恋文と童心 第二話・カレー臭(7)
「足立先生、ちょっといいですか?」
俺が職員室の入口で手招きすると、自分の机で愛妻弁当を食っていた足立先生が箸を置いてやって来た。今日の献立は、チキン南蛮に温野菜と何かのゼリー寄せのようだ。青ひげが目立つ口の横に、ご飯粒がついている。全身から新婚ほやほやの幸福オーラを発散して周囲の顰蹙を買っているのは、職員室においても同じだった。本人は平静を演じているつもりが、口元がだらしなく緩みっぱなしである。未だ独身の教師からは憎々しく思われているに違いない。
「何だあ、姉崎。腹痛で