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Mandolin

「王子」の愛称で呼ばれるグスタボ・ペナは、ウルグアイのミュージシャン。これは彼の書いた「Mandolin」という曲をライブで扱うにあたってのメモ。

「マンドリン」

言葉と詩に酔いしれるようなまなざしで
向こうの小さな町の晴れた空の下で
色とりどりのイリュージョンが織り成す想像の世界
愛する彼は馬に乗り、そして幸せだ

ヘイ、最初のあなた、本物よ、ベイビー
ヘイ、2番目、混乱させないで
ヘイ、3番目、順番を逃すと愛を待つ

全てに時季がある
あなたとわたしはこのハートの中に
余白を持つことへの喜びを感じている
人生におけるその瞬間のために
笑顔を絶やさない
そして、さらに、さらに
愛する人はわたしの隣に

ヘイ、最初のあなた、本物よ、ベイビー
ヘイ、2番目、混乱させないで
ヘイ、3番目、順番待ちの恋は失敗だ

言葉と詩に酔いしれたまなざしで
向こうの小さな町の晴れた空の下で
色とりどりのイリュージョンが織り成す想像の世界
愛する彼は馬に乗り、そして幸せだ

ヘイ、最初のあなた、本物よ、ベイビー

わたしはスペイン語圏の楽曲の中から心に響いたものを選んで紹介する、というスタイルでライブをしている。

しかしながら曲の内容を詳しく説明することが少ない。

わたし自身あまり歌詞に重きを置いて音楽を聴かないせいでもあるし、或いはことばではなく、音で伝えたいみたいなところがあるからかもしれない。

ただやっぱり、内容を知ってると鮮明に情景が立ち上がってくるというのは、日本語の曲を聴けば明らかなところもあって、聴き手がもっと自由に、いろんな味わい方をできるといいなあと思い始めた。

だからと言ってよくジャズライブで見かけるような、うたう前に楽曲解説するプロセスがどうもしっくりこないの。「こういう曲なんだよ」って頭で理解した後で身体で聴く、この動作の切り替えがちょっと複雑に感じる。

とにかくライブの時間はずっと心身が感覚の海の中でぷかぷかと漂っていられるような状況をつくりたいんだよね。この「場のデザイン」についての話は、また別の機会に書きたいな。

今回、わたしがシームレスかつ直感的に受け取れる方法のひとつとして選んだのは、日本語の歌詞をつけてうたうこと。この「Mandorin」という曲ではじめてやってみたの。

えっと冒頭に載せたのが歌詞の翻訳で、下記が歌詞としてまとめ直したものです。

[日本語の歌詞]

ことばの波、酔いしれる眼差しで
曇りなきあの空の下で
色とりどりの世界がつくられる
愛はもう、彼の馬に乗り走り出す

ヘイ、ララ、君の予感は確かだ、ベイビー、
ヘイ、ララ、次の恋に惑わずに
ヘイ、ララ、今すぐ素直になるだけで
愛はもう、愛はもう

スペイン語と日本語の発音は似ているので、リズム感や音のニュアンスを近づけやすい一方、文字に乗せられる情報量に差があるため、内容を損なわない形で言葉を選ぶのに少し工夫が必要だった。

原曲の「El amor (読み:エル アモール、意味: 愛)」という歌詞の部分を、日本語で「愛はもう」と翻訳して音と意味をまあまあ揃えられたところは気に入ってる。

El amor は直訳だと愛なのだけれど、スペイン語圏では恋人や大切な人に呼びかける愛称として使われている。しかし日本語ではあえて「愛」として扱うことで情報量を減らした。

また原曲では「愛する彼が馬に乗って、そして幸せだ」と具体的な情景描写であるところを、日本語では「愛はもう、彼の馬に乗り走り出す」とメタファーに置き換え、幸せであることの暗喩として表現した。

あとは、1番目、2番目…と呼びかけているところは、スペイン語歌詞でうたうとき気に入っているくだりだけど、日本語にすると俄然つまんなくなるので思い切ってカットし音とリズムの聴き心地を優先した。

内容もぜんぜん別なんだけど、ポエジー、詩情のレベルではざっくり同じようなニュアンスにまとまることを目指して調整してみたけど、こういう部分こそ説明が難しいな。

個人的には世界観を反映できた手応えはあるが、さて実際、演奏した時にどんなふうに受け取ってもらえるのかなー。わーどきどき。

読んでくださって嬉しいです。 ありがとー❤️