トレを始めたところ、体重は変わらないけどくびれができて引き締まった身体になり、体調もよくなった。
はっきりと自分のいい変化がわかり、習慣づけはすぐできた。
そして、手間をかけている自分自身に、愛着が湧くようになった。
自分は自分であると信じて、肯定できるようになった。自分を大切にして、愛せるようになった。自信もついた。
だって、自分は昔と比べてずっといい状態だ。その状態はわたし自身が手をかけて作ったんだ。
わたしは自分を愛せるようになったばかりだ。時折ホルモンバランスや昔のことを思い出したりして揺らぐこともあるけれど、それが自分なんだと、受け入れられるようになってきている。
今後は、もっと自分に手をかけたい。筋トレメニューを見直したり、美容液とかも使ってみたい。いいドライヤーを買うつもりでいる。そうやって自分がさらにいい方向に変わっていくのが、これからも楽しみだ。
(今は胸にかかるかかからないかくらいまで髪を伸ばしました)(これからも伸ばします)
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