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わたしに「愛してる」といってくれた人

社会人になって、いろいろ覚えることがたくさんで、毎日が大変で、毎日が緊張の連続で、ヘトヘトで、もう何も考えられなくて…たぶん頭のネジがかなり外れてたんだと思います。

定期的に電話で連絡を取り合う取引先の担当さんが、わたし好みの素敵な声の持ち主で、優しく親切に対応して下さるので…つい(もう少し声を聞いていたいなぁ…)と思ってしまい…

「あの…もしよろしければ…一緒に映画を観に行っていただけませんか?」と呟いてしまったのでした。えっ?!

「ごめんね…僕は既婚者だから…」
「わたしこそごめんなさいっ、奥様がいらっしゃる方とは存じ上げなくて…」

ああ…何やってんの、わたし…バカじゃないの?…これって、後々噂になるパターンかも…

「でも、ちょっと待ってて…」と担当さん。

「一緒に映画は行けないけど、3対3で飲みに行きませんか?こちら男3人で、そちら女性3人で」

神展開。偶然もチャンスに変える、生き方が好きよ。乙女の心を傷つけない、機転の利くビジネスマンって本当にステキでカッコいい…と思ったのでした。

その翌週末、先輩と同期の子と3人で、待ち合わせ場所へ。美味しくて人気のある焼き鳥屋さん。男女交互に座って定番の自己紹介。

「ウチの新人がごめんなさいね〜既婚者口説いちゃったみたいで〜彼女、天然だから許してねw」と先輩。
「いえいえ、いつもお世話になってますからw」と担当さん。

先輩、それ、自己紹介じゃなくてメンバー紹介じゃないですか。ここに来る前に、わたしに「あやのん、心配しないで。大丈夫。」って言ってくれたじゃないですか。

今、乙女の心も体裁もボロボロなんですけど。

みんな笑ってますし。恥ずかしいですし。て、いうか、みなさんご存知の様ですし。

担当さんが、わたしの隣りの男性に、
「お前、彼女いなかったよな?あやのさんと映画、一緒に行ってあげたら?」と。
「俺はいいっすよ。あやのさん、良かったら今週末、映画観に行きましょう!」

成り行き上、断われるハズもなく…断ったら既婚者好きの烙印が待ってますし…

映画なら…いいかな?…とか…軽い気持ちで。

観に行く映画も決めずに待ち合わせしたのはいいのですが、キッズ映画無双の夏休み万歳なこの状況で、本日のおすすめはホラー一択ですか、そうですか…

わたしはホラーが苦手なので、終始、目を瞑ってました。あはは…。気がついたら彼の手を握ってましたとさ。いろいろ終わっちゃいましたね…そう思って帰ろうとしたら、彼が、

「今度は…恋愛映画を観に行きませんか?」

それから彼と何回か映画を観に行って、話してみたら、とっても感じのいい人でした。一緒にいて楽しいし。彼に興味もありましたし。

映画の次は…千葉の夢の国に行く約束をしました。(彼と一緒に行ったら…どんな気持ちになるんだろう…)と、思ったからです。

今、お付き合いしている"彼"がいるのに。
それが間違いのはじまりでした。

映画を一緒に観に行ってくれた"彼"は、少女マンガに出てくる様な、爽やかで、優しくて、一途な主人公みたいで、

(どうしてわたしは今、彼と一緒にいるんだろう…)

と、とっても不思議な気持ちでいっぱいでした。

彼と一緒に乗るアトラクションは、どれも楽しくて、待ち時間でさえも、とっても楽しくて、彼の瞳や笑顔を見つめながら、目を輝かせて、ずっと微笑んでいた様な気がします。

気がついたら、もう花火が上がる時間。

彼は空を見上げながら…わたしの手を握り…「僕はね…歳を取っても、夜空を見上げながら、花火を一緒に見るような…そんな夫婦になりたいんだ…」と話してくれたのでした。

(なんてロマンティックな提案なんだろう…)

一瞬、花火を見上げている"将来の私達"が見えた様な気がして、わたしは"結婚"という言葉をはじめて意識したのでした。

(だから…お家に帰って…冷静になって…これからどうするのか決めなくちゃ…)

でも、この時…

これが、事実上の"彼のプロポーズ"だと気づくべきでした。

恋するわたしは…それに気づかずに…

まだ知らない"愛"をはじめてしまったのです。

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