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フランスから、食関連ニュース 2020.01.21

フランスにおける旬でコアな食関連のニュースを、週刊でお届けします。

1. 今週の一言

リエーブル・ア・ラ・ロワイヤルというフランスの伝統的な料理があります。野うさぎの王家風。野うさぎのまるまるを使った、ジビエ料理の最高峰で、料理人たちが毎年腕を振るう一皿。この一皿を誇りに思い、楽しみにして一年を待つフランス人のなんと多いことか。丁寧に開いた野兎を下ごしらえして、ミンチや内臓、フォアグラを乗せて巻き、長時間煮込んで作る、手間暇かけて作る料理です。血や内臓も使用するため、クセがあるので、好まない方も多いのですが。「トゥール・ダルジャン」もそばのパリ5区大宮敏孝さんがオーナーシェフの1つ星レストラン「ラリアンス」で出すリエーブル・ア・ラ・ロワイヤルも非常に評判で、今は閉店した「ステラマリス」吉野建さんが作るリエーブルはフランス人も絶賛したという逸話を彷彿とさせるようです。もうそのリエーブルも今シーズンは最後の時期になるのですが、それをいただいてきました。

そして出てきた今年のリエーブル。煮こんでスライスした通常の見かけの塊に、フィレが別添えにされているのが驚きでした。ロゼに焼いたフィレのしっかりとした食感と野生味。煮こんだ部分はソースを吸い取るようで、食感が素晴らしい。野菜はレタス種の根の部分を大胆にローストしたもので、野菜のフレッシュな食感と苦味がリエーブルのソースを引き立ててくれる。

大宮さんは、毎年最高のリエーブルを作ろうと、レシピの研磨に挑んでいるということ。今年のレシピは2年前に生み出したものだということです。フィレを別添えにしたのは、本来煮込むのに適している部分ではないのに、なぜ、これも他の部分と一緒にミンチにしてしまうのかという疑問から。フィレを取り除くことで、煮込むのに適している部分が、最大の特性を発揮して、ホロホロとした食感を引き出すことができたということです。そしてフィレはフィレの加熱調理を。

既存のレシピというものは、それだけで偉大な存在で、なかなか崩すことができないですし、あるいは、本来は直すべき問題点に気づかないものです。あるいはそれが当然という意識で、別の角度から眺められなくなる。日常的な生活の中でも同じで、既存のあり方にメスを入れる、そんな気付きを得られる自分でありたいですし、大胆でもありたいなと、大宮さんの料理に思いました。

「季節始めの食材が届くと、研究するばかりに、お客様にお出しするものがなくなってしまう傾向があるので、気をつけています」と笑いながら話す大宮さん。心から料理を愛する料理人さんの言葉から、問題点を見つけようとするのではなく、好きだからこそ、それを見いだすことができるのだと気付きをいただきました。ところで、いつから料理人をシェフと呼ぶようになったのか。料理人という言葉に、愛が詰まっているような気がするのですが。

2. 今週のトピックス【A】ジャン=フランソワ・ピエージュ氏の新たなビストロオープン。【B】エマニュエル・マクロン大統領による「パリ・フード・フォーラム」開催を公式発表。【C】「レストラン・ポール・ボキューズ」降格。【D】時流に乗った、スペイン発の爆発的な人気バーガー店GOIKO、パリに進出。3.日本@フランス【A】「日本酒を世界酒にする」WAKAZE、初めてのフランス産新酒を発表。

2. 今週のトピックス

【A】ジャン=フランソワ・ピエージュ氏の新たなビストロオープン。

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