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脳動静脈奇形④

意外に楽しかった入院生活

検査入院となり、午後から病院に。
病気の種類としては脳外科なんですが、まだ子供だったので小児科病棟への入院になりました。現在も通院中ですが、脳外科って年齢層が本当に高いんです。この病棟の配慮は本当にありがたかった。

小児科病棟には、様々な科の子どもが入院していました。
私は検査入院だし、時々手がけいれんする位の症状なのでほぼ元気なんですが、同部屋の同い年くらいのYちゃんは、交通事故で顔を損傷して口からの食事が出来なくて鼻からチューブで栄養補給をしていて、「私も早く食堂でご飯食べたいんだ。」と話していました。食堂でいつも近くの席になる子はすごく細くて華奢な子なんだけど、全ての食事をグラム単位で管理されていました。食堂には来られないけど、心臓に機械を入れてベットから出られない5~6歳の男の子の部屋に遊びに行ってみたり、眠れない夜はナースステーションにYちゃんと行ってみたり。思いのほか楽しく過ごしました。普段なら出会うことの無かった病院で過ごす子ども達の姿を見て、最初は驚きましたが勉強になりました。

検査入院の日々は、退屈な時間が多かったです。
一日数本の採血をしたり、カテーテル検査をしたりするのですが、外来が終わった後の午後に行うことが多かったです。

今後の治療方針を決めてください。

二週間の検査入院の後、母と一緒に主治医の先生に呼ばれました。
脳動静脈奇形で間違いない、放置しておくと年間3パーセントの確立で脳出血を起こす病気であること。破裂するのは明日かもしれないし、もしかしたら破裂せずに60歳まで生きるかもしれない。
私の場合は手足を動かす部分の左脳にあるらしい。だから発作が起きるのは右半身だけなんだそうだ。脳出血が起きれば最悪そのまま死ぬし、助かったとしても右半身に麻痺が出ることになる。

今後の治療方針を3つ提示されて、選んでほしいとのこと。

1 開頭手術
26年前に保険適用の範囲で可能なのは開頭手術のみ。私の場合は病巣が頭蓋骨に面している脳の外側にあるので、難しい手術にはならないだろうとのこと。
メリットは保険範囲内での治療であること。今入院している病院で出来ること。手術ですぐに結果がわかること。
デメリットは頭に大きく傷が残ること。100パーセント安全な手術ではないこと。脳の外側とはいえ、開頭して脳を触るので、右半身に多少の麻痺やしびれが出る可能性もあること。

2 ガンマナイフ
主治医の先生はこれを推している印象。
最近日本に導入された機械で、開頭せずに放射線を照射することで病巣を消失させることが出来るらしい。
メリットは頭を切らずに治療が出来ること。体への負担が少ないこと。治療で麻痺が出たりする可能性は低いこと。
デメリットは新幹線で行く距離の病院にしか当時はガンマナイフが無かったこと。保険外の治療で、当時100万円以上の費用がかかること。ガンマナイフをやっても、病巣が消失するまで早くて2~3年かかり、さらに1回の治療で消え切らず2回治療することも考えられること。

3 外科的な治療はせずにけいれんを抑える薬を飲む
当時、ガンマナイフは保険適用外でしたが、先生が言うには「おそらく数年待てば保険適用になると思う」と。保険適用になれば費用は3割になります。保険適用になるまで内服薬で発作を押さえて待つのも方法だとのこと。
メリットは費用が安いこと。
デメリットは薬で発作を押さえても、年3パーセントの脳出血の確立は変わらないこと。保険の認可が何年後になるのか分からないので、待っている間に破裂するリスクもあること。

私は悩みました。
うち、母子家庭なんです。兄弟も4人います。
頭開けるのは怖いし、かといって保険外の治療も怖い。しかも100万かかるって先生言うし。保険適用になるまで待つのが現実的じゃない?と思ってました。

でも、母は違った。
その場で「綾ちゃん、ガンマナイフにしよう。」って言いだしました。
先生は即答でなくていいのでって保留にしてくれたけど、めっちゃ答えるの早かった。
母になった今、私も息子が同じ状況だったら同じことを言うと今ならわかるけど、当時はお母さんにありがたいやら申し訳ないやら、色んな気持ちが浮かびました。

説明を受けて病室に戻り、母は相変わらず
「ガンマナイフにしよう。おばあちゃんにも相談するから大丈夫。」
そう言って帰りました。

「もしかしたら明日死ぬかもしれない病気だったんだ。
すごい大変な病気じゃないか。
年3パーセントの確立で死ぬか麻痺が残るってことでしょ??

高くない??衝撃的過ぎない??」
と一人悶々と考えてしまい、その日の夜は泣きました。(続く)

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