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【サンプル記事】支援級の自立活動って何?子育てに取り入れるポイントもご紹介

ちょっとしたことで友達とトラブルになったり、身の回りのことが自分でできなかったりと、子どもが成長するにつれて関わり方に悩む場面が増えてきたと感じていませんか?

その子の特性に合った方法で適切な行動を促していくためのヒントとして有効なのが、支援級などで行われている「自立活動」の考え方です。自立活動の考え方を日常生活に取り入れることで、子どもの行動がうまくいかない原因を取り除くことにつながります。

この記事では自立活動とはどういうものなのか、日々の子育てに取り入れられるポイントを交えて紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

自立活動とは

自立活動とは、特別支援学級や特別支援学校において、子どもの心身の調和的発達の基盤を培うために設けられた指導領域のことを指します。

子どもの発達の遅れや不均衡を改善したり、発達の進んでいる側面を更に伸ばすことによって遅れている側面の発達を促すようにしたりして、調和のとれた発達を促すことが自立活動の目標です。

支援級や支援学校では、国語や算数などの教科の授業と同じように「自立活動」という時間が時間割の中に設けられています。自立活動の指導は授業の時間を中心に行われますが、学校生活全体を通して適切に行われるように決められています。

自立活動は子どもの発達を促すために、一人ひとりに合わせたアプローチをするのが特徴です。個人差はあったとしても、子どもは誰でも発達に凸凹があるものです。自立活動の手法は普段の子育てに応用できるものがたくさんあるので、子どもへの関わり方に悩んでいる保護者にとってヒントがたくさん隠されています。

自立活動の6つの領域

自立活動には次の6つの領域があります。

  1. 健康の保持

  2. 心理的な安定

  3. 人間関係の形成

  4. 環境の把握

  5. 身体の動き

  6. コミュニケーション

各領域はさらに細分化されており、子どもの発達に合わせて必要な内容をピックアップしてアプローチしていきます。それぞれについて内容や指導例を紹介するので、今悩んでいる内容に合った項目があるかチェックしてみてください。

 1 健康の保持

健康の保持の領域で扱う内容は、主に生活リズムや生活習慣の形成に関することです。食事や排泄の習慣、衣服や室温の調節、感染予防のための清潔の保持など、健康な生活環境の形成を図ることを身につけていきます。

たとえば食事や排泄の習慣を指導する際は、下記のアプローチが有効です。

  • 人形を使って一連の流れを一緒に確認する

  • 実際にできたらシールを貼る

  • 子どもの理解度に合わせて絵・写真・歌などを活用する

ただの指示になってしまわないように、一緒に活動したり楽しみながら継続できるような工夫を織り交ぜるのがポイントです。

2 心理的な安定

心理的な安定の領域で扱う内容は、情緒の安定や状況の理解に関することです。気持ちが不安定になったときに落ち着くための方法や、気持ちを切り替えるための方法を身につけていきます。

たとえば気持ちが不安定になったときの対応としては、下記のような方法があります。

  • クールダウンのための場所を一緒に決める

  • 深呼吸をする

  • 好きな本を読む

具体的な方法を確認しておくと良いでしょう。
また、予定の変更や慣れない状況で必要な情報を得るために、身近な人に的確な援助を求められるように依頼のパターンを練習しておくことも効果的です。

3 人間関係の形成

人間関係の形成の領域で扱う内容は、自他の理解や集団参加に関することです。人に対する信頼感や、他者の意図や感情を理解すること、集団参加に必要な手順やきまりなどを身につけていきます。

たとえば当番などのきまった仕事の責任を負うことで、自分が期待されていることや周囲に認められる経験を積み重ねていくようなアプローチをしていきます。

また、表情カードやロールプレイで人の表情と感情の関係を理解する練習も有効です。実際に他者と関わる中では「うまくできた場面」は具体的に賞賛し、「うまくできなかった場面」では具体的にどこが良くなかったのか、どのようにすれば良いのかという具体的な方法を教えていきます。
 
集団に参加する際のルールや約束事はカードなどに簡単にまとめて事前に練習したり、ひとつひとつの行動の前に再度確認したりすることも効果的です。

4 環境の把握

環境の把握の領域で扱う内容は、感覚を有効に活用して周囲の状況を把握し、的確に判断し行動できるようにすることです。

たとえば読んでいる箇所を目で追うことが苦手なために本を読むことが困難という場合、迷路遊びなどを取り入れて楽しみながら学習に必要な力を養っていく方法があります。

不快な音や感触がある子どもの場合は、不快を回避するための方法を事前に確認しておいたり、慣れるための方法を試してみたりすることも有効です。

5 身体の動き

身体の動きの領域で扱う内容は、日常生活や作業に必要な基本動作を習得することです。

たとえば箸で小さいものをつかむ練習として、まずは指で、次に小さいトングでさまざまな素材や形のものを移動させる練習をしてから箸へと段階的に進めていきます。

ボタンの練習では、学校では給食着、家庭ではパジャマなどのボタンの色をひとつひとつ変えて色の順番でボタンをかけさせる方法もあります。

6 コミュニケーション

コミュニケーションの領域で扱う内容は、場や相手に応じたコミュニケーションに関することです。

たとえば社会性を身につけるためのソーシャルスキルトレーニングによって、場に応じた具体的なコミュニケーションのパターンを身に付けていく方法があります。

音声言語でのコミュニケーションが難しい場合、筆談やコンピュータなどの手段で意思を表出することができるように練習することも有効な方法です。

【子どものタイプ別】自立活動を子育てに取り入れた事例

ここでは自立活動で扱う内容を子育てに取り入れた事例を紹介します。紹介する事例は以下の3つです。

  • 些細なことで腹を立てて暴言を吐く子

  • 身の回りが散らかっている子

  • 順番を待てない子

どのケースでもうまくいかない原因を取り除き、その子の特性に合った方法で適切な行動を促していくことがポイントです。それぞれの事例をぜひ参考にしてみてください。

些細なことで腹を立てて暴言を吐く子

些細なことで腹を立てて暴言を吐く子に対しては、「心理的な安定」と「人間関係の形成」の内容を組み合わせてアプローチしていきます。

暴言を吐く子にはさまざまな要因がありますが、ここでは嫌な気持ちや悲しい気持ちをうまく言葉にできないために「うるせー」「ばか」などの簡単な言葉で表現してしまうことが原因であるケースを例とします。

まず、腹が立つことがあったときに暴言を吐くことは、適切な行動ではないことを事前に一緒に確認しておきましょう。その際には一旦気持ちを落ち着かせる方法も一緒に確認しておきます。

日常的なアプローチとして、子どもの感情を言語化することを意識して接してみてください。「悲しいんだね」「困ってしまったんだね」「〇〇されたのが嫌だったんだね」と働きかけてみたり、「どんな気持ちだったかな?」と問いかけてみたりして、気持ちを言葉にする経験を重ねていけるようにサポートしましょう。

腹が立ったときに暴言ではなく何と言ったらいいのかということも、パターンを示して練習しておくのも効果的です。

身の回りが散らかっている子

身の回りが散らかっている子に対しては、「健康の保持」と「環境の把握」の内容を組み合わせてアプローチしていきます。

周囲のことに気が散りやすいタイプの子は一つ一つの行動に時間がかかり、整理整頓などの習慣が十分身に付いていないケースがあります。

まずは生活リズムの形成の中で、整理整頓のタイミングの定着を意識して接してみてください。「帰宅したらこのカゴにカバンを入れる」といった簡単なことから始めるのが大切です。

気が散りやすい子の中でも視覚優位の子の場合、言葉で指示をするよりも見本の写真を用意した方が効果的です。棚にしまうものの写真を貼っておいたり、玄関の足元に靴のマークを貼っておいたりと、視覚的に働きかけることで適切な行動を促すことができます。

順番を待てない子

順番を待てない子に対しては、「心理的な安定」と「コミュニケーション」の内容を組み合わせてアプローチしていきます。

順番を待てない原因として、集団で楽しく活動したりルールを守って活動したりした成功経験が少ないことや、感情に対する適切な行動の仕方が分からないことなどが原因として考えられます。

たとえば家庭でトランプやすごろくなどの簡単なルールの遊びを一緒に楽しみながら、待つ経験をなるべく多く積めるように意識してみてください。待つのが苦手な子に対しては、2〜3人程度の少人数の中で慣れていくことから始めるのが効果的です。

遊びの中でも見通しをもてるようにあと何人で順番がくるかを一緒に確認したり、待てたことで楽しく遊べたということを褒めて意識させたりして、成功経験を積み重ねていきましょう。

まとめ

子どもの行動がうまくいかない原因を見極めその子の特性に合った方法でアプローチしていくことで、少しずつ適切な行動がとれるようになっていきます。

子どもに寄り添った関わり方のヒントとして、日々の子育てに自立活動の考え方を取り入れてみてくださいね。

お子さんの行動で困ったこと、どう関わったらいいのか悩むことがあったら、当社にお気軽にご相談ください。専門家があなたの悩みに寄り添ってアドバイスをいたします。

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