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恋文と童心 第二話・カレー臭

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いわゆる青春ミステリーです。短編形式で、5話完結。
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記事一覧

恋文と童心 第二話・カレー臭(1)

 俺はトイレに閉じ篭もっていた。  四時間目の授業中に急激な腹痛と便意に襲われ、どうにか…

ayabe111
4年前

恋文と童心 第二話・カレー臭(2)

「いやあ、トイレでカレーはあり得ないだろ。トイレでカレーだぞ? 食ってるところを想像して…

ayabe111
4年前

恋文と童心 第二話・カレー臭(3)

「姉崎くん」  彼女は静かに言った。「レッドカードです」 「……何だって?」 「退場して下…

ayabe111
4年前

恋文と童心 第二話・カレー臭(4)

 そして翌日の昼休み。俺はまたしても西側一階のトイレに座っていた。  決して居心地が気に…

ayabe111
4年前

恋文と童心 第二話・カレー臭(5)

 第三者の介入により、彼らの動きが一瞬止まる。二人はがっぷりよつに組み合ったまま、首だけ…

ayabe111
4年前

恋文と童心 第二話・カレー臭(6)

「なるほどねえ。ようするにここのトイレはあんたたち三人で寡占状態にあるわけだ。俺みたいな…

ayabe111
4年前
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恋文と童心 第二話・カレー臭(7)

「足立先生、ちょっといいですか?」  俺が職員室の入口で手招きすると、自分の机で愛妻弁当を食っていた足立先生が箸を置いてやって来た。今日の献立は、チキン南蛮に温野菜と何かのゼリー寄せのようだ。青ひげが目立つ口の横に、ご飯粒がついている。全身から新婚ほやほやの幸福オーラを発散して周囲の顰蹙を買っているのは、職員室においても同じだった。本人は平静を演じているつもりが、口元がだらしなく緩みっぱなしである。未だ独身の教師からは憎々しく思われているに違いない。 「何だあ、姉崎。腹痛で

恋文と童心 第二話・カレー臭(8)

 その週末、木曜金曜と二日間に渡って、俺は購買の張り込みを行った。  昔は学食として利用…

ayabe111
4年前

恋文と童心 第二話・カレー臭(9)

 数秒後、さっそく恋文が動いた。細野に顔を寄せて、何やら耳打ちをしたのだ。  細野は一瞬…

ayabe111
4年前
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恋文と童心 第二話・カレー臭(10)

 今度の送信相手は、鈴木である。彼は今頃、いつものように西側一階のトイレで弁当を食ってい…

ayabe111
4年前

恋文と童心 第二話・カレー臭(11)

 明くる土曜日。  授業が半ドンで終わり、他の生徒たちが帰り支度を始めるなか、俺の足は第…

ayabe111
4年前

恋文と童心 第二話・カレー臭(12)

「あー、分かりますよ。俺も香辛料じゃないけど、香草がどうしても苦手でタイ料理とか食べられ…

ayabe111
4年前

恋文と童心 第二話・カレー臭(13)

「でも、そうだな。カレーの件は正直に打ち明けるべきかも知れん」  足立先生は口調を改めた…

ayabe111
4年前
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