高校生だった私へ
最寄駅の待ち合い室。周りにはほとんど高校生しかいない。音楽を聞きながら待っていると、友人が「お待たせー!」と颯爽と現れる。彼女はバレンタインだからとお菓子をくれて、お菓子作りが得意なところは変わってないなあと懐かしく思い出す。
何百回も歩いた高校までの道のりを歩く。
「懐かしいと思うけど、戻りたいとは思わないな」
「そうだね。でも私たち3年もここにいたんだよ。それって長いよね」
高校生の私は、広い世界を見に行きたかった。地元は私には狭すぎて、早く飛び出したいとずっと思っていた。そうして東京へ飛び込んでいった私は、5年ぶりに再びこの土地に立っている。雪が積もる中、路面がどんなに凍っていても自転車登校を辞めようとしなかった。授業をさぼる度に歩いた静かな廊下。部活の友人たちと毎日一緒にご飯を食べた。冬に友人が凍った川の上を自転車で走る遊びをして、川に落ちて、大笑いした朝。生徒に負けず劣らず癖の強かった先生たち。先生たちとたくさんした喧嘩。私にはしっくりこないと思い込んでいた土地の至る所に、私が生きていた証があった。懸命に生きていた私が、あの頃とは違う今の私を見つめている。
「私はあやちゃんの正直なところが好きだったよ。授業つまんないとすぐつまんないって言うし。内心ひやひやしてたけどね。笑」
友人にそう言われて、やっと私は思い出す。長野の厳しく、そして美しい自然の中で、泣いて、怒って、笑って、喜んで、叫んで。私自身のものでしかない正直な目で世界を捉えて、そこで生きていたのだと思う。
昔からある古い喫茶店に入る。アイスアーモンドラテとシナモントーストを頼む。お腹がいっぱいすぎるけれど、どうしてもこの組み合わせを食べないと後悔すると思って。私たちは変化していくものについて話す。私もあなたも、周りの友人や家族も、全てが変化していき、あの時と同じものはひとつとしてない。それでも、ここに生きていたことは私の中に残っている。それは私の物語だ。私たちはまた前を向いて、こことは違うどこかで、今という時を懸命に生きていく。
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