花と凛冽と死者と 第三話・ミーフロッツァ(4)
「だ、誰か! 誰か、俺を助けろ!」
オーベリの上擦った声が、無人の廃墟に反響した。
一体何が起こっているのか、彼にはまったく理解できなかった。突然、兵士たちの足並みが乱れたかと思うと、そこかしこで悲鳴や叫び声が上がり、松明の炎が激しく乱れ飛んだ。彼は動揺し、手綱捌きを誤って乗っていた馬から落下したが、兵士の一人が彼の体を抱き止めたおかげで、どうにか怪我を負わずに済んだ。
「オーベリ様、早くこちらへ。この場に止まるのは危険です」
彼を救った兵士はそう言って、隊列から離れる