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僕なら辞める。

石井さんは、新卒で就職した電機メーカーの海外部門時代の元上司だ。

元上司と言っても、直接人事評価されるような近しい直属の上司であった期間はとても短い。おそらく半年もない。

さらに石井さんはずっと海外駐在だったので、直接お会いするのは2-3ヶ月に一度。一時帰国されている1週間程度だけ。

しかしながらその存在は目立っていて、同じ大学卒業ということもあって、まだ上司になる前から石井さんの存在は気になってました。

圧倒的な太陽のような明るさ。
笑顔、大きな声、でも時折聞こえてくる、新人でも「凄い!」と思える鋭いビジネストーク。

当時、確か、課長だったのに、上長である部長や事業部長に向かって笑顔で仕事の大事なことで、言いたいことを言って、「仕方ないなぁー」と笑顔で笑いをとっておられました。

「なんという愛されキャラなんだろう。」

当時「愛されキャラになりたかった私」は、すぐさま石井さんをお手本(当時はベンチマークというかっこいい言葉を知らなかった)にしてました。

しばらくして、私の直属の上司になるらしいということがわかった時のあの嬉しさ、ガッツポーズした瞬間は、今でも心に残っています。

その石井さんの下で仕事をすること数ヶ月。

幸せな日々だったけれど、結婚したばかりの私に今までのような業務量をそのまま依頼するのは遠慮すべし、というような暗黙の了解ができつつあって、やりにくい場面にしばしば戸惑うことも増えていた時期でした。

石井さんは、相変わらず海外なので、細かな相談をすることもできず(当時は無料通話なんて便利なものがなかったので)、これが仕事のストレスかぁ、なんて無理矢理、自分を納得させようとしても、消化不良の毎日だったかもしれない。

そんな中、
その日は突然やってきた。

一時帰国していた石井さんに、「あやこうじちゃん、ちょっと」と会議室に呼び出されたのだ。

何かあったのかとソワソワしながら、早歩きで石井さんの後をついていったあの緊張の瞬間が蘇る。

会議室に入り、席に着く。

石井さんの手元には人事面接時に使う用紙(私が既に記入していたもの)があった。

あ、人事面接だったのか。よかった(ほ)

なーんてちょっと「ほっ」としたのも束の間。
その瞬間はやってきた。

石井さんは興奮気味に切り出した

「僕なら辞めると思う。」と。

キョトンな瞬間でした
そう、キョトン。

何をやめる?
私が先ほどまでexcelで作っていた価格表作り?

いや、一時帰国して、各部署を挨拶回りしていた石井さんが、私の細かな業務内容まで把握しているわけがない。

じゃあ、何を辞める...?
まさか...!?????

恐る恐る石井さんに

「会社を辞めるってことですか?」

と確認してみました。


「そうや。僕があやこうじちゃんなら辞めるわ。」

石井さんの言葉はストレートでした。

私が当時勤務していた会社は、大企業で安定していて、とても素敵な会社だったけれど、一方で、まだ人事的には保守的なところがありました。

総合職の女性社員として一応入社した私だったけれど、人事評価のタイミングで石井さんが、ちょっとだけ私を昇進させようとした時に、人事から「ちょっと待った!」が、かかったとのこと。

私はバブル時期入社の社員。
同期に1000人ほど。


人事的には、お年頃で結婚したての私が海外出張をし続けることにも無理があるし、妊娠・出産ということになれば、退職するかもしれない。

そんな私を少し昇進させるよりもモリモリ働ける男性同期を、限られた昇進枠に入れたい、そんなことだったのでしょう(ここまで具体的にはどうだったかわかりませんが)

そこで、石井さんは「僕なら辞める。もしキャリアチェンジするなら、今のタイミングで転職活動した方が良いから」と言われたのだと、ようやく理解できました。

沈黙しばし。

石井さんの顔を恐る恐る、のぞき込む。

いつもニコニコ・アンパンマンみたいな笑顔が素敵なのに、険しいシリアスな表情のまま。

そこで私も真剣に考えた。そして決めた。退職しようと。

そんな決意の言葉をその場で石井さんに告げ、それから2ヶ月後に会社を退職したのでした。

転職については、何のアテもなかったけれど。
一緒にマンション購入したばかりの元夫には大丈夫なんやろなぁ、とちょっとクレームされましたけど(今は良い思い出)

私のために人事に対して怒ってくださり、上司としてはきっと部下に辞められたら評価も下がるのに「僕なら辞める」と本気で言ってくださったあの言葉に背中を押されないわけにはいかなかった。

そしてこの会社を辞めることで、私は子供の時に想像だにしなかった素敵な出会いと人生を生きることになりました。

あの言葉に背中を押していただかなければ、今でもモヤモヤ、スキルや希望不一致のまま、勤め続けていたかもしれません。

「僕なら辞める」
今思っても、本当に本気じゃないと言えないですね。

だから以降、ミラクルがいっぱい起こってくれたのかもしれません。

その後に起こるミラクル人生については、これからの金言ご紹介の中で、少しずつお話したいです❣️

これからもお付き合い下さいませ。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました!!!!

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