SKY-HIが見せてくれた”昨日よりもマシなストーリー”
思えば2019年は、SKY-HI(日高光啓)に骨を埋めた年だった。きっかけになったのは、平成最後の日に観た『SKY-HI TOUR 2019 -The JAPRISON-』。
ーすごいモノを見てしまったー
あんなに時間が過ぎるのを早く感じたライブは人生で初めてだ。ホールツアーでこんなに魅せられるのか…と。中野サンプラザを出たときには、すっかりFLYERSの一員になっていたのである。
完全に魅了された私は、SKY-HIが出るイベントにできる限り足を運んだ。6月の『日比谷音楽祭』に始まり、夏は『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』に『PARASITE DEJAVU』、『w-inds. Fes ADSR 2019』にも行ってきた。
ReddyのInstagramに「Secret guest」という文字を見つければ、終電に飛び乗り六本木のクラブまでかけつけた。どうしても生で「I Think, I Sing, I Say」を聴きたかった。
今まで「クラブってイケイケなイメージで怖くて…」と言っていた私がクラブに通えるようになったのだから、愛ってすごい。
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2019年、本当にSKY-HIが大好きだった。仕事が辛くてしょうがなかったときは「カミツレベルベット」を聴いたし、やる気がでない日は「Double Down」で気持ちを持ち上げた。
間違いなく、1番聴いたアーティスト。傍からは「こいつまたSKY-HI聴いてるよ…」って思われていただろうな。それでも彼の音楽に、彼の存在に救われていたことは言うまでもなかった。
しかし、ふとした時に自分の感覚が恐くなった。SKY-HIが好きという思いが強すぎて「彼の関わるものなら何でも素晴らしい」と妄信しているのではないか…と思ったのだ。私は、ある人にその思いを打ち明けた。
「好きなアーティストに対して、自分が妄信的になってきている気がして怖いんです」
すると彼は私が着ているTシャツを確認して聞き返してきた。
『SKY-HIの音楽の何が好きなの。SKY-HIの曲でどれが好きなの』
「え…。彼の考えの芯が通ってるところとか…。「I Think, I Sing, I Say」とか「Name Tag」…とか」
驚いた。私は全く自分が納得する言葉を口にできなかったのである。
悔しかった。もしかして、もはや顔ファン? いや、そんなことない。彼の考え方とかクリエイティブとか好きだし。え、でも彼の考え方って私が知ってるそれって、本当の彼なの?
半泣きの帰り道、自分のなかの答えを探す。その日、答えは出なかった。
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そもそも、どこでSKY-HIを知ったのだろう…。
記憶を遡りたどり着いたのは、Czecho No Republicとコラボした「タイムトラベリング」のMVだった。
SKY-HIってAAAのメンバーだよね。へー…、バンドとコラボするんだ。
そんな風に思った記憶がある。その頃の私は、SKY-HIに興味がないことはもちろん、AAAへの関心も皆無だった。なんならバンド大好き時代だったし。
チェコがコラボしてたSKY-HIって人。これが最初のイメージだ。
そんな私に「SKY-HI 好きかも」と思わせたのは、その年の秋に彼が出した「Marble」だった。
柔らかいピアノに乗せて紡がれるラップはとても優しくて、何度も何度も聞いた。何よりも歌詞が大好きだった。
歌詞から感じ取ったのは、彼の知性や優しさだ。己の正義が横行している時代に、”もっとお互いを思いやれたらいいね”という愛が溢れている。恋がどうとか夢は叶うとか、みんなが歌いたがるこの時代に”多様性”について歌ってしまうのだ、SKY-HIという男は。なんてロマンチストなんだろう。
私は、俄然興味が沸いた。
勢いに任せて調べていくと、彼がとてもクレバーな人であることがわかった。それでいて、自分の意志をしっかりと持っているということも。
共謀罪法が成立したときには「キョウボウザイ」という曲を出し、自殺防止月間には「0570-064-556(Logic"1-800-273-8255"remix)」をアップ。「メジャーと契約しているアーティストが攻めるね~!」とわくわくした。それと同時に、社会や世間から目をそらさないリアリストであるということも知った。
ロマンチストでリアリストなの? めっちゃ面白いじゃん…。
活動を追いかける人リストに、SKY-HIの名前が並んだ。
そんな風に彼を追いかけ始めたら、翌年の春にライブをすることを知った。「行きたいなー…」とゆるゆる考えていたら、どうやら神様に思いが通じたらしい。
『SKY-HI TOUR 2018 -Mrable the World- 』のチケットが手に入ったのだ。
期待が膨らむなか、電車に揺られ降り立った府中。席は真ん中から少し後ろくらいだったかな。見終わったあと「なるほど、こんな感じなのか」と思った気がする。かっこいいにはかっこよかったけど、期待値をあげすぎていたかもしれない。
ただ「十七歳」だけは、やけに焼きついて離れなかった。歌いながら演じ、演じながら歌う彼の姿はとてつもなく鮮烈で。今思うとHIP HOPオペラの原型だったのかな。言葉と音楽がスルスル体に流れ込んできて、情景が鮮明に描き出されていくあの感覚。「この人は、ここからもっとすごくなるぞ…」そんな興奮を覚えた。
事実、その興奮は間違いじゃなかった。2018年のSKY-HIの活動は、本当に目まぐるしかったから。
3月の『ベストカタリスト』リリースを筆頭に、8月には『FREE TOKYO』を無料配信、12月には『JAPRISON』を発表。まじでどんだけ仕込んできたんだよ、この人は(笑)。
このペースで盤を打ち出すだけでもすごいのに、全部に違った意図がある。
『ベストカタリスト』は、コラボレーションベストアルバム。今までのコラボの総集編と、自由度の高いライブへの導線という位置づけ。
『FREE TOKYO』は、全曲セルフプロデュースかつフリーダウンロード。「音源がお金にならない…」というシーンに対するアンチテーゼだし、ヒップホップカルチャーに敬意を示したミックステープという打ち出し。
『JAPRISON』に関しては、10年計画の折り返しを飾る1枚。SKY-HIというアーティストの区切りになる名盤だ。
これだけ活動的なのに、吉田凛音やさなりのプロデュースもしてるんだから、本当に…もう(笑)。若手へ愛を注ぎつつ、コラボレーションや自身の総括までしてしまう。
2018年の終わり、ベストアーティストを考えていたら、真っ先に彼の顔が浮かんできた。私の中で、SKY-HI以外ありえなかった。
そして、忘れられないライブになった『SKY-HI TOUR 2019 -The JAPRISON-』。ぶっちゃけ2019年ベストライブだったし、ライブ当日から毎日のように「DVD発売まだかな~」と思っていた。
2019年は『Say Hello to My Minions 2』にもワクワクした。ライブにはいけなかったけど、音源だけでも最高で。こんなにいろんな表現が日本語ラップにはあるんだって。
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SKY-HIとの出会いから今までを振り返ってみて、私はひとつの結論に達した。
ーいろんな未来を見せてくれるから好きなんだー
彼は日本も世界も見据えて行動し、それを実現するためにたくさん考えている。それが作品やライブのパフォーマンスから感じ取れるから、「SKY-HIの新しいストーリーが見たい」とわくわくさせられる。そのトキメキに魅了されているのだと。
海外のアーティストとのコラボもミックステープのフリーダウンロードも、なんとなく「やりたいなぁ…」で実現できることじゃない。彼が「やるぞ」って決めて、行動してきた結果。芯を曲げず思いを形にしていく姿に、心底惚れ惚れしてしまうのだ。
幸いにも12月にある『SKY-HI Round A Ground 2019』のチケットを両日手に入れることができた。彼のソロも客演を招いてのステージも、両方見ることができる。バックバンドと離れ、ミニマムセットで勝負してきたこの1年の集大成を見られることが、今から楽しみで仕方ない。
SKY-HI Information
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