当たり前に感謝する
マタニティブルーというやつなのか、最近ネガティブな気持ちになることが多い。
追い討ちをかけるように、体調にも不安材料があり、ついに離れて暮らす夫に泣きながら不安をぶちまけてしまった。
夫は夫で、慣れない土地でわたしたちのために頑張って仕事をしつつ、怪我のリハビリにも定期的に通っている。
わたしが夫だったら「そんなこと言われても」と思ってしまうに違いない。
そんな夫が週末に帰省して「気分転換に、いつもと違うことしようか」と、夕方わたしを外に連れ出した。
夫が連れていってくれたのは、プラネタリウムだった。
プラネタリウムなんて、最後に行ったのはいつだろう?
子どもの頃に感じた非日常感にワクワクする気持ちが半分。
いまや映画館で2時間すら耐えられないわたしが、さらにはメンタル荒れまくりの雑念だらけの状態で、果たして純粋に楽しめるのか不安な気持ちが半分。
なぜか少し緊張した思いで、シートに横になった。
ゆっくりと移り変わる星空。
月明かりのあたたかさ。
波の音。
鳥のさえずり。
神津島に生い茂る草花の香り。
五感が自然と引き寄せられる不思議な感覚だった。
そっとお腹に手を当てる。
深い深い自分の呼吸の奥底で、赤ちゃんが音に合わせて手足を動かしている。
ああ、しばらく忘れていた。
この何にも縛られていない感覚を。
たくさんの星々も、四季の香りも、
夜が明けて毎日訪れる朝も、
夫のやさしさも、
日々のノイズに埋もれているだけで、本当はいつもここにある。
今のわたしに必要なことは、台風のように過ぎては去っていくものに惑わされずに、当たり前にあるものに目を向けること。
エンディングロールが終わり、場内が明るくなったときには、まるで憑き物が落ちたように身体が軽かった。
それから家に着くまで、わたしはずっと夫に今晩の感想と感謝をまくし立てたのだった。
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